相沢沙呼


午前零時のサンドリヨン
   


~あらすじ~
僕が一目惚れしたクラスメイト。不思議な雰囲気を持つ酉乃初は、実は凄腕のマジシャンだった。
放課後にレストラン・バー『サンドリヨン』でマジックを披露する彼女は、僕らが学校で巻き込まれた不思議な事件を、抜群のマジックテクニックを駆使して鮮やかに解決する。
第十九回鮎川哲也賞受賞作。


~感想~
26歳の新人によるデビュー作で、高校生の甘酸っぱい恋愛模様にマジックをからめた、ハートウォーミングな日常の謎ミステリ……などという悪い意味で鳥肌の立ちそうな外見にそぐわない、実に「達者な」筆致で、計算ずくの展開や伏線の的確さ、連作短編集として一本芯の通った物語と、初々しさよりも老練さを感じさせる、珍しい作家である。
なんでも授賞式では泡坂御大ばりにマジックを披露した(それも作中で実際に使われたマジックを作中とは違うオチでやって見せた)というエピソードも頼もしく、この作者はこの程度の作品ならばこれからいくらでも作り出せるだろうと早くも思わせてくれる。
だが、選考委員の一人・笠井潔が「作者は登場人物それぞれや、さらに主人公にもあれこれと「悩ませる」のだが、作者自身は妙に余裕ありげで、さほど悩んでいるようには感じられない。この程度に設定しておけば、悩んでいることになるだろう、悩んでいる人物として読者に通用するはずだという判断の常識性が気になる」と指摘するように、あまりに老獪すぎて、題材にとったマジックのフラリッシュ(技術を見せる曲芸的な手品)さながらに、技術や巧みさばかりが目に付き、たとえば同じ日常の謎系で前年の受賞作となった『七つの海を照らす星』と比べると、仕掛けられたトリックが小粒であったり、チャレンジ精神のようなものが見受けられないのもたしかで、新人賞の受賞作としては十全であっても、本格ミステリの新人賞である鮎川賞として、または単に面白いミステリとしては物足りない面があるのもたしかではある。
が、そんなことは瑣末事であり、(笠井の言をとるならば最近の森博嗣とか「この程度に設定」しすぎてるだろ)達者で確かな力を持った新人が現れたことを素直に喜ぶべきだろう。


~選評について~
↑でも触れた選評が実に奇妙なことになっていて、満場一致で「うまい」と認めているものの、もはや言いがかりとしか思えない文句をつけているものがちらほらあるので紹介したい。
たとえば北村薫は「あまりにもまとまり過ぎてい」て他の作品に比べて化ける可能性が低い、と言い、山田正紀は「この作品はあまりに達者すぎるし、完成されすぎていて、ここに探偵小説の未来を託すのは難しいかもしれない」などとひょっとして山田先生どうかしちゃったのかしらと思いたくなるいちゃもんを付けていて(相沢よりはるかにデビュー当時から「達者すぎる」実力を見せていた京極夏彦や宮部みゆきは大成しないと想像した人がいるだろうか)、笠井潔にいたってはあれが足りないこれが足りないと自分勝手に盛り上がり、挙句の果てに「この時代を生きることへの作者の態度に疑問がある」から棄権という「知っているがお前の態度が気に入らない」のAAを思いださせるていたらくである。

あのーなんなんですかこれ? 相沢沙呼がたとえば人生経験豊富な50代の教職経験者だったりしたら、たぶんもろ手を挙げてみんな賞賛してたと思うんですよね。
ここにははっきり言って才能と若さに対する嫉妬のようなものがかいま見えてしかたありません。
その点、選考委員の最後の一人・島田荘司御大は、さすが新本格派を勃興させ、いまもなお同人やマンガとコラボし、海外にも精力的に出向いて新人発掘に余念がない、先駆者たる貫禄を示す、実に冷静な、そして温かい選評を書いている。(無論それは受賞を逃した他の作品に対してもだ。まあなんとかして良いとこ見つけすぎのヨドチョースタイルな感もあいかわらずあるんだけども)
新人賞は有望な新人を発掘し、ミステリ界をより発展させるためにあるのだ。わけのわからないいちゃもんで新人つぶしをする場ではない、(城平京という前例を忘れてはならない)ということを御三方はわかっているのだろうかと疑問に思えてならない。


09.12.10
評価:★★★ 6



ロートケプシェン、こっちにおいで
   


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マツリカ・マジョルカ
   


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ココロ・ファインダ
   


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マツリカ・マハリタ
   


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卯月の雪のレター・レター
   


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雨の降る日は学校に行かない
   


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スキュラ&カリュブディス 死の口吻
     


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緑陽のクエスタ・リリカ 魂の彫塑
     


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小説の神様
     


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マツリカ・マトリョシカ
   


2017年このミス18位



小説の神様 あなたを読む物語
   


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medium 霊媒探偵城塚翡翠
   


~あらすじ~
推理作家の香月史郎は、ある事件で出会った霊媒師の城塚翡翠の能力を本物と確信する。
限定的に発揮される彼女の霊能力をもとに、香月は推理を組み立て、事件を解決していく。
だが殺人鬼の魔の手は、次第に翡翠に迫っていた。

2019年このミス1位、文春5位、本ミス1位、本格ミステリ大賞、吉川英治文学新人賞候補

~感想~
帯に巻かれた「すべてが、伏線」という煽り、有栖川有栖の推薦、偏執的に列挙された書店員サマの絶賛の嵐…と外観からして地雷臭が漂う。
内容に入っても、女霊媒師、推理作家の香月、ワトスン役が探偵を裏から操る構図、霊媒で初っ端に犯人を名指しと、もう嫌な予感しかしない。というか麻耶雄嵩だこれ!
しかも第1話のトリックが令和元年の作品とは思えないほど酷いもので、その時点でもうネタになればいいやくらいの感覚で読み進めることとした。
2話目以降は霊視で得た手掛かりを、警察を納得させるだけの推理に落とし込む、いわゆる特殊設定ミステリとしてそこそこ楽しめはしたのだが、評価は最終話で一変した。

これか。これがやりたかったのか。これをやりたいがためにここまでやっていたのか!
やっぱりだいたい麻耶雄嵩だし、言うほど「すべてが、伏線」ではなかったが、ここまでやられては脱帽である。
「こういうの好きだろ?」と聞かれたら「はい!!!!!!!!!!!」と野球部の一年くらい良い返事をしてしまう他ないではないか。
でも語りたいことも、新しい手法も思いっきりネタバレなので何一つ言及できないので、少しでも興味があるなら読んでいただきたい。というか読め。読んでくれ。本年度のトップ級というだけではなく、ミステリ史に残りかねない傑作なのだから。


ここからは余談だが、おそらく本ミスで良いところまで行くものの、それに宣伝が1ミクロンも寄与していないことは念押ししておきたい。自分は地雷臭に惹かれてむしろ読んでしまった向きだが、あの書店員コメントを見ただけで拒絶反応を起こし読む気を失ったという意見を数件見かけた。
それに本作のトリックの威力を最大限に発揮させる方法は、何も言わずあらすじだけ公開することなのは火を見るより明らかだ。書店員サマのネタバレRUSHは始末に負えない。ランクインし、売れたからと言って宣伝が良かったなどという勘違いを出版社にはしないでいただきたい。

そしてもう一つ、作者のデビュー作を講評で「あまりにもまとまり過ぎていて化ける可能性が低い」とか「あまりに達者すぎるし、完成されすぎていて、ここに探偵小説の未来を託すのは難しいかもしれない」とか「この時代を生きることへの作者の態度に疑問がある」などとのたもうた北村薫と山田正紀と笠井潔(お前を嫁にもらう前に言っておきたいことがある。俺はイニシャルトークはしない)ら各氏よ。
本作は「大化けした」「探偵小説の未来を託すに足る」「この時代を生きる」傑作ではありやしませんかね?
新人賞とは新人潰しをする場ではないと、改めて申し上げておきたい次第である。


19.11.5
評価:★★★★★ 10



教室に並んだ背表紙
   


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invert 城塚翡翠倒叙集
   


~あらすじ~
中学の時に怪我をさせた負い目から、長年にわたり級友にこき使われてきたプログラマーの男は、ついに殺害を決意。鉄壁のアリバイと自殺の偽装で、完全犯罪を成し遂げたはずだった…雲上の晴れ間
児童を守るため盗撮魔の男を殺した小学校教師。転落死に偽装したが、現場にたまたま来た城塚翡翠は即座に殺人事件と断定する…泡沫の審判
元刑事で探偵の男は、私欲のために部下を殺害。川を挟んだ家から見られていたが、目撃者は酔っぱらい、自分でも見たものを信じられず…信用ならない目撃者

霊媒探偵・城塚翡翠が3つの完全犯罪に挑む倒叙短編集。

2021年このミス6位、本ミス9位

~感想~
書きたいことの99%が前作「medium」のネタバレになるので、スマホ環境では文字色反転が機能しない弊ブログでは何も語れない。
今回はサイトでの記事に誘導させてもらう。

なお絶対に「medium」を読んでから見ていただきたいし、本作「invert」も絶っっっっっ対に「medium」を読んでから読むよう注意喚起する次第である。(※「invert」の目次にも「medium」の結末に触れていると注意書きがされている)

「medium」・「invert」完全ネタバレ感想は → こちら


21.7.16
評価:★★★★☆ 9



invertⅡ 覗き窓の死角
     


~あらすじ~
※シリーズ第一作「medium 霊媒探偵城塚翡翠」のネタバレがあるため必ず第一作からお読みください。

嵐の夜、車が故障した城塚翡翠は近くの家に助けを求める。そこには挙動不審の少年がおり、二階には刺殺死体が転がっていた…生者の言伝
同性に嫌われがちな翡翠に珍しくできた友人。だが彼女は復讐のため人を殺し、翡翠をアリバイトリックに利用する…覗き窓の死角


~感想~
ネタバレに配慮しつつ感想を。
短編集でも期待に違わぬ驚きを味わわせてくれた「invert」に待望の続編。実写ドラマ化も決まった勢いそのままに今回も一筋縄ではいかない秀作揃いだった。
どちらも倒叙ミステリながら趣向は異なり、「生者の言伝」は犯人丸出しの少年が苦心惨憺で翡翠の追求をかわしつつもあっさり篭絡されるスラップスティックで、古畑で何度となく見た光景の翡翠バージョンが繰り広げられる。
真綿で首を絞められるように着々と追い詰められていく少年がだんだんかわいそうになっていくし、こんなにページ数を掛けていたいけな(?)少年を苦しめなくても…と思うが、もちろんただでは終わらない、とだけ言っておこう。ただロジックは細かすぎ、ややこしすぎた感はある。

続く「覗き窓の死角」の犯人は少年とはうってかわって強敵で、細かい瑕疵はあるものの容易に隙は見せず、何より鉄壁のアリバイに守られている。こちらも古畑でよく見た光景の翡翠バージョンで丁々発止のやりとりが繰り返され、そして…。
正直なところトリックはこれだけ鉄壁だと逆説的にこの手しか考えられず、よくあるものの亜種になってしまい、決着手も映像作品なら映えるのだが…と思えてしまった。
しかし犯人との直接対決や、翡翠の過去や裏をめぐる物語としての見どころが山程あり、不平を唱えるのは贅沢というものだろう。

それにしても毎回あの手この手で凝った趣向を考えており、たまにはキャラと会話重視で肩の力を抜いた、1アイデアで気軽に短編集を出してきてもいいんですよ、という気持ちもある。
なにはともあれ今回も御苦労様でした。


22.10.8
評価:★★★☆ 7



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