青崎 有吾


体育館の殺人
   


~あらすじ~
風ヶ丘高校の体育館で殺人事件が発生。現場は密室状況で、ただ一人犯行が可能と目された卓球部部長を救うため袴田柚乃は、校内で暮らしているという変人にして天才の二次元オタク裏染天馬に救いを求める。

2012年鮎川哲也賞、本ミス5位

~感想~
デビュー作ながら本ミス5位にランクインしただけはある、簡潔にして明快な論理が冴える佳作。
重度のオタクの裏染天馬が端々で発する元ネタの把握すらできないほど広汎に渡るオタク発言を除けば、描写も推理も難解なところが少しもなく、1つの手掛かりをしゃぶり尽くすように検討し様々な事実を導き出す、論理の楽しさをじっくり味わえる。
それに加えて読者への挑戦状まで添え、ヒントまで与えるフェアプレイぶりで、しかも文庫版では指摘された瑕疵を丹念に改善してきたサービス精神も見せ、作者の後の活躍を早くも予感させる。

細かいあらを探せば、密室の脱出方法がヒントを出しすぎ(描写しすぎ)でこれしかないところに落ち着いたり、序盤で袴田刑事が妹にやたら戦々恐々しているのが何かの伏線かと思うほど不自然だったが(妹を守るために両親を殺したがそれを告げず絶縁されている兄の反応だったぞあれ)重箱の隅をつつくような粗探しに過ぎない。
論理好き、本格ミステリ好きなら迷わず読むべき面白い一冊だった。


22.9.2
評価:★★★☆ 7



水族館の殺人
   


~あらすじ~
水族館の営業中に起こった凄惨な殺人事件。館内には至る所にカメラがあり、容疑者は水族館関係者の11人に絞られるが、その11人全員にアリバイがあった。
捜査に行き詰まった警察は再びあの駄目人間にして天才・裏染天馬に助っ人を頼む。

2013年本ミス2位、本格ミステリ大賞候補

~感想~
デビュー作にして本ミス5位にランクインした前作「体育館の殺人」をも上回る本ミス2位に輝いた第二作目。
このシリーズは驚くべきことに現在までに刊行された全4作がベストテン入りしている。
順位だけではなく内容も確実に前作からパワーアップしており、起こる事件はまたも1件、しかも固有名詞ではない一般名詞のごくありふれた水族館を舞台にしているのだからますますとんでもない。
捜査に駆り出された裏染天馬は瞬く間に11人のアリバイを破るが、しかしそこから悪戦苦闘し、いわゆるスクラップ&ビルドを繰り返し少しずつ真相に迫る。
その過程で推理のヒントめいたことをいちいち口に出してくれるのも相変わらずで、読者は天馬の推理が今どのへんにまで達しているか理解できるほど。これが文庫版で追加された「読者への挑戦状」におけるヒントにもなっており、挑戦に応じる好事家には天馬の推理を追う格好の手掛かりとなるだろう。
肝心の推理パートは今回もじっくりページと時間を取り丹念に進められ、前作のアレのようにある一つの手掛かりをしゃぶり尽くす勢いで論理を展開する。
さらにエピローグではこれまた前作のようにただでは終わらず、もう一つの真相を暴くとともにとどめの一撃に心憎い言葉まで放ってくれる。
前作で膨らんだ期待に最高の形で答えるとともに、「平成のエラリイ・クイーン」という大上段すぎる異名もあながち嘘ではないとすら感じさせる、素晴らしい第二作である。


22.9.13
評価:★★★★ 8



風ヶ丘五十円玉祭りの謎
   


2014年本ミス8位



アンデッドガール・マーダーファルス 1
     


~あらすじ~
異形の者が駆逐されていく中、人類との共存を唱えた吸血鬼。
しかし彼の妻が何者かによって無惨に殺された。
偏見にさらされ警察もろくに捜査をせず、やむなく依頼した日本人探偵は「鳥籠使い」と呼ばれる奇妙な者達だった。


~感想~
吸血鬼や人魚や鬼が普通に存在する、19世紀後半のヨーロッパが舞台の異形の本格。
キャラ立ちし過ぎている探偵サイド三人組の魅力もさることながら、1話目の「吸血鬼」は基本中の基本的なトリックを吸血鬼殺しという特殊設定に上手く落とし込み、ロジックも明快で基本技なのにギリギリ気づけない、しかしあと一歩推理を進めていれば気づけたはず、という絶妙な線を突くことに成功している。

本領発揮は2話目の「人造人間」から。こちらもトリックは基本技の応用で、密室条件を限定しすぎた結果、答えは見え見えになってしまったが、足跡一つから状況を読み、簡潔な論理展開で真相を突き止める推理手法が楽しい。
だがそんなことより何より、1話目から匂わせていたある舞台設定が明らかとなり、ある人物が登場するや読者はこの物語の真の魅力に気づくだろう。
ネタバレになるのでいちおうぼかしながら、しかしこの作品の最大の魅力なのでやむなく多少ネタバレしつつ書かせてもらうが、この世界に普通に存在するのは何も怪物だけではないのだ。
エピローグで敵サイドの正体が明かされ、このシリーズが「本格ミステリ・スマッシュブラザーズ」あるいは「19世紀ミステリ&オカルトドリームトーナメント編」もしくは「古典ミステリ・アベンジャーズ」だと知り、もう興奮を抑え切れない。
ということは夏刊行の次作で登場が予告されている名探偵と怪盗は絶対あいつらじゃないか! 誰かがやりそうで誰もやらなかったことをついに始めてしまった。ずるいぞ青崎有吾!

出版前からアニメ化が決定しているのもうなずける、今最も次作が待ち遠しい、もしかしたらミステリの歴史に名を刻むかもしれないシリーズの開幕である。


16.4.3
評価:★★★★ 8



図書館の殺人
   


2016年このミス20位、本ミス2位



ノッキンオン・ロックドドア
   


未作成



アンデッドガール・マーダーファルス 2
     


~あらすじ~
80日間世界一周を成し遂げた資産家フィリアス・フォッグの秘宝「最後から二番目の夜」に、怪盗アルセーヌ・ルパンから盗みの予告状が届く。
対策として呼び集められたのは世界一の名探偵シャーロック・ホームズと保険機構ロイズのエージェント、そして鳥籠使い。
オペラ座の怪人を従えるルパンの魔手から無事に秘宝を守れるのか?


~感想~
無事に漫画化され2作目を迎えたことで情報解禁するが、本シリーズはあらすじを見てもらえばわかる通り、19世紀の有名小説や怪異、実際の事件等からオールスターを集めて事件を起こし、そこにオリキャラの鳥籠使いの面々が挑むという大胆な趣向である。
本作ではかのルパンとホームズが火花を散らすが、前半の「怪盗と探偵」ではルパン物にホームズ物あるいはルパン VS ホームズ物のパスティーシュとして全く遜色ないどころか、ホームズ二次創作の傑作として数え上げられるほどの騙し合いが繰り広げられ、主人公の鳥籠使い3人組と新キャラのロイズのエージェントらもそれぞれ際立った個性で、ルパンとホームズの対決に割って入り、200ページ足らずとは思えないほどに濃厚な中編である。

後半の「夜宴」はミステリ要素はいったん棚上げし、激しい異能力バトルが展開されるがそれはそれで面白く、戦いの行方はもちろんのこと、次作以降でははたしてどの作品の誰が登場するのか、本作ラストで現れた中国人はあいつでいいのかなどなど、興味は引きも切らない。
これだけの労作ゆえか夏に刊行予定が秋口までずれ込んでしまい、今後もさらに遅くはなりそうだが、今最も次が待ち遠しくてならないシリーズである。


16.11.3
評価:★★★★ 8



早朝始発の殺風景
   


~あらすじ~
早朝始発の電車に乗った僕は、同級生の女子に出会う。なぜ僕は、そして彼女は早朝始発に乗っているのか? 顔見知り程度の二人は互いの目的を探り合う。他4編。

2019年このミス13位


~感想~
冒頭の表題作が「殺風景ってそれ!?」と先制パンチを見舞ってくるが、それだけに留まらない年間ベスト級の切れ味。その後は仕掛けられたと同時にわかる伏線・出題前にわかる真相などライトな味わいながら、確実に何かを残してくれる。
ミステリ的な強度では米澤穂信の小市民シリーズには全く及ばないし、腹黒くない登場人物ばかりだが、ああいった雰囲気の作品が好きな人ならば確実に刺さるだろう。
なんといっても最高なのがエピローグで、これだけで評価が2点は上がった。ぜひシリーズ化してもらいたいが、そういえば「アンデッド・ガール・マーダーファルス」も置き去りなのでそっちを早くして欲しい。っていうかもう3年経つんですけど!? 一八先生みたいにどこかから怒られた?


19.12.27
評価:★★★★☆ 9



ノッキンオン・ロックドドア 2
   


未作成



アンデッドガール・マーダーファルス 3
     


~あらすじ~
鳥籠使い、夜宴、ロイズの三者はドイツの人狼村へ向かう。
ほど近い人里では、決まって雨の晩に少女がさらわれ、人狼に殺されていた。
鳥籠使いの到着前にも、村人から崇められる少女が誘拐されていたが、状況が食い違うことに輪堂鴉夜は気づく。

2021年このミス17位

~感想~
実に4年半ぶりの新作。他作品からのオールスター物だけに「一八先生」みたいにどこかから怒られたのかと危惧していたが、続いてくれてよかった。
前作では後半丸々を三つ巴バトルに費やし、本作でももちろん激しいバトルが繰り広げられるが、主題はいわゆる特殊設定ミステリで、豊富な伏線と明快な推理、そして人狼が存在する世界ならではのトリックが描かれる。
これが非常に良くできていて、今年の本格ミステリの収穫どころか、歴代の特殊設定ミステリの中でも上位にランクインされるだろう、大胆かつ緻密なものである。
物語はさらなる広がりを見せ、某超有名怪物がナレ死したり、こいつがいるならパワーバランスが崩壊するだろと思う某有名キャラがそれに関わったりと、もったいぶらずに話はエスカレートし続ける。
待たせただけはある、期待に応えるシリーズ最新作だったが、次は4年半もかからずに出して欲しいと切に思う。


21.5.5
評価:★★★★ 8



11文字の檻 青崎有吾短編集成
     


2023年このミス12位



アンデッドガール・マーダーファルス 4
     


~感想~
これまで概要だけ語られた鴉夜、津軽、静句の前日譚が描かれる短編集。
そのためミステリとしても読めるのは三人が揃ってからの2編のみで、ファンサービスの色合いの強い一冊だが、ようやくアニメ放送も開始したタイミングにうってつけで、ファンなら読まない手はない。
言うべきことが本当にそれしかない。


23.8.11
評価:★★★ 6



地雷グリコ
     


~あらすじ~
地雷グリコ…じゃんけんの勝敗に応じて階段を上る。ただし地雷あり
坊主衰弱…神経衰弱の形式で行う坊主めくり。ただしイカサマあり
自由律ジャンケン…じゃんけん。ただしぼくのかんがえた新手あり
だるまさんがかぞえた…だるまさんがころんだ。ただし自己申告あり
フォールーム・ポーカー…ポーカー。ただしなんでもあり

2023年日本推理作家協会賞、本格ミステリ大賞、24年山本周五郎賞、このミス1位、文春1位、本ミス1位、直木賞候補

~感想~
暴の無い「嘘喰い」だこれ!!
迫稔雄「嘘喰い」は誰でも知っているような単純なゲームに特殊ルールを加え、なおかつマンガでできる叙述トリックのほぼ全てをぶち込んだ恐るべきギャンブルマンガだが、そのミステリ小説版とでも呼ぶべきものだった。
まず非常にルールも戦術も罠もわかりやすいのが特色で、このあたり変に複雑にしすぎてわけがわからず、盛り上がってるのは作中人物だけな頭脳バトル物も多いが、そこは心配ご無用。
ただ1~2話目は作者が何をやりたいかが丸わかりで決着は完全に予想通りだった。それに2話目のイカサマがもういくらなんでもそれは相手が節穴すぎだろという力業で、期待値がここで下がった。
しかし3話目の「自由律ジャンケン」が最高で、マンガすぎる対戦相手に「嘘喰い」すぎる絶妙な罠が決まる。個人的にはベスト。
4話目からは河本ほむら「賭ケグルイ」すぎるそんなわけない対戦校が現れ、ここもルールだけ聞いたら「嘘喰い」のハンカチ落としすぎたが、それを逆手に取ってみせた。
ラスト5話目はルールが複雑かつ「嘘喰い」でも傑作と名高いポーカーを題材にした分どうしても引けは取ってしまったが、バーリトゥード(なんでもあり)すぎる決着は面白かった。エピローグも完全に「嘘喰い」だったな…。

総じて色々と「過ぎた」演出が賛否あるだろうが、年末ランキングを待たず早々に三冠達成(日本推理作家協会賞・本格ミステリ大賞・山本周五郎賞)しただけはある、とにかく楽しい一冊だった。
1位はどこも米澤穂信「冬季限定ボンボンショコラ事件」で今年は当確だと思っていたがこれでわからなくなった…。

全くの余談だが結構終盤まで、実は鉱田ちゃんが暴担当でどこかで無双乱舞を繰り広げ、そのためのダンス歴だと思っていたことを付記しておく。


24.8.24
評価:★★★★ 8



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