ESW 08年11月1週





リング


PPVで3度目のESW王座に輝いたすじこが、ベルトを誇示しながらリングに上がる。


すじこ「今夜はこの言葉をなんの偽りも誇張もなく言うことができる。
ベルトを獲れたのはお前たちファンのおかげだ。俺を選んでくれてありがとう!!」


すじこの感謝の言葉に客席が沸き返る。「すじこ!」チャントが会場中から上がった。


すじこ「これで3度目のESW王座だが、頂点ってのは何度立ってもいいものだな。
山登りなんてなにが楽しいんだろうと思っていたが、いまなら登山家の気持ちが解る。
頂点から見下ろす景色は最高なんだ。一度その景色を味わっちまうと、また何度でも見たくなるんだ。
なぜベルトに挑むのか? そこにベルトがあるから、ってな。
俺は上がり症だったが、それももう克服した。俺はもう二度ときゃ……。
もう一度言おう。俺は、もう、二度と、噛む、ことは、ない!

知ってのとおり俺は才能豊かな男だが、そんな俺だからこそ3度も王者に輝くことができたんだ。
1度や2度じゃない。3度だぜ。ESW王座を2度以上制した男は俺だけだ。2度ですらいないんだぜ。俺は――」


そこに首からハードコア王座ベルトをさげたミスター・パンダパンダが現れた。
うなり声を上げながら、じっとすじこを見つめる。





すじこ「お、おうパンダじゃないか。そういえばお前も2度目のハードコア王座を手にいれたんだったな。
……不思議だな。お前を見ているとハードコア王座を獲ったのは3度目だった気がしてくるぜ。
と、とにかく3度の王者同士、なかよくしようじゃないか」


すじこがおそるおそるパンダの背中をなでていると、
今度はESW王座第一挑戦者のキャプテン・ザ・ネイノーが現れた。


ネイノー「王者同士が交流を深めているところ悪いが、そろそろどいてもらえないかな。
観客はお前たちよりも小生を見に来ているのだ。次期ESW王者の小生をな」


すじことパンダが歯をむき出してネイノーをにらみつけていると、さらに前ESW王者の赤いスライムが現れた。


赤いスライム「楽しそうだな。俺も混ぜてくれよ。ベルトの話だったら俺を抜きに語れないだろう?」

ネイノー「敗者がなんの用だね。昨夜のPPVでお前だけが勝利を得られなかったではないか」

赤いスライム「投票で選ばれなかったお前も敗者ではないのか? 先人はうまいことを言った。『五十歩百歩』とな」


ネイノーと赤いスライムがにらみ合っていると、つづいて新タッグ王者ラ・もんぺのみんなのうたとwillが現れた。





みんなのうた「ベルトの話なら僕たちも忘れないでくれよ」

will「特にESW史上初の全王座制覇、グランドスラムを達成した私のことをな」


5人と1匹がたがいに口論していると、そこにようやくオーナーのポール・ヘゴバンがやってきた。


ヘゴバン「お前たちがやり合っていると視聴率は上がるが番組が進まんではないか! ここはオーナーである私が裁定を下す!
まず赤いスライムとキャプテン・ザ・ネイノーはシングル対決だ!
そして新ESW王者のすじこは、新ハードコア王者のミスター・パンダパンダと組み、
新タッグ王者のラ・もんぺことみんなのうた&willと対戦しろ! 題してナイト・オブ・チャンピオンズだ!!」


オーナーの決定に観客も大歓声でこたえる。5人と1匹は早くも激しく火花を散らしあっていた……。


CM


次週、ラウディ・ロディ・ギバパーがFVD襲撃事件の真相に迫る!
物議をかもすギバパーズ・ピットのゲストは、FVD襲撃犯マーボノタロウ!
アイルランド流の取調べを見逃すな!!





控え室


モニターを見ていたぼれろが愚痴る。


ぼれろ「……FVD襲撃犯って、俺も襲われたのに俺のことは無視かよ。
まあ、タッグ王座挑戦権を手に入れたからそんなことはどうでもいいか」

レイ・ラモステリオ「まさか君と組んでこんなことになるとは思わなかったよ。チャンスをもらったからには絶対に勝とうぜ」


そこに前タッグ王者のサン・ゲラス&サモハンが現れた。


サン・ゲラス「ふざけやがって……。前王者のオレたちが先にベルトに挑むべきだろうが」

サモハン「オーナーの野郎、タッグ王座戦に挑むのはぼれろとラモステリオが先だとかぬかしやがった。むかつくぜ」

サン・ゲラス「こうなったらてめぇらを血祭りに上げて、改めてオレらの力を見せつけてやらないとな!」

ぼれろ「俺たちと試合をしたいのか? いいだろう。
60億人のESWファンに選ばれし、夢のタッグである俺たちが相手してやるぜ!」





GM室


メモ町&パン砂糖パン&ザ・グレート・ギバがGMのFVDに詰め寄っている。


メモ町「俺たちを疑ったことが濡れ衣だったことがわかった以上、謝罪してもらうぜ」

パン砂糖パン「謝れ! 俺たちに謝れ!」

ザ・グレート・ギバ「フンガーーーーーッ!!」

FVD「わかったわかった。悪かったよ。謝る謝る。疑ってすまん」

メモ町「それだけでは納得いかんな。そう、第一次世界大戦に敗れたドイツが多額の賠償金を払ったように貴様も――」

パン砂糖パン「つまり謝罪の証として俺たちのために試合を組んでもらおう。いや、王座戦じゃない。
俺たちを有名にする試合だ。たとえば……11月PPVで俺たちとヘボリューションの試合なんてどうだ?」

FVD「ふむ……それはGMとしても興味深い提案だな。11月PPV『SURVIVOR SEASON』ではチーム戦を中心に試合を組む。
お前たちとヘボリューションの試合は目玉になるだろうな」

ザ・グレート・ギバ「フンガー、フンガーw」

FVD「それでは赤いスライムじゃないが善は急げだ。前哨戦といこうじゃないか。
今夜、俺はザ・グレート・ギバと、metroはパン砂糖パンと試合だ」

パン砂糖パン「望むところだぜ! ……メモ町、いくぞ」

メモ町「一方、第二次世界大戦のおりイタリアはいち早く連合軍に降伏ししたため賠償金を免れ――ん?
ああ、長話は終わったのか?」

ザ・グレート・ギバ「………………」








11月1週対戦カード

<ナイト・オブ・チャンピオンズ>
すじこ&ミスター・パンダパンダ vs みんなのうた&will


<シングル戦>
赤いスライム vs キャプテン・ザ・ネイノー
ぼれろ vs サン・ゲラス
レイ・ラモステリオ vs サモハン
FVD vs ザ・グレート・ギバ
metro vs パン砂糖パン
スコット・シタイナー vs 生活ライフ





ESW 08年11月2週




実況「今夜も注目の試合が目白押し! 連続でMVPに輝いているmetroが、Mr.PPのハードコア王座に挑戦します!」

解説「タッグ王座挑戦権を持っているぼれろ&レイ・ラモステリオは、前王者のサン・ゲラス&サモハンと激突だ!」

実況「そしてメイン戦はなんと10月PPVのリマッチ、すじこ vs 赤いスライムです!」

解説「リングにはロディ・ギバパーがやってきたぞ。さっそくギバパーズ・ピットが始まるみたいだぜ!」


ギバパーズ・ピット


ロディ・ギバパーが笑顔でマイクを握っている。


ギバパー「俺はトークが下手だからさっさとゲストを呼ぶぜ。
GMのFVDと、あと……誰だっけか。とにかくFVDとかを襲った襲撃犯、マーボノタロウだ!」


ふてぶてしく巨体を揺らして現れたマーボノタロウは、いきなりギバパーのマイクを奪った。


マーボノタロウ「お前に話してやることなんてない」


それだけ言って帰ろうとするマーボノタロウの肩を、ギバパーがつかんだ。


ギバパー「おいおい、俺のショーをそんなに早く終わらせないでくれよ。
実はもう一人ゲストを呼んであるんだ。そいつにもぜひ会っていってくれ」


ギバパーの合図で姿を現したのは――GMのFVDだった。


FVD「なぜ俺を襲ったのかは聞かない。GMとしていろいろ恨みは買ってるし、俺を倒せば有名になれるからな」

マーボノタロウ「ボクはとっくに有名だ。お前を殴ったのはそんな理由じゃない。ボクは――」

FVD「だから理由はどうだっていいって言っただろ。殴られたら殴り返すのがレスラーのおきてだ。かかってこい」


FVDはマイクを投げ捨てネクタイをゆるめ、ファイティングポーズをとる。
ギバパーはリングを飛び降り、マーボノタロウはしこを踏んだ。
一触即発の空気が流れたが、FVDは思い直したようにマイクを拾い上げた。


FVD「ちょっと待った。俺はレスラーであると同時にGMでもあった。GMらしい裁定を下そう。
マーボノタロウ、お前は今すぐパンジャーブの悪夢、ザ・グレート・ギバと試合だ!」


あらかじめ言い含めてあったのか、すぐさまザ・グレート・ギバが現れる。
マーボノタロウはリングを下りたFVDをにらみながら、臨戦態勢をとった……。





オーナー室


赤いスライムがオーナーのポール・ヘゴバンと話している。


ヘゴバン「……よろしい、貴様のESW王座挑戦を認めよう。
11月PPV『SURVIVOR SEASON』のESW王座戦は、すじこ vs キャプテン・ザ・ネイノー vs 赤いスライムだ!」

赤いスライム「ずいぶんあっさり認めたな。お前の魂胆はわかっているぞ。
『SURVIVOR SEASON』で行われるもうゴリーズのチーム戦に、俺を出したくないのだろう」

ヘゴバン「はて、なんのことだろうな」


オーナーがとぼけていると、そこに生活ライフが飛び込んできた。


生活ライフ「オーナー! 俺とwillの試合を組んでくれたそうだな。ありがたいぜ」

赤いスライム「なに? お前、willと戦うつもりか」

生活ライフ「俺は常々あいつを認めないと言っていたはずだ」

赤いスライム「だがwillは、お前たちのリーダーみんなのうたとタッグを組んでいる。お前とwillが戦えば不協和音を招くぞ」

生活ライフ「知ったことか! ……あんた流に言うなら、俺とwillは『不倶戴天』の間なんだよ」


ライフは荒々しい足取りで部屋を出ていく。
眉をひそめる赤いスライムの背後で、ヘゴバンはいやらしい笑みを浮かべていた……。





CM


――いま業界で最も熱いチームを知っているか?
メモ町! パン砂糖パン! ザ・グレート・ギバ!
才能とルックスに恵まれた三人が大喜利プロレスを革命する!!

その名は甘ズッキーニ――。


11月PPV『SURVIVOR SEASON』で甘ズッキーニ vs ヘボリューションのチーム戦が実現!!
冬を吹き飛ばす熱い戦いを見逃すな!!


飼育室


ミスター・パンダパンダの檻の前で、キャプテン・ザ・ネイノーが携帯をいじっている。
そこにESW王者すじこがやってきた。


すじこ「ようネイノー、なにやってるんだ」

ネイノー「なんでもない。いずれこのパンダと戦うときに備え、パンダにとって有害だが楽に手に入る食物を探していただけだ」

すじこ「研究熱心だな。そうやって俺のことも調べているのか?」

ネイノー「貴殿ごときについて調べることなどない。貴殿の手の内はすべてわかっているからな」

すじこ「ところでお前も聞いたと思うが、PPVでは赤いスライムを加えた三人で戦うことになった。
だがその前に来週、俺とお前の決着をつけないか? 俺たちの対戦成績はちょうど2勝2敗のイーブンだからな」

ネイノー「ほう……王座戦の前に自らケガをしたいとは殊勝なことだ。
その提案のんでやろう。だがひとつ条件がある。試合形式は小生が決めてやろう」

すじこ「いいだろう。なにをやるつもりだ?」

ネイノー「ラストマン・スタンディング戦だ! 貴殿から10カウントを奪い、その五体と誇りを打ち砕いてくれる」

すじこ「面白え! ラスト・ボーイスカウト戦でお前の息の根を止めてやるよ!」








11月2週対戦カード

<ハードコア王座戦>
ミスター・パンダパンダ vs metro

<タッグ戦>
サン・ゲラス&サモハン vs ぼれろ&レイ・ラモステリオ

<シングル戦>
すじこ vs 赤いスライム
will vs 生活ライフ
マーボノタロウ vs ザ・グレート・ギバ
キャプテン・ザ・ネイノー vs パン砂糖パン
みんなのうた vs DDP
FVD vs スコット・シタイナー






ESW 08年11月3週




リングに現れたオーナーのポール・ヘゴバンがにこやかな顔で語りだす。


ヘゴバン「最近は楽しいことが多いな。metroは連日のMVPでハードコア王座に輝いたし、
FVD襲撃犯も判明したし、もうゴリーズは仲間割れでボロボロだ。
そう、にっくきもうゴリーズは私が手を下すまでもなく崩壊の危機に瀕している。
だが私は天才であると同時に、用心深い男だ。慎重にリスクを回避し、巨万の富を築き上げた。
だから今夜も念には念を入れてもうゴリーズをつぶしてやる。
控え室にいるレスラーたちよ! この中にもうゴリーズをつぶして名を上げようというヤツはいないか!?」


ヘゴバンの呼びかけに応じて出てきたのは――甘ズッキーニのパン砂糖パンとザ・グレート・ギバだった。


ヘゴバン「貴様らだと……」

パン砂糖パン「感謝しろよ。PPVであんたらヘボリューションを倒す前に、もうゴリーズも倒してやるよ!」

ザ・グレート・ギバ「フンガー、フンガー」

ヘゴバン「毎週のように出しゃばりおって、生意気な連中だ……。
だが貴様らともうゴリーズがつぶし合うのは愉快な話だな。許可してやろう。
貴様ら二人と赤いスライム&生活ライフの試合を命じる!」

パン砂糖パン「やってやるぜ!!」



廊下


今夜のすじことのラストマン・スタンディング・マッチに備え、竹刀を手入れするキャプテン・ザ・ネイノーが映される。


GM室


GMのFVDにサン・ゲラス&サモハンがからんでいる。


サン・ゲラス「PPVでもうゴリーズと戦う相手はまだ決まってないのか? なんならオレたちがやってもいいんだぜ。
金次第でな!」

サモハン「ぎゃははは! 上から目線の挙句、金まで要求するなんてどこまで外道なんだよお前は!」

FVD「わかったわかった。まだなにも決まっていないからな。検討しておくよ」


そこにちろすけが横から顔を出した。


ちろすけ「もうゴリーズなら、大型新人の俺がつぶしてやってもいいぜ。俺ならタダでやってやる」

サン・ゲラス「あぁん? なにひとのビジネスに首つっこんでんだよ。
大型新人だぁ? でかいのは態度だけじゃねーのかコラ」

FVD「言い争いならオフィスの外でやってくれ。俺はハードコア王座戦の準備をしたいんだ。
なんならお前たちの試合を組んでやる。リングに向かえ」


FVDがサン・ゲラスとちろすけを追い出すと、サモハンが食ってかかった。


サモハン「自分はハードコア王座に挑戦で、サン・ゲラスと新入りに試合を組んでやって、俺は仕事無しか?」

FVD「そんなことは言っていない。お前の今夜の相手は……そうだな、マーボノタロウなんかどうだ」

サモハン「!? ちょwwwwおまwwww」

FVD「強豪と戦えてハッピーだろ? 俺みたいにうしろから殴られないよう気をつけろよ」

サモハン「………………」





控え室


今夜のラストマン・スタンディング・マッチに備えて、
ラストマン・スタンディングの意味を辞書で調べているすじこが映される。


バックステージ


ショー・ギバキが来週タッグ王座に挑戦するぼれろ&レイ・ラモステリオをインタビューする。


ギバキ「来週はいよいよ大一番だけど、調子はどうだい?」

レイ・ラモステリオ「はじめは絶対ダメだと思ったけど、意外と相性がよくてびっくりしてるよ。
連勝してるし、このままタッグ王座を奪い取る気さ」

ぼれろ「そのとおりだラモステリヤキ。俺たちはファンに選ばれた最強のタッグだからな。
俺たちには120億人のファンがついている!」

ギバキ「地球の人口より多い気がするんだけど……」

ラモステリオ「あと俺はラモステリオだ」

ぼれろ「120億人が俺たちの勝利を望んでるんだ! 鳥の歌もwallもぶっ倒して俺たちが新タッグ王者になるぜ!」

ラモステリオ「…………ま、そういうことだ。今夜はタッグ王者とシングル対決だしね。とにかく勝ってみせるよ」








11月3週対戦カード

<ラストマン・スタンディング・マッチ>
すじこ vs キャプテン・ザ・ネイノー

<ハードコア王座戦>
metro vs FVD

<タッグ戦>
赤いスライム&生活ライフ vs パン砂糖パン&ザ・グレート・ギバ

<シングル戦>
みんなのうた vs ぼれろ
will vs レイ・ラモステリオ
サン・ゲラス vs ちろすけ
サモハン vs マーボノタロウ
スコット・シタイナー vs セキュリティ





ESW 08年11月4週




リングに立ったFVDの司会で番組が始まった。


FVD「今夜は渦中の三人に集まってもらい、討論会を行う。紹介しよう、まずはESW王者すじこの登場だ!」


ベルトを見せびらかしながら現れたすじこは、FVDとむりやり握手を交わした。


すじこ「お招きありがとう。今夜はハードコア王座も譲ってくれるそうだな。楽しみにしてるぜ」

FVD「お前とのハードコア王座戦の話をしたいわけじゃない。――つづいてはキャプテン・ザ・ネイノーを呼ぼう」


ひさびさに客席を通って現れたネイノーは、FVDとすじこにガンを飛ばす。


ネイノー「ヘゴバンより貴殿ならマシだが、呼びつけられるのは好まぬ。なんの用だ」

FVD「もちろん来週に迫ったESW王座戦に向けて討論してもらいたいんだ。――最後は赤いスライムの登場だ!
……といきたいところだが、あいにくと赤いスライムは今夜は休暇をとっている。そこで代役に来てもらおう」


代役として現れたのは――ぼれろだった。


すじこ「…………おい、なんでぼれろなんだ」

ぼれろ「おいおい、俺じゃ不服だとでも言いたそうだな」

ネイノー「不服だ。貴殿はESW王座戦はおろか赤いスライムとも関係ない」

ぼれろ「今夜新ESWタッグ王者に輝く俺がせっかく来てやったのに、ひどいヤツらだぜ」

すじこ「だったらタッグ王座戦の準備でもしていろ」

ネイノー「まったくくだらん企画だ。小生は帰らせてもらう」


ネイノーはマイクを捨てて帰っていった。


ぼれろ「俺の元相棒はあいかわらず短気だな。……で、すじこさんよ。ESW王座戦への意気込みはどうだ?」

すじこ「なんでお前が仕切るんだ。おいFVD、こいつはほっといてハードコア王座戦をやろうぜ」

ぼれろ「ひとを呼びつけておいて無視するとは何事だ。俺は――」


リング上がぐだぐだになっていると、突如そこに甘ズッキーニのテーマが流れ出した。
パン砂糖パンとザ・グレート・ギバがリング現れると、すじことFVDはすぐさまリングを下りた。
グレート・ギバは逃げ遅れたぼれろを捕らえ、ギバ・ボムでマットに叩きつけた。


パン砂糖パン「先週はもうゴリーズを片づけた。そしてPPVではヘボリューションを叩きつぶす。
俺たちがESWを席巻する甘ズッキーニだ!!」


CM


今夜のメイン戦はESWタッグ王座戦!
みんなのうた&willのラ・もんぺの牙城を異色のタッグ、ぼれろ&レイ・ラモステリオは破れるのか!?


GM室


モニターでリングの様子を苦々しく見ていたヘゴバンの前にmetroが現れた。
負傷欠場中の相棒かまいたちを伴っている。


かまいたち「久しぶりだなオーナー! 5回! 5回! 5回WYW王者に輝いた俺が帰ってきたぞ!」

ヘゴバン「わかったわかった。それでいったいなんの用だ」

かまいたち「今夜は無口なmetroの代わりに交渉に来たんだ。ここにmetroの書いた意見書がある。いいか。
俺は――この場合の俺はmetroのことだぞ――俺は、この数週間で5度のMVPに輝いた。
これはすなわち、いまのESWは俺――metroのことだぞ――が動かしているといっても過言ではない。
だがMVPをいくらとってもハードコア王座にしか挑戦できない。
ESWを支える俺(ryに、上層部はもっと報いるべきではないだろうか」

ヘゴバン「……つまりなにが言いたいんだ」

metro「俺をESW王座に挑戦させろ」

ヘゴバン「!?」


metroは metro「俺をESW王座に挑戦させろ」 と書かれたプラカードを掲げていた。


ヘゴバン「まぎらわしいことをしおって! ……だが貴様の最近の活躍には目を見張るものがある。
いちおう検討しておいてやろう。……待て待て、今度は私が話をする番だ。
ESW王座に挑戦したいなら、それ相応の力を見せてもらおう。今夜、貴様はザ・グレート・ギバと対戦だ!」

metro「!」

かまいたち「面白え! やってやろうじゃねえか!! ギバなんてインドの山奥までぶっ飛ばしてやるぜ!!
……とmetroは思っているぜ」

metro「………………」



バックステージ


ショー・ギバキが先週に続きタッグ王者のみんなのうた&willをインタビューする。


ギバキ「今週はいよいよ大一番だけど、調子はどうだい?」

みんなのうた「先週とほとんど同じセリフをありがとう。正直言って負ける気がしないね」

will「ただでさえ楽勝なところに、ぼれろはギバにやられていたからな。問題にならん」

みんなのうた「僕らがタッグを組んだことで物議をかもしていることは知っている。
だが、だからこそ負けるわけにはいかない。僕らはタッグの歴史を、そしてESWを変革するんだ」

will「ぼれろ? レイ・ラモステリオ? それがどうした。
先週のシングル戦でもヤツらが我々にかなわないことは証明した。今週も同じことをするだけだ」






11月4週対戦カード

<タッグ王座戦>
みんなのうた&will vs ぼれろ&レイ・ラモステリオ

<ハードコア王座戦>
FVD vs すじこ


<シングル戦>
キャプテン・ザ・ネイノー vs あんにゅい竹
metro vs ザ・グレート・ギバ
サン・ゲラス vs 生活ライフ
サモハン vs パン砂糖パン
マーボノタロウ vs セキュリティ






ESW 08年11月PPV




実況「外には冬の気配が押し寄せていますが、会場の中は熱気で渦巻いています!!」

解説「1年で最も過酷なPPVがいよいよ開幕だぜ! 今夜は2つのチーム戦が予定されてるぞ!」

実況「ヘボリューションは因縁の甘ズッキーニと激突!
ヘボリューションからはGMのFVDとmetro、それにセキュリティが参戦です!」

解説「甘ズッキーニからはパン砂糖パンとザ・グレート・ギバだ! それにFVDを襲ったマーボノタロウが加わるぞ!」

実況「その他にももうゴリーズのチーム戦に、メインではESW王座三つ巴戦も行われます!」

解説「リングにはサン・ゲラス&サモハンが出てきたぞ。なにをするつもりだ?」


リング


リングに上がったサン・ゲラスがマイクを握る。


サン・ゲラス「今夜はPPVらしいが、オレたちから見たら小粒なカードばかりだぜ。
ESW王座戦? ヘボリューション vs 甘ズッキーニ? もうゴリーズ?
どいつもこいつもオレたちと比べたら小物だろ?」

サモハン「だから俺たちがPPVにふさわしいゴ〜ジャスな試合を見せてやるぜ!
それは……もちろん俺とサン・ゲラスの試合だ!!」

サン・ゲラス「前タッグ王者のオレたちによる夢の対決だ! これ以上豪華なカードはないぜ!」


サン・ゲラスとサモハンは上着を脱げ捨て身構えるが、観客の反応はかんばしくない。
と、そこへ。


レイ・ラモステリオ「おいおい、試合予定がないからって勝手なことをするなよ。
観客はお前たちのシングル戦だけじゃ不満そうだぜ。
でも……そこに俺が加わったら、もっと面白くなると思わないか?」


水を差されたサン・ゲラス&サモハンは不満をあらわにするが、観客は大歓声でラモステリオを迎えた……。


GM室


ポール・ヘゴバンの前にぼれろ、あんにゅい竹、スコット・シタイナーの3人が並んでいる。


ヘゴバン「貴様らにはある共通点がある。それがなんだかわかるか?」

ぼれろ「呼ばれたのが俺だけだったら、イケメンというくくりで決まりなんだけどな」

ヘゴバン「…………。そうだ、貴様らの共通点は無冠の王者だ。貴様らはまだタイトルを獲ったことがない!」

あんにゅい竹「……僕はSYWでクルーザー級王座を獲ったよ。最後の王者だったよ」

ヘゴバン「ESWでの話だ! そこで寛大な私は、貴様らにチャンスを与えてやろうと思う」

シタイナー「ほう。王座戦でも組んでくれるのか?」

ヘゴバン「もうゴリーズを倒したら、な。今夜貴様ら3人はチームを組み、もうゴリーズと戦う。
もし貴様らが勝ったら、貴様らのチームの上位2名を、12月PPVでタッグ王座に挑戦させてやる」

ぼれろ「そ、それは本当か!?」

あんにゅい竹「それは楽しそうだね……。ちょっとがんばってみようかな……」

スコット・シタイナー「相棒のDDPには悪いが、そいつは大きなチャンスだな。俺の筋肉がうずくぜ」

ヘゴバン「くっくっくっ……せいぜいがんばるがいい」


もうゴリーズ控え室


モニターを見ていたもうゴリーズの面々の間に、不穏な空気が流れている。


生活ライフ「リーダーのあんたと組むのは賛成だ。だがwillと組むのは承服できない」

みんなのうた「お前がwillと馬が合わないのはわかるが、しかし見てのとおり相手は3人だ。2人では勝ち目がない」

will「私もお前と組むのは気が進まないが、チームの勝利のためにエゴは抑えてやろうというのだ。それでも不服か?」

生活ライフ「なにがチームだ! お前はもうゴリーズのメンバーじゃない。認められるものか!
……いいか、みんなのうた。あんたの顔を立てて今夜はwillと共闘してやる。だが、これっきりだぞ」


ライフは荒々しくドアを蹴り開けて出て行った……。


実況席


実況「もうゴリーズは試合前から空中分解の様相です。はたして勝利できるのでしょうか」

解説「相手は3人そろってやる気満々だからな。厳しい戦いになるぞ」

実況「珍しく鋭い指摘ですね。その調子でメイン戦の分析もお願いしましょう。
ESW王座を争い三つ巴戦を行うすじこ、キャプテン・ザ・ネイノー、赤いスライムの誰が有利ですか?」

解説「勢いに乗ってるのは先週ハードコア王座を奪ったすじこだ。
三つ巴戦は王者に不利だが、いまのヤツの充実ぶりなら関係ないだろう」

実況「前王者の赤いスライムはどうですか?」

解説「なんといってもヤツは8月にエリミネーション・チェンバーを制している。乱戦はお手の物だぞ。
乱戦と言ったらキャプテン・ザ・ネイノーもだな。レフェリーの目を盗んで凶器を持ち込めたら、あいつの勝ちだ」

実況「今夜のあなたは本当に冴えてますね! どうしてしまったんでしょうか。
そんな波乱づくめのPPVはまだまだつづきます!!」




11月PPV対戦カード

<ESW王座三つ巴戦>
すじこ vs 赤いスライム vs キャプテン・ザ・ネイノー

<チーム戦>
ヘボリューション
FVD&metro&セキュリティ
vs
甘ズッキーニ with ボノ
パン砂糖パン&ザ・グレート・ギバ&マーボノタロウ

<チーム戦>
もうこうなったらゴリラーズ
みんなのうた&生活ライフ&will
vs
ぼれろ&あんにゅい竹&スコット・シタイナー

<三つ巴戦>
サン・ゲラス vs サモハン vs レイ・ラモステリオ