第十一回60分大喜利
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お題
次のテンプレ都市伝説を読み、2ヶ所の○○○のセリフを穴埋めして下さい。なお2ヶ所とも同じセリフが入ります。


俺の実家は四国の山奥にあるんだが、そこで中学2年の時に体験した話。
夏休みも中盤の8月10日頃だったと思うけど、友達のA、Bと夜中に集まって近所の山を探検することになった。
というのも山の麓から少し登ったところに、何も書かれていない絵馬のような物をぶら下げた注連縄が張りめぐらされた一角があって、地元の人らは聖域と呼んで誰も立ち入らない。
中学生の俺らは肝試しにはもってこいだと思ってそこへ向かった。

山の中には灯りなんてものは無くて、3人が1つずつ持った懐中電灯だけが頼りだった。
夏の盛りだから夜中でも暑くて、タオルで汗を拭きながらだったが、迷わずに「聖域」の入口に着いた。
3人の中で一番のヤンキーだったAを先頭に俺らは注連縄をくぐった。
しばらく進んでみたが何も起こらず、セミだかなんだかの鳴き声がやかましかった。
やがてAが足を止めて「おい」と低い声で後ろの2人に呼びかけた。懐中電灯の光を回して前方を指し示している。どうやら建物があるようだ。
近づいてみると神社とか祠じゃなくて、意外にも普通の住宅だった。聖域の中に普通の家が? と俺だけじゃなくて全員が考えたと思う。
どうやらここが聖域の中心だと察して、俺達は恐る恐る家に近づいた。Aがドアノブを回すと、これも意外なことに鍵が掛かってなかった。
聖域の癖に不用心だな、なんて言い合いながら中に入ると、埃っぽいが荒れ果てている様子はない。
玄関を入ってすぐに2階へ上がる階段があったけど、それは後回しにしてまずは1階を探索する。
外観と同じで内部もいたって普通の家だったが、どの部屋にも家具が一つもないからまるで新築のまま放置された家のようだった。
でも、手前の2つの部屋を探検し終えて、廊下の角を曲がった時に異様な光景が目に入って、思わず全員が足を止めた。
廊下の真ん中に鏡台が置かれていて、その前に長い髪の人形が座っていた。等身大で服は着ておらず、木で造られた胴体が見えていた。鏡に向かってうつむくようにお辞儀をし、少し右へ首を傾け、俺達のいる方向とは逆側を見ているようだった。
なぜ廊下に鏡台があるのか、人形が座ってるのか、何が何だかわからないが、とにかくやばいものだと直感した。
Bが震えた声で「やばいよ、絶対やばい。早く帰ろうぜ」と俺の腕をつかんで揺すった。俺も激しくうなずきながら人形の方を見ないように歩き出そうとして、すぐに気づいた。
「おい、Aはどこ行った?」
「え? いねえぞ。おい、どうしたんだよ」
Aがいない。2つ目の部屋を出るまでは確かにいた。鏡台を見つけた時もそばにいたと思う。
「どこ行ったんだよあの馬鹿!」
「おいA! 帰るぞ! 出てこい!」
怖さを紛らわせるように大声で叫びながら1階を探し回る。いない。どこにもいない。
「まさか2階か!?」
Bが言って、玄関そばの階段に駆け寄る。踊り場の先からうっすらと光が見えていた。懐中電灯の光だ。Aは本当に2階に行っている。
「A! 何してんだよ! 降りてこいよ!」
二人で大声を張り上げるが2階の光は動かない。仕方なく俺とBは2階へ上がった。
1階と同じような作りで、左右に部屋があった。光は右の部屋から漏れている。おっかなびっくり覗くと、Aがいた。懐中電灯で前を照らしている。
鏡台だ。1階の廊下にあったのと同じような鏡台があった。人形も座っている。Aはその後ろにボーッと立っていた。
「何やってんだよ!」
俺とBがAの肩を揺さぶるが、Aは何かに魅入られてるように鏡台を照らしたままびくともしない。
Aの手がゆっくりと動き、鏡台の一番上の引き出しを開けた。俺もBも中を見た。紙切れが入っている。
Aは躊躇せずそれをつかみ取ると開いた。

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マッチ棒パズルみたいなこんな絵が描かれていた。
Aはすぐにそれを引き出しに戻すと、今度は二番目の引き出しを開ける。また紙が入っていた。Aはそれも広げる。さっきと同じ絵が描かれていた。
「おいやめろって! どうしたんだよ!」
俺とBと二人がかりで引き離そうとするが、Aはまるで岩のように重くて動かない。
Aが紙を二番目の引き出しに戻し、一番下の引き出しに手をかけた。開いた瞬間、妙な音が聞こえた。
ぽ、ぽ、ぽ、ぽ、ぽ。
最初は鳩時計でも鳴ったのかと思った。雰囲気にそぐわない間の抜けた音だったが、その出どころを知って俺は青ざめた。
「ぽ、ぽ、ぽ、ぽ、ぽ」
Aだ。Aがしゃべっている。抑揚のない声でひたすらそれを繰り返している。
急にAの力が抜けた。今だと俺とBは二人してAを両側から抱きかかえるようにして部屋を出て、階段をどうにか下った。
玄関扉も閉めずに外に出た。Aはその間も「ぽ、ぽ、ぽ、ぽ、ぽ」としゃべり続けている。
「やばいやばいやばい」俺とBも壊れたようにそれだけをつぶやきながら、Aに肩を貸して出来るだけ早く歩いた。
すると前方からガタガタガタガタ! と激しい音が鳴り響いた。絵馬だ。あの絵馬付きの注連縄が揺れている。まるで誰かが縄を上げて入ってきたように激しく鳴っている。
「道を変えよう」
Bの提案にうなずいて、音のする方とは逆に足を向けた。
絵馬の音はすぐに鳴り止んだ。もう何者かが内側に入ったということだろうか。嫌な想像を振り払いながら走るが、なにぶんAが自分で歩こうとしないのでなかなかうまく行かない。
とうとう三人してつまずいて転んでしまった。俺は持っていた懐中電灯を落とした。起き上がりながらあわてて拾い上げ――光の照らす先を見ると、そこに木の陰から覗き込むようにしている何かがいた。
女だ。帽子をかぶり髪が長い。顔は真っ白で服は着ていない。左腕と右腕が三本ずつあった。女は口がない顔から、
「ぽ、ぽ、ぽ、ぽ、ぽ」と言った。
俺達は絶叫して走り出した。Aをほっぽり出さなかったのは今思うと奇蹟だと思う。
どのくらい駆け続けたのかわからない。気がつくとあの注連縄の所までたどり着いていて、這うように縄の下をくぐった。
二人で泣きながらAを引きずり麓を目指して走っていくと、また声が聞こえた。あの女が追ってきたのかと思ったが、よく聞くともっと大勢の声で、俺達を呼んでいるようだった。
声の方へ向かうと、俺の親父や祖父、Aの母親にBの父親、それに近所の知った顔がたくさん揃っていた。俺達を探しに来てくれたのだ。
途端に力が抜けて倒れ込んだ俺達に気づき、親父らが駆け寄ってくる。
「お前達あそこに行ったのか!?」
親父が俺を助け起こしながら怒鳴るように聞いてきた。
「あそこってあの家のこと?」
「家に入ったのか!?」
うなずくと、親父はいきなり俺を殴り飛ばした。Bの父親もBを殴った。怖い目に遭ったばかりなのに何をするんだと思っていると、ものすごい泣き声が上がった。Aの母親がAを抱き締めてわんわん泣いていて、その間もAはうつろな目で「ぽ、ぽ、ぽ、ぽ、ぽ」と言い続けている。
祖父が俺の前で膝をつき、しっかりと俺の目を見ながら言った。
「○○○」
呆然としている俺に手を貸して立ち上がらせると、祖父は険しい顔で「見たことを全部話してもらうぞ」と続け、Bの父親と話し始めた。Aは母親と近所の若い男らに抱えられ、どこかへ連れて行かれた。

その後、俺とBは祖父や親父らから矢継ぎ早にされる質問に答えた。特にAが鏡台の引き出しを開けたくだりは繰り返し繰り返し、正確に聞き返された。祖父らの顔はどんどん険しくなっていき、女の化け物の様子を話し終える頃には、脂汗を垂らして蒼白な顔になっていた。
そして祖父は「お前らはまだ大丈夫かも知れんが、Aはもう駄目だ」と宣告した。
俺もBも心のどこかでそれを予感していたのか、驚くよりも先にああやっぱりかと思った。
「大丈夫と言ってもすぐに対処しなければ危険だ。明日にはC寺に行かないとな」と親父が言った。
C寺は親戚の葬式があるといつも法要を行う、隣県の寺のことだ。なぜ葬式をわざわざ別の県で行うのかずっと不思議に思っていたが、その理由はどうやらあの家と関係があるようだった。

その夜のうちに俺とBは車に乗せられC寺に向かった。てっきりAも連れて行くのかと思ったが二人だけで、何度か入ったことのあるお堂ではなく、奥の小さな、小型の神社のような所に入れられた。
見知った坊さんではなく、もっと年寄りの初めて会う爺さんが出迎えてくれた。爺さんは俺とBの顔を見るなり「ああ、なんとか大丈夫そうだな」と言った。初対面の人に言われただけなのに俺は妙に安心感を覚えた。
年格好からいつもの坊さんの父親かと思っていたが、話によると坊さんとは全く関係なく、こういうことが起きると呼ばれる霊媒師だと言う。
改めて俺達が肝試しの話を詳しくすると、爺さんはメモ帳に、例のAが引き出しから取り出したマッチ棒パズルみたいな模様を書き、これと同じものを見たか尋ねた。
確かに見た、2番目の引き出しにも同じものがあった、3番目の引き出しの中はAしか見ていない、と言うと「やはりAは駄目だろう」と爺さんは首を振った。
メモ帳からパズル(?)の絵を破り取り、口の中で何かつぶやきながら近くの蝋燭の火で燃やすと、爺さんは昔話を語り出した。

俺達の村にその昔、大きな霊力を持った巫女がいた。巫女は霊力を使って旱魃や台風を防いだり、盗賊や化け物を追い払ったりと村をたびたび救っていた。巫女の力はその娘へと代々受け継がれていき、巫女の一族は大きな権力を持っていた。
ところが村長ら村の有力者達はそれが面白くなくて、巫女に反感を持っていた。そしてある時、村を大蛇が襲うと、村長やその協力者はあろうことか大蛇に味方して、巫女を食べさせてしまった。
巫女は最期の力を振り絞って大蛇を封印したが、その儀式を行っているさなかに、村長達は巫女の一族を皆殺しにしてしまった。
これにより村長は権力を奪い返したが、不測の事態が起こった。巫女と大蛇が融合し新たな化け物が生まれてしまったのだ。化け物は当然のごとく村長達を恨んでいた。村長はあわてて高名な霊媒師を呼び寄せると、元巫女の化け物を封印させた。しかし元巫女の霊力は強く、単純に封印することはできなかった。元巫女の霊力を弱めるため、いったん霊媒師の幼い娘の身体に元巫女の霊を乗り移させた。子供の身体では大きな霊力を操れないかららしい。
そうして元巫女の依代にして生贄となった娘に霊媒師は儀式を行う。このあたりから難しい話になって俺には半分も理解できなかったが、とにかくあの鏡台や人形を使い、元巫女の力をあちこちに分散させていくようだ。
娘は大人になって子供を産むと、またその娘に元巫女の霊を移す。それを繰り返していき、ようやく元巫女の力はだいぶ薄れて、今では子供に移さなくてもいいところまで来たそうだ。
だが封印は完全ではなく、あの鏡台や人形、引き出しの中の元巫女の姿形をかたどった絵に触れると、封印が一時的に解かれ、中にいる人間を襲うのだという。
「特にまずいのが、一番下の引き出しに入っているものだ。あれは触れるどころか見ただけで駄目だ」と霊媒師の爺さんは言う。Aはあれを見たからもう駄目なのだと。
当然疑問に思うのは、あそこに何が入っているかだ。俺ももちろん尋ねたが、爺さんは教えてくれなかった。
「知らない方がいい。あれは封印の儀式の根幹を成すもので、最も恐ろしいものなのだ」とだけ言った。

それから3日間、C寺に寝泊まりして爺さんのお祓い(?)のようなものを受けた。
途中も何度か不思議な事が起こって、俺とBが二人きりで籠もった小さなお堂を外からバンバン叩かれたり、あの「ぽ、ぽ、ぽ、ぽ、ぽ」という声もすごく遠くから微かにだが聞こえることもあった。
そしてどうにかお祓いを終え、ようやく帰ることを許され、爺さんも肩の荷が下りたような顔をしていた。
別れ際にも爺さんはくどくどと小言を言ったが、俺もBも神妙に頭を垂れるばかりだった。
と、その小言の中で一つだけ引っかかったことがあった。
爺さんは俺達が、あの家の窓か何かを割って侵入したのだと思っていた。鏡台や元巫女のことばかり集中して話していたから、細部が抜け落ちていて、そもそもどうやって家に入ったのか言っていなかったのだ。
俺が最初からドアの鍵が開いていたと話すと、爺さんは顔色を変えてこう言った。
「○○○」

結局2日間、追加でお祓いを受けることになり、最後にはなるべく数年間は鏡を見ないこと、ありとあらゆる人形に近づかないことを言い含められ、ようやく帰途につくことができた。
俺は言い付けを守り、鏡や人形には近づかないよう気を配った。Bとは同じ高校に進んだがそれ以来なんとなく疎遠になり、今では連絡先も聞いていない。
Aは夏休みが終わると同時に他県に引越していったため、その後どうなったかは聞いていないし、知りたいとも思わない。
今でもあの家の夢を見るし、空耳かも知れないが「ぽ、ぽ、ぽ、ぽ、ぽ」という声を聞くこともある。
順位 合計 作品
116
[No.15] 5点1 3点3 2点1 ぺるともさんの作品
祖父と霊媒師「テニスには段とか、級みたいなのはあるの?
213
[No.09] 5点0 3点3 2点2 月の戯れミルクティーさんの作品
祖父と霊媒師「空港、また出来るって
310
[No.23] 5点1 3点1 2点1 アスワンハイダムさんの作品
祖父と霊媒師「いいじゃん
310
[No.21] 5点0 3点2 2点2 ちきさんの作品
祖父と霊媒師「マリオ3のピラミッドの面
58
[No.05] 5点1 3点1 2点0 ネイノーさんさんの作品
祖父と霊媒師「電気を点けないで良かったな
67
[No.06] 5点0 3点1 2点2 ネイノーさんさんの作品
祖父と霊媒師「言い訳は地獄で聞く
76
[No.07] 5点0 3点0 2点3 とりあえず地主さんの作品
祖父と霊媒師「クーポン使えますか
76
[No.16] 5点0 3点0 2点3 かーたーさんの作品
祖父と霊媒師「ポン酢は合うよ
95
[No.11] 5点0 3点1 2点1 月の戯れミルクティーさんの作品
祖父と霊媒師「顔色が、入れ替わっとる―!?
95
[No.19] 5点0 3点1 2点1 極さんの作品
祖父と霊媒師「くまのプーさんは所詮熊なんじゃ
114
[No.01] 5点0 3点0 2点2 からかんさんの作品
祖父と霊媒師「え、家でラーメン食べるときもレンゲ使うの?
114
[No.12] 5点0 3点0 2点2 墓さんの作品
祖父と霊媒師「バリバリ最強伝説No.1栃木レペゼン最強
114
[No.24] 5点0 3点0 2点2 とりあえず地主さんの作品
祖父と霊媒師「Skype上げといて
143
[No.08] 5点0 3点1 2点0 月の戯れミルクティーさんの作品
祖父と霊媒師「話、なっが
152
[No.04] 5点0 3点0 2点1 きょくにゃんさんの作品
祖父と霊媒師「ポンポンスポポン、ポンスポンポンポン!ポンポンスポポン、ポンスポンポンポン!お馬鹿なテンポとお馬鹿なダンスでサタデーナイトに馬鹿集合!
152
[No.10] 5点0 3点0 2点1 月の戯れミルクティーさんの作品
祖父と霊媒師「もう、お土産にシュークリーム持ってこないで
152
[No.17] 5点0 3点0 2点1 田吾作ダイナマイトさんの作品
祖父と霊媒師「だから言うたやん
152
[No.18] 5点0 3点0 2点1 蛇口捻流さんの作品
祖父と霊媒師「バイト探しはタウンワーク
190
[No.02] 5点0 3点0 2点0 トーマスさんの作品
祖父と霊媒師「鼠先輩!
190
[No.03] 5点0 3点0 2点0 副編集長さんの作品
祖父と霊媒師「カボチャ硬ない?
190
[No.13] 5点0 3点0 2点0 ひろちょびさんの作品
祖父と霊媒師「元気100倍!アンパンマン!
190
[No.14] 5点0 3点0 2点0 アントニオカッキーノさんの作品
祖父と霊媒師「ミヤネ屋のお時間です
190
[No.20] 5点0 3点0 2点0 小金沢さんの作品
祖父と霊媒師「ここはラダトームのまちだよ!
190
[No.22] 5点0 3点0 2点0 小金沢さんの作品
祖父と霊媒師「アバカム使えるのか?
190
[No.25] 5点0 3点0 2点0 ダンディS.Tさんの作品
祖父と霊媒師「あれだな、赤と緑は普通に発売されたのに、青は雑誌だけで当初売られ、後にコンビニで発売されて、途中から一般でも売られたあれだろう?一時的に値が上がったけど、下がったのを見た人はどう思ったんだろうかな?
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この回に投票して頂いた方(敬称略)
かーたー / ひろちょび / ネイノーさん / 月の戯れミルクティー / 小金沢 / 副編集長 / 夜のこさたに

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