若竹 七海


ぼくのミステリな日常
     


~あらすじ~
月刊社内報の編集長に抜擢されたOL若竹七海。
そこへ「小説を載せろ」とのお達しが。プロを頼む予算もなく、先輩に泣きついたところ、匿名作家を紹介される。
かくして掲載された十二の物語が思わぬ謎を呼び……。

本格ミステリ・ベスト100 40位、このミス6位

~感想~
連作短編集。
長編――として見るとあまりに内容は薄い。連作としての仕掛けも驚かされるより「ふうん」という感想。
読みづらさと読みやすさが半々に同居した文体は、まだまだ洗練されていない。
小粒で辛くないただの短編集。


00.4.12
評価:★☆ 3



心のなかの冷たい何か
   


未作成



水上音楽堂の冒険
     


未作成



閉ざされた夏
   


未作成



火天風神
   


未作成



サンタクロースのせいにしよう
   


~あらすじと収録作品~
気はいいけれど変わり者のお嬢様・銀子さんの家に居候することになった私。
しかし、引っ越し早々たてつづけにトラブルに巻き込まれる。
郊外の平凡な住宅地を舞台に、ちょっぴり奇妙な隣人たちが起こす事件の数々。

あなただけを見つめる
サンタクロースのせいにしよう
死を言うなかれ
犬の足跡
虚構通信(フィクション・コール)
空飛ぶマコト
子どものけんか


~感想~
どこが連作やねん。これが連作なら西澤保彦の『チョーモンインシリーズ』も連作だ。
退屈はしないが、目覚ましい解決もヒザを打つ仕掛けもない、物足りない小品ばかり。
主人公の成長を描いたにしても『虚構通信』の結末が以降の物語になんら影響を与えていないなんて、そんなバカな話があるものか。
見るべきところは表題作『サンタクロースのせいにしよう』のケタ違いの伏線の数。
ただ詰めでしくじった(ネタバレ→
袋の中で「なぜか」と「偶然」が重なってしまっては……)手際の悪さが惜しい。


03.4.9
評価:★☆ 3



製造迷夢
     


未作成



プレゼント
   


~あらすじ~
缶詰にされたホテルから新進気鋭のハードボイルド作家が失踪し、部屋には血の跡が残されていた。編集者はハウスキーパーの経験のあるフリーライターの葉村晶を呼び、血の跡を消させ無かったことにしようとするが…「海の底」

他、「冬物語」「ロバの穴」「殺人工作」「あんたのせいよ」「プレゼント」「再生」「トラブル・メイカー」収録の短編集。


~感想~
葉村晶シリーズ第一作。といってもこの時点ではシリーズ化の構想はなく、そもそも一話目の「海の底」にのみ登場する単発キャラの予定だったそう。
本作も一話ごとに探偵役を葉村と小林警部補が代わる代わる務める構成で、エピソードゼロや前日譚のような雰囲気である。

個々の感想を簡単に言うと、冒頭の「海の底」が白眉で、気づきそうで気づけないギリギリのラインをつく仕掛けに驚かされる。
続く「冬物語」は探偵役が小林警部補に入れ替わり、しかも犯人による倒叙形式で、完全犯罪の破綻が描かれる。
「ロバの穴」は葉村晶が語り手に戻り、近年の傑作「殺人鬼がもう一人」のように真相をそのまま書かずほのめかすだけに留めるのだが、それが説明不足かつ消化不良に繋がってしまい、はっきりしないのが残念。
それは「あんたのせいよ」にも同じことが言えるが、なにぶん24年前の作品であり、近年と比べると作者の腕前の向上がうかがえる。
そして掉尾を飾る「トラブル・メイカー」は期待通りに葉村晶と小林警部補が交錯し、連作短編集、と呼べるほどではないが、この一冊を締めくくるに相応しい内容だった。

何はともあれこれで葉村晶シリーズを追っていける。先に読んでしまった次作「依頼人は死んだ」の再読から始めて行こう。


20.8.27
評価:★★★ 6



海神の晩餐
 


未作成



船上にて
 


~収録作品~
時間
タッチアウト
優しい水
手紙嫌い
黒い水滴
てるてる坊主
かさねことのは
船上にて

日本推理作家協会賞 候補 ――優しい水、手紙嫌い

~感想~
後味の悪さを売りにした短編集。
もっと導入部の前フリを謎解きの伏線に活かして欲しい。こんなに下手だったっけなあ……。


03.12.28
評価:★ 2



スクランブル
   


~あらすじ~
1980年、高校生だったあたしたち。
一人の少女があたしたちの通う名門女学校で殺された。
それから15年後、仲間の結婚式で再会したあたしたちは、迷宮入りした事件の謎に迫るのだが……。


~感想~
ものすごく評判がいいので期待したが、個人的には大ハズレ。
青春群像としてはいいが、ミステリとしての弱さがそのぶん際立つ。
だってこの事件、迷宮入りするわけがない。いくらなんでもこの真相をお宮入りさせてしまう警察は日本には存在しない。
また、読書を青春の一ページとして描写する小説(例:北村薫)にありがちな、イヤ~な感じの安っぽい衒学味(有名文学をネタにした寒い応酬、マイナー作品をさも読んでいて当然のように披瀝する、などなど)が目につき鼻につき、青春時代を振り返るどころではなかった。
文学青年なら楽しめるのかなあ……。


08.8.8
評価:★★ 4



八月の降霊会
   


未作成



ヴィラ・マグノリアの殺人
   


未作成



遺品
   


未作成



名探偵は密航中
   


未作成



依頼人は死んだ
   


~あらすじ~
念願の詩集を出版し順風満帆だった婚約者の突然の自殺。健診を受けていないのに送られてきたガンの通知。決して手加減をしない女探偵・葉村晶に持ちこまれる様々な事件。少し切なく、少し怖い連作短編集。

00年このミス16位

~感想~
良質な粒ぞろいの短編集……が最終章で一気にダメミスに成り下がる。
なので、「なかった! 最終章なんてものはなかった!」として話を進めるが、若竹作品らしいストイックかつ、斜に構えたブラックな視点が楽しい女探偵の、一見地味な捜査が描かれるのだが、そこに思いも寄らない本格ミステリした仕掛けが施され、あの手この手で驚かせてくれる。
そのトリックの大胆さと来たらなかなかのもので、「普通の探偵ものを読んでいたら意外に本格だった」という生易しさではなく、どんでん返しの激しさ、伏線の張り方に、本格ミステリの手法が色濃過ぎて若干引いたほど。むしろ最初から本格物だと思って読んだほうがいいのかもしれない。
突然ファンタジィの世界にすっ飛んでいく最終章さえ度外視すれば、優れた本格短編集として楽しめることだろう。
逆に言えば、もし最終章も楽しめてしまえば隙はなくなることに。まずはお試しあれ。


11.2.25


~再読感想~
葉村晶シリーズ第3弾。
再読だが感想は初読時とほとんど同じで、良質な粒ぞろいの短編集が最終話で一気にバカミスに変貌する。
バカというかダメというか急にジャンルが変わってしまうのと、それを認めたらなんでもありでミステリとして成立しないある要素が受け入れがたい。
なので今回も「なかった! 最終話なんてものはなかった!」として話を進めると、ニヒルな女探偵を主役にしたハードボイルド味あふれる作風に、本格ミステリ的なトリックや真相を混ぜた…などという生やさしいものではなく、ザ・本格ミステリなトリックや真相がハードボイルドを塗りつぶすほどに色濃い。
これも初読時はあまりの本格っぷりに面食らってしまったので、そういうものだと承知して読むことをおすすめする。
バリバリの本格ミステリなトリックや、突飛にすぎる最終話さえ受け入れられれば、ハードボイルド好きにも本格好きにもアピールできる良作ばかりである。


再読20.10.26
評価:★★★ 6



古書店アゼリアの死体
   


未作成



クールキャンデー
     


未作成



悪いうさぎ
   


~あらすじ~
葉村晶は家出した女子高生ミチルを連れ戻す調査に同行し、思わぬ災難から重傷を負う。
だがそれは悪夢の前触れに過ぎなかった。
退院後間もなくミチルの友人の美和を探すことになり、有能だが不運な探偵・葉村晶の最悪の日々が始まる。


~感想~
シリーズ初長編。やってることはしごく典型的な職業探偵の人探しなのに、序盤から次々と無数の事件が起こり、登場人物はどれも特徴的で一癖あり、手掛かりを得れば意外な事実と次の手掛かりが顔を出しと一気に引き込まれ、作者の話作りの上手さをまざまざと見せつけられる。
同時に葉村晶は延々と災難に見舞われ続け、事件に巻き込まれ続ける。さしもの不屈の探偵も最悪の危機に陥り……。そこから先がちょっとやりすぎた。
前作「依頼人は死んだ」ほどのファンタジー展開ではないが、無茶さではどっこい。ネタバレを避けて例えると、急に飛鳥部勝則作品の倫理観になって、警察組織を一切恐れない犯人が大暴れしてしまう。長編を締めくくる真相としてはあまりに現実味がなく、説得力に欠けた。もう少し警察と有罪を恐れて欲しい。
真相こそ腰砕けだったが、そこに至るまでの物語はめっぽう面白く、葉村晶の不幸とそれに立ち向かう不屈の闘志は楽しめるので、ファンなら読んで損は無いだろう。


20.11.19
評価:★★★ 6



死んでも治らない
   


未作成



猫島ハウスの騒動
   


~あらすじ~
三十人ほどの人間と百匹を超える猫が暮らす通称・猫島。
民宿・猫島ハウスの娘・杉浦響子は家業の手伝いに精を出す夏休みを送っている。
そんなある日、響子の同級生・菅野虎鉄が見つけてしまったのはナイフの突き立った猫の死体、いや、はく製だった。
その三日後、マリンバイクで海の上を暴走中の男に人間が降ってきて衝突した、という不可解な通報が。
墜落した男は「猫とナイフ」事件に関わりがあるようだが……。
真夏の猫島を暴風雨と大騒動が直撃する。奇妙な事件に奇矯な人々、そして猫・猫・猫……のコージー・ミステリ。


~感想~
猫づくし。
といっても猫が謎を解く猫ミステリではなく、主役はあくまでもキャラの立ちすぎた人々。
ほのぼのとした筆致ながら、起こる事件や動機はよく考えてみるとグロかったり重かったり。そのあたり決してほのぼのだけでは終わらない、作者の腕が冴える。
最後は大団円にまとまりながらも、解決したようなしてないような、割り切れない思いもどこかに残る。物語もトリックも、作品を支えきれるだけのものではなく、キャラと設定だけで描ききったような印象。
しかしそのキャラと設定がたいへんに魅力的で、作品世界に身を委ねることが心地よい。続編があるのならば心待ちにしたい。
本格ミステリとはほど遠いものの、心に残る一作でした。


06.8.1
評価:★★★ 6



バベル島
     


未作成



プラスマイナスゼロ
   


未作成



みんなのふこう
葉崎は今夜も眠れない
   


未作成



ポリス猫DCの事件簿
     


未作成



暗い越流
       


未作成



御子柴くんの甘味と捜査
       


未作成



さよならの手口
     


~あらすじ~
40代を迎えた葉村晶は勤めていた調査会社が閉鎖し、悠々と古本屋でバイトしていた。
ところが仕入れ作業中に不運に見舞われ入院したのをきっかけに、探偵の仕事が舞い込む。
死期の迫った母のため、失踪した娘を駄目元で探すだけの、決して難しくない依頼だったはずが…。

2015年このミス4位

~感想~
葉村晶シリーズ実に13年ぶりの新作。ここからコンスタントに刊行され、そのたびにこのミスランキングを賑わしていくのだが、それも当然と納得のむちゃくちゃ面白い作品だった。

間が空いた13年とほぼ同等の時が作中でも流れ、探偵ですら無くなった葉村晶だが、有能さと不運さは全く変わらず、ただの家出人探しが雪だるま式に膨れ上がっていき、とんでもない所まで連れて行かれる。
その過程で起こる大小さまざまな事件は一個の短編として読めるものもある贅沢な作りで、とにかく無数の事件と出来事が葉村晶を襲う。怒涛の展開に巻き込まれ、傷つきながらもしぶとく岸に這い上がっては、衰え始めた身体に鞭打って調査を続けるものの、13年ぶりでも軽快にしてハードボイルド気味な独特の語り口と彼女のキャラは一切変わらないおかげで悲哀の陰は見えず、読者はその勇姿(?)を応援しつつも面白がれてしまう。
作中での探偵の休業期間はわりと短いが、葉村晶という稀有の探偵の挫折と再生の物語でもあり、素晴らしいラストシーンと相まってファンを確実に満足させる傑作である。


20.12.14
評価:★★★★☆ 9



静かな炎天
     


~収録作品とあらすじ~
多くの犠牲者を出した事故のさなか、青い服の女は犠牲者の荷物を持ち去った…青い影
次から次へと依頼が舞い込む炎天下のある日、葉村晶はある可能性に気づく…静かな炎天
35年前に失踪した気鋭の作家の足跡を追い、たどり着いた事実とは…熱海ブライトン・ロック
探偵社に勤めていた頃の同僚からの電話。彼の置かれた状況が徐々に明らかになるにつれ…副島さんは言っている
著名作家の戸籍を騙っていた身元不明死体。作家の旧友に当たりを付け正体を探るが、ことごとく行き詰まり…血の凶作
書店のクリスマスイベントのため稀覯本を受け取ってくるだけのはずが、葉村晶は次から次にお使いを頼まれる…聖夜プラス1

2016年このミス2位

~感想~
葉村晶シリーズ実に16年ぶりの短編集。
正式に探偵として復帰した葉村晶が様々な謎へ挑むが、調査会社から離れた個人経営ということもあり(少なくとも表面上は)殺人のような大掛かりな依頼はなく、いわゆる日常の謎の雰囲気がただよう。
しかしだからといって小粒なわけではなく、意外な真相や思いも寄らない展開が約束された良作揃いで、しかも短編の分量に濃縮されたクオリティは決して長編にも劣らない。

個人的には収まるべきところに全てが収まる冒頭の「青い影」が最も好みだが、最後の一撃まで実は何が起こっているのか悟らせない表題作の「静かな炎天」、順を追って明らかになっていく意外な事件と強烈なオチを兼ね備えた「副島さんは言っている」、葉村晶の不運っぷりが余すところなく発揮される「聖夜プラス1」も面白い。
残り2編もその気になれば長編化にも堪えられるプロットである。

また書き下ろしの「血の凶作」には意味深とも取れるラストから「別解があるのでは?」と議論になっているそうだが、胸糞エンドに慣れすぎて感動系SCPに「意味不明。解説求む」と言う輩と同じ曲解ではないかと自分は思う。

このミス2位はちょっと上げすぎの感も正直あるが、6編いずれ劣らぬ粒揃いの好短編集である。


20.12.24
評価:★★★★ 8



御子柴くんと遠距離バディ
       


未作成



錆びた滑車
     


~あらすじ~
一人暮らしの老母に恋人ができたらしいと、尾行調査を依頼された葉村晶。
ところが様子はおかしくついには喧嘩に巻き込まれ、いつものように怪我を負う。
その縁で出会ったある男と、ひとつ屋根の下で暮らすことになり…。

2018年このミス3位、文春6位

~感想~
葉村晶シリーズ長編。
冒頭、あの葉村晶が男と同居したことが示唆されるが、予想通りというかなんというかロマンス(※死語)めいたことが起きるはずもなく、これもいつもの不運の始まりだった。
「わたしの調査に手加減はない」はシリーズ短編の一つのタイトルだが、葉村晶という探偵を表す言葉でもある。
悪意の標的となり大切なものを失った彼女は、手加減のない調査で真実を突き止め、黒幕をじわじわと追い詰めて行く。
スラップスティック的なところも人気なシリーズだが、葉村晶の復讐譚とでも呼ぶべき、シリーズ屈指のシリアスな展開で、地道な調査が淡々と描かれるも、少しずつ明らかになっていく真相や、意外な事実とつながりの開示は相変わらず抜群で、特に真犯人の予測は困難だろう。
今回も最後まで読者を引きつける良作だった。


21.2.3
評価:★★★★ 8



殺人鬼がもう一人
     


~あらすじ~
警視庁の流刑先と揶揄される、面倒な人材ばかりが集められた辛夷ヶ署。
ろくに犯罪も無かったはずの平和な町で次々と起こり始める事件に、三白眼の大女の巡査長・砂井三琴が関わる。

2019年このミス12位

~感想~
作者はここのところ毎年のようにこのミスランキングを賑わせているが、いずれも葉村晶シリーズで、第一作を持っていないので敬遠していた。去年ノンシリーズの本作がまたもランクインし、久々に読んだのだが、若竹七海とんでもなく面白くなっていた。

冒頭の「ゴブリンシャークの目」が白眉で、最強におわせミステリとでも呼ぶべきか、はっきりしたことはほとんど明記しないのに、におわせだけで読者には事件の全容が把握できる、異色の構成。
オーソドックスな一編もあるが、いずれも一筋縄では行かず、独自性が光る。
「黒い袖」も出色で、ある一つの事実を隠すことで、最後の一撃をこの上なく効果的にしている。
さらに「葬儀の裏で」はタイトル通り葬儀に集まった親戚がだべっているだけに見えた裏から、とんでもない真相が立ち上がってくる。傑作映画「ホット・ファズ」を思い出した。
書き下ろしの表題作も全編をまとめ上げるわけではないが、それまでの各編があってこそ成立する物語で、独特の世界観を補強。絶好調の作者がシリーズに頼らなくても力量を存分に発揮できると証明した、とんでもなく面白い短編集だった。


20.4.19
評価:★★★★☆ 9



不穏な眠り
     


~収録作品とあらすじ~
余命宣告を受けた女性から、出所する養女の出迎えを依頼された葉村晶。ところが彼女は何者かに追われていて…水沫隠れの日々
幽霊が出る廃ビルの警備の帰り、連絡の取れない恋人探しを依頼される。彼は親戚で気鋭の芸術家の企みに巻き込まれたようで…新春のラビリンス
スタンガンで気絶させられた葉村晶は、鉄道ミステリフェアの目玉の時刻表が盗難されたことに気づく…逃げだした時刻表
ご近所さんから原田宏香という故人の親しかった人物を探して欲しいとの依頼。ところが彼女はトラブルメーカーで、行く先々で物騒な目に遭い続ける…不穏な眠り

2020年このミス10位

~感想~
葉村晶シリーズ短編集。
有能だが不運な葉村晶がいつものごとくトラブルに巻き込まれ続けるおなじみの展開。シリーズ再開以来、毎回このミスランキングを賑わせているが、今回も納得の傑作揃い。長編をただ短編の分量に圧縮しただけのような、濃密な物語がずらりと並んだ。

冒頭の「水沫隠れの日々」からして衝撃のラストで度肝を抜かれる。これを短編で、しかも短編集の一編目で惜しげもなくやってのけるのだからすごい。
続く「新春のラビリンス」は過去作にいた友人の芸術家の亜種みたいなのが登場し面食らったが、舞台の怪談話もきっちり活かした手堅い構成。
「逃げだした時刻表」は背景と人間関係がごちゃごちゃしすぎたきらいはあるが、自身が被害者だけに(?)キレッキレの推理を見せる葉村晶が素敵。ただあんなことになったら店潰れるぞ。
表題作「不穏な眠り」はまさに長編に堪えうる話の短編化で、短いページ数でこれでもかと言わんばかりに災難に遭い、冒頭の「水沫隠れの日々」をも上回る事態が勃発し、そのうえに「新春のラビリンス」のような怪談・因縁のオチがつき、「逃げだした時刻表」のごとく入り組んだ構図の、一冊を総ざらいする内容で、これまたとんでもない。
このシリーズの短編集に期待する全てが詰まったといって過言ではない、贅沢な一冊だった。
今さらまとめて読んだ身でこんなことを言うのは恥ずかしいが、それでもあえて言わせてもらおう。
葉村晶シリーズは全ミステリファン必読でしょう!

なお辻真先の解説は主にプロット面でネタバレ三昧しているので、くれぐれもご注意の程を。


21.2.13
評価:★★★★ 8



パラダイス・ガーデンの喪失
       


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まぐさ桶の犬
       


~あらすじ~
隣人に付き添いパーティーに参列した葉村晶は、一癖も二癖もあるその親族たちの暗闘に巻き込まれる。
親族の一人でエッセイストの乾巌に人探しを依頼されるが、それは親族の泥沼の争いに関わっていた。


~感想~
葉村晶シリーズ待望の長編。…だったがこれまでの傑作群と比べると数枚落ちるか。
まず一族のドロドロの争いを描いたせいで人間関係が極めてややこしく把握しづらい。意外な血縁が明かされても誰が誰やらで、驚く前に誰の話をしているのか理解するのに一苦労。キャラ数もおそらくシリーズで最も多い。

また有能だが不運な葉村晶が次々と厄介事をふっかけられるのはいつものことだが、今回は自分勝手なメンツ揃いなせいもあり明確に悪意があったり、思いやりが無かったりで理不尽な目に遭うのが多すぎて、ちょっと引いてしまった。
加齢とブランクゆえか推理の冴えもいまいちで捜査や論理も後手に回り続け、最後まで巻き込まれたまま終わってしまった感も強い。
ミステリファン必読のシリーズとして推しているだけに久々の長編に期待しすぎてしまっただろうか。


25.4.16
評価:★★☆ 5



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