※都市伝説解体センターネタバレ注意


プレイ当時の感想を交えつつ各話を超早口で振り返っていく。


第一話「闇から覗く目」

簡易版の感想でも書いた通り「ミステリ風ホラー」なのか「ホラー風ミステリ」なのかすら知らずに始めたが、冒頭の呪いの椅子の謎解きが現実的な解釈で、そっち系か!と早速喜んだ。
クリア後に読んだ開発者インタビューによると最も参考にした作品の一つが京極夏彦「百鬼夜行シリーズ」だそうで、確かに怪異という謎に都市伝説を当てはめて特定し、それを現実へと解体する一連の流れはそのまんま京極堂の憑き物落としである。あざみの念視もだいたい榎木津礼二郎だ。
そしてうれしいことに自分はオカルトが大好きだ。本作で扱われた都市伝説の9割9分はもともと知っているし、なんならミステリ以上に愛好歴は長い。
もちろん「逆転裁判」や「ダンガンロンパ」も好きだ。のきなみ8点以上だし「逆転裁判4」以降も全然肯定している。
そのオカルトとミステリが融合してくれた時点で評価は相当甘くなってしまう。
第一話の都市伝説はベッドの下で、これも現実的に解体されるものの、それだけでは説明の付かない怪異がちゃんと残されるのが素晴らしい。もう好みのド真ん中である。

あとSNS。ろくにSNSに触れていないのに表層だけ装って2ちゃん風の書き込みを描いた一昔前の作品とは異なり、近年では作者は本当にSNS中毒だろと思うレベルの再現度の作品が増えてくれたが、本作の再現度はまたレベルが違う。
旧Twitterに入り浸り尋常じゃないほどのクソリプを浴びていないとあそこまでは再現できないはずだ。
あらゆる角度からのクソコメ・クソリプ・クソカキコを恐ろしいほどのリアルさで描いて見せたのみならず、それに対するジャスミンや富入の感想もあまりにも的確。どれだけの時間SNSや掲示板と向き合ったらこれができるんだと握手を求めたくなる。

キャラにも触れよう。主要キャラ3人はいずれも癖はあるが好人物ばかりで、天真爛漫で度を越して無知ながらなぜか推理力に長けるあざみ、ダルそうな態度と裏腹に隠し切れない知性と面倒見の良さを垣間見せるジャスミン、安楽椅子探偵ポジションであざみをこき使うがやはり面倒見は良くオカルトオタクとして共感せざるを得ない廻屋と盤石の布陣。
廻屋の2時間マシンガントークのおかげで脳内廻屋が構築されてアドバイスしてくれるという無法なシステムには笑った。
一話ラストで早くもジャスパイを明かしてしまうのも好手で、スパイのくせにやたら世話を焼いてくれる彼女への好感度が上がるばかりだった。


第二話「鏡像から迫る死」

次の都市伝説はブラッディメアリー。一気にマイナーになった。
これは単純にトリックが秀逸で、序盤から早くも住所の取り違えをぬけぬけと記しているのも心憎い。
後から振り返ると伏線だらけで、特に疲れた描写もないのに急に眠りこけるあざみや、最後の廻屋の独白もほとんど自白レベル。気付いたら即バレる伏線の綱渡りなんてなんぼあってもいいですからね。
娘を失った父や、2つの事件が混同される無責任さも象徴的だ。ここでも最後に怪異が残るのがいい。

最後といえばテーマ曲「奇々解体」も最高だ。キー入力を受け付けなくなり廻屋が後から見るとネタバレ三昧のまとめをしつつ、一番まで丸々流し終わってからのタイトルドーン! 飛ばせなくして毎回一曲聴かせるというアイデアが秀逸すぎる。令和のGet Wildとか呼ばれてて笑った。


第三話「辺獄への階段」

「この都市伝説は異界です」なんにも特定してなくて笑ったw
しかし一つに絞らなかったことにより異世界エレベーター、旧軍の地下施設、きさらぎ駅と異界物の都市伝説の要素が目白押し。
物語全体の根幹をなす天誅事件がここで描かれ、山田ガスマスクてめー面の皮の厚さすごいな!
冷静に考えると計画のためにツアーを無駄に何度も開催している歩は働き過ぎである。あとこのツアー、主催者になんの金銭的見返りもないから、富豪の遊びか黒幕の計画の一部でしかなかったわ。
ここの伏線の綱渡りが最も顕著で、野村妹のあざみへの態度や、ここでしか電波が入らない場所からあっさり動いて通話を続けるあざみになぜこの時は気付けなかったのか。


第四話「漏れ広がる邪悪」

都市伝説はコトリバコ。コトリバコって固有名詞使っていいんだ掲示板発だから著作権とかないのか。
ぶっちゃけ話自体はざっくり省いても全体のストーリーには影響ないのだが、一部の謎を解体して見せ、(勝手に)弱ったジャスミンを救うあざみの成長ぶりは必須。ウォーターセブンに直行したらニコ・ロビンの仲間感が薄いので唐突に挟まれたデービーバックファイトみたいなものである。
コトリバコからあふれる邪気が念視で見えるのは不自然なのだが、各話に一部の怪異を解かれずそのまま置いたおかげで「そういうものもあるかも」と不自然さには気付けなかった。これはコトリバコに込められた悪意の表象なのだろう。
一部の考察ではコトリバコの周りで虫が死んでいることから「包装紙に殺虫成分がある」と考えられていたがそれは考えすぎだろ…。
あと解決の手掛かりとなる筆跡の一致は、もうちょっとクローズアップしてヒントとして先出ししておいたほうが良かったと思う。あれはもったいない。


第五話「罪人の影」

都市伝説はそのまんまドッペルゲンガー。特定するまでもなくそりゃドッペルゲンガーだろと思うかもしれないが、しゃべったらそれはドッペルゲンガーではなく「ダブル」なので特定はやはり必要なのである。(※ダブルは笑う)
いやぶっちゃけ「ドッペルゲンガーはしゃべらない」って聞いたことないからこじつけなんだけど…。オリジナル設定?

ラス前とあり一連の事件の背景が描かれる。トリックは複数人による八百長というミステリ界ではまあまあ禁じ手ながら、次々と関係者が消えていきこれに合理的な解決を付けるなら「そうこなくっちゃ!」という納得が行く。
ただこの話はあちこち粗く、たとえば黒沢宅に現れたドッペルゲンガーの正体がなんなのかいまいち判然としない。歩の手先のジマーなら家政婦とグルで出入りできるが、それならはっきり明示しておくべきだった。


第六話「崩壊と審判」

都市伝説は鮫島事件。鮫島事件!? これには驚いた。
闇サイトSAMEZIMAは出ていたが、これは鮫島事件になぞらえた単なる記号だと思っていたのでまさか題材としてそのものずばり鮫島事件が出てくるとは思わなかった。
しかし終わってみればトリを務められるのは鮫島事件しかない。ネタとして消費されるだけの存在しない事件はこの作品で描かれたテーマそのものである。

この最終話はやはりラストのどんでん返しである。
廻屋=黒幕=如月弟の構図はもう見え見えで、真相の目くらましとして機能する。
第三話でさらっと触れられたアカウントハッキングが決まり手となるのも伏線が上手い。
それでもグレートリセットは止められずとんでもない被害が起こるのもいい。ある意味で世界崩壊レベルの災厄がもたらされた中、無垢なあざみだけがノーダメージでしかし呆然と立ち尽くすのもいい。ゲームで描かれた災厄の中でトップクラスだろこれ。
そしてラストに都市伝説解体センターへ向かう段に及び「この流れならもう絶対センターは存在しない」と確信し、朽ち果てたセンターに喜んでいるとさらに富入らの反応から「これあざみも存在しないな!」と期待が高まったところでの如月歩にはもう「キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」である。
もう★★★★★ 10である。

言われてみればドッピオである。黒幕の構図はそのままあざみへとスライドできる。ジャスミンは作中で一度も廻屋に会っていない。脳内廻屋はただの本人。これだけ怪異が解体された中で浮いていた千里眼も念視も全て説明が付く。いやはやプレイヤーの分身としてここまで操作させてきたあざみを全ての黒幕としてしまうとはゲームならではのとんでもない仕掛けだ。
我々はミステリを読み過ぎているのでスタッフロールとともに流れる「奇々解体」を聴きながらただただ伏線とどんでん返しに恍惚としているが、一般層は直前のジャスミンとの歴史的ハグやあざみの消失や如月=廻屋=あざみから導き出されるやるせない過去になんらかの精神的ダメージを負うらしい。我々はミステリを読み過ぎた…。

いや〜良いミステリかつ良い都市伝説物だった。ミステリ×オカルトの自分の好みにドンピシャの傑作だった。
あまりに話題を呼び過ぎた結果、名を売りたいのかなんなのか「推理不能な欠陥品」だの「ミステリを読み慣れた人間は楽しめない」だのと意味不明な主張をする変なのや、AIに書かせたとしか思えない存在しないクリア後要素をうたう攻略サイトなどが出てきたがそれさえもこの「都市伝説解体センター」で描かれた世界の断片なのである。
同じくゲームから現実になんらかの影響を与えられた例として(直近で思いついたのがこれなのがちょっとアレなのだが)「ウーマン・コミュニケーション」を思い出してしまったが、「都市伝説解体センター」をクリアした人間はもうこの影響から逃れられない。
一生忘れられないゲーム体験であった。