有栖川 有栖


月光ゲーム
 


~あらすじ~
夏合宿のため山深いキャンプ場へやってきた推理小説研究会の面々。
楽しいキャンプは山の噴火で一変。いあわせた3グループの学生たちは、
陸の孤島と化したキャンプ場に閉じ込められてしまう。その極限状況の中、出没する殺人鬼。
ひとり、またひとりとキャンプ仲間が殺されていく。
いったい犯人は誰なのか。そして現場に遺された「y」の意味するものとは?

1989年このミス17位

~感想~
模範的なフーダニット。処女作でありながら、その純粋論理は見事な冴え。
挑戦状も付すフェアプレイぶりには賞賛を送りたい。
以下難点。
文章がてんでなってない。外国文学やらの引用が多く、およそ一般的ではない漢字や単語が頻発し、鼻につく。
人物造型に全く血が通っていず、セリフがどれもこれも宙に浮きまくり。
ヒロインがなぜ語り手にひかれたのかさっぱり解らない。
要(?)のダイイング・メッセージは、この世に解ける人間がいないと思わせるほどに理不尽。
ゲームブック感覚で読むことをオススメしたい。


99.5.21
評価:★★★☆ 7



孤島パズル
 


~あらすじ~
新入会のマリアが提供した“あまりに推理研的な”夏休み。
宝探しパズルに挑むべく赴いた南海の孤島。
第一夜は平穏裏に更けるが、折しも嵐の第二夜、突如として惨劇が幕を開く。 

1989年このミス16位、東西ベスト(2012)95位、本格ベスト70位

~感想~
純粋論理のフーダニット。しかし解きようがない謎は手ごたえを通り越して理不尽の一言。
動機も当たり前すぎて、探偵たちの鈍さには頭をひねる。
しかしゲームブック感覚で読めば前作と遜色なく楽しめることはうけあい。

感想からははずれるが、未読の方のためにひとつ注意を喚起したい。創元推理文庫版の解説のことである。もし光原百合氏のものだったら要注意。
この解説が、僕が今までに見たなかでも最悪の部類なのだ。
まず「ネタバレの恐れがあるのでP392~3は飛ばして読んでください」と言っておきながら、P390で犯人の性別を特定する一文を書いてやがる。
さらに、『月光ゲーム』と『双頭の悪魔』の手がかり(それも探偵が真相をあばくまで明かされない手がかり)を堂々と書きつらね、読者が推理する楽しみを奪っているのだ。
ミステリ作家でもあるはずの氏の良識を疑わざるを得ない。


99.5.26
評価:★★★☆ 7



マジックミラー
 


~あらすじ~
双子の兄弟が犯人なのか?
しかし兄の妻が湖畔で殺されたとき、兄弟のアリバイは完璧だった。
やがて第2の殺人が起こる。兄弟のどちらかが被害者らしいが、死体からは頭と手首が失われていた。犯人の狙いはどこに? 


~感想~
丁寧に作り込まれているのは確かだが……すみません。時刻表トリックどわい嫌いなんです。
元々読みづらい文章が、固く書かれてさらに読みづらい。合わなかった。


評価:★★ 4



双頭の悪魔
   


~あらすじ~
他人を寄せつけず、奥深い山で芸術家たちが創作に没頭する村。
そこに迷い込んだまま戻らないマリアを追い、英都大学推理研の一行は大雨のなか村への潜入を図る。
江神二郎は接触に成功するが、ほどなく橋が濁流に呑まれて交通が途絶。
村の中の江神とマリア。外に残されたアリスたち、内と外、双方が殺人事件に巻き込まれ、各々の真相究明が始まる。 

1992年このミス6位、文春4位、東西ベスト(2012)22位、本格ベスト12位

~感想~
純粋論理の結晶体。たった一つの手がかりから導き出される完璧にして清冽な真相。
しかもそれを徹底したフェアプレイで描く手腕には素直に舌を巻く。
論理ミステリにおける一つの究極の形、到達点であろう。
例によって下手な文章やら、こうるさい衒学味には辟易するが、論理の面白さを求める向きには格好の逸品。
ミステリ史に残る傑作として、長く語られるだろう。


99.6.3
評価:★★★★★ 10



46番目の密室
 


~あらすじ~
45の密室トリックを発表した推理小説の大家が殺された。
密室と化した地下の書庫で、暖炉に上半身を突っ込むという悲惨な姿であった。
彼は自らの46番目の密室トリックで殺されたのか?
推理作家・有栖川有栖と臨床犯罪学者・火村英生が謎に挑む。 


~感想~
いかにも氏らしい、丁寧に編まれた良作。長く頭に残るトリックが印象的。
この頃のアリスはいいもの書いてたなあ~とつくづく思う。


99.5.13
評価:★★★☆ 7



ダリの繭
 


~あらすじ~
幻想を愛し、奇行で知られたシュールレアリズムの巨人サルバドール・ダリ。
宝飾デザインも手掛けた彼に心酔してやまない宝石チェーン社長が、別邸で殺された。
現代の繭とも言うべきフロートカプセルの中で発見されたその死体には、
トレードマークであったダリ髭がない。そして他にも多くの不可解な点が……。
事件解決に立ち上がった有栖川有栖と火村英生がたどり着いた意外な真実とは? 


~感想~
これも氏らしい、丁寧で隙のない、綺麗な論理が鮮やか。
な、一方で、ケレン味に欠け中盤からかなりだれる。あまりにも長大すぎた。
ところどころ挿入されるダリの意匠も、うるさいだけで興味を引かない。


99.1.25
評価:★★☆ 5



ロシア紅茶の謎
   


~あらすじ~
動物園の暗号
屋根裏の散歩者
赤い稲妻
ルーンの導き
ロシア紅茶の謎
八角形の罠


~感想~
有栖川氏の短編は、長編を凝縮したというよりも、短いなりにそれなりの、「この短さならこんなもんだろ」と思わせる短編が多い。小粒でキレの鈍い、論理性も意外性もさしてないトリックばかりだが、そのぶん肩ひじ張らずに気楽に読めるのもたしか。まずまずの短編集。


評価:★★★ 6



海のある奈良に死す
 


~あらすじ~
半年がかりで書き上げた長編が、やっと見本になった!
推理作家・有栖川有栖は、出版社で喜びに浸っていると、
同業者の赤星学が大きなバックを肩に現れた。
赤星は「海のある奈良へ行ってくる」と言い残し去るが、翌日、福井で死体で発見された。
被害者と最後に話した関係者として、有栖は火村英生とともに調査を開始する。


~感想~
紀行文? まったくの個人的な意見だが、どうもこのあたりからアリスは雲行きが怪しくなった。
細かい構成はさすがだが、ウンチクに頼り切ったトリックなど、本格魂をどこかに置き忘れてきたよう。


99.5.31
評価:★☆ 3



スウェーデン館の謎
   


~あらすじ~
ミステリ作家・有栖川有栖が取材で訪れた雪深い裏磐梯には、
地元の人々から“スウェーデン館”と異名をとるログハウスがあった。
彼は珍客として歓待されるが、やがて足跡のない殺人事件に遭遇し……。


~感想~
トリック一本勝負。本当に混ざりけのない、ただのトリック小説だったらなおよかった。
とはいえ、フェアプレイ精神にのっとったキレのある謎は爽快。


評価:★★★☆ 7



幻想運河


~あらすじ~
アムステルダムにいついたシナリオライターの卵・恭司は、
バラバラ殺人事件の渦中に巻きこまれてゆく。
アムステルダムと大阪、二つの水の都をめぐる事件は意外な展開を見せる。


~感想~
意味不明。曖昧模糊として目覚ましさに欠ける。薬を礼賛するような描写は不愉快。
薬に頼って出てきた発想に、どれほどの価値があるというのだろうか?
描写といい会話といい、小粋に気どったつもりだろうが見苦しい。


01.12.27
評価:☆ 1



山伏地蔵坊の放浪
   


~収録作品~
ローカル線とシンデレラ
仮装パーティーの館
崖の教祖
毒の晩餐会
死ぬ時はひとり
割れたガラス窓
天馬博士の昇天


~感想~
『ローカル線とシンデレラ』
某急行を気どったようなトリック。「人間が描けていない」云々のミステリ批判の原因は、ぜったい氏に半分くらいの責任があると思う。

『仮装パーティーの館』
無理にスラップスティックにしなくても……。ミステリ好きの小学生が思いついたようなトリック。

『崖の教祖』
ミステリ好きの小(以下略)。ホラ話って設定に逃げてません?

『毒の晩餐会』
人数が多すぎる。トリックは悪くないのに、人数が多すぎてなにがなにやら。

『死ぬ時はひとり』
(ネタバレ→)
さんざっぱら他殺、他殺言っておいてそりゃないだろ。
話に入る前に一度も殺人とは言ってないって? でもさあ……。


『割れたガラス窓』
パズラーとしての完成度を高めていれば……との思いは上2編と共通。
中編なみの分量にして、法月くらい練っていれば。

『天馬博士の昇天』
……すごい。あまりにも壮絶な真相に、怒りを通り越して、唖然呆然愕然慄然。
コメディ・パロディとはいえ酷すぎないか? この分量で、掉尾を飾る一編で……これ?


~総括~
末尾の一編があまりにも納得いかない。故に印象はとことん悪く、時間をものすごく損した感。


03.7.3
評価:★ 2



ブラジル蝶の謎
   


~収録作品~
ブラジル蝶の謎
妄想日記
彼女か彼か

人喰いの滝
蝶々がはばたく


~感想~
読了後に釈然としなかったり、印象に残らなかったり。サラッと流し読みできるのはいいが。


評価:★★☆ 5



英国庭園の謎
   


~収録作品~
雨天決行
竜胆紅一の疑惑
三つの日付
完璧な遺書
ジャバウォッキー
英国庭園の謎


~感想~
悪い意味で「裏切られた」「騙された」と思う作品が多い。
不快な裏切られかた、納得のいかない騙されかた。正直、イマイチ。


評価:★★☆ 5



朱色の研究
   


~あらすじ~
「2年前の未解決殺人事件を、再調査してほしい。これが先生のゼミに入った本当の目的です」
火村英生は教え子から突然の依頼を受ける。
有栖川有栖とともに当時の関係者から事情を聴取しようとするが、
その矢先、新たな殺人を示唆するような電話が入った。
現場に急行した2人が見たのは、予告通りに……。

1997年本ミス9位

~感想~
退屈。読了後になんらの印象も残さない。
ケレン味のまったくない、淡々とした展開と、あまりにも納得のいかない動機。
冗長にすぎる紀行文さながらの乾いた仕立てなど、どこまでも無味乾燥。


99.4.5
評価:★ 2



ジュリエットの悲鳴


~収録作品~
落とし穴
裏切る眼
遠い出張
危険な席
パテオ
多々良探偵の失策
登竜門が多すぎる
世紀のアリバイ
タイタンの殺人
幸運の女神
夜汽車は走る
ジュリエットの悲鳴


~感想~
『落とし穴』
計画がずさんかつテキトーすぎるところに目をつぶれば、なかなかにうまい作り。タイトルはぜんぜんうまくないけど。

『裏切る眼』
展開に予想がつく。もっととことん皮肉にすればいいのでは?

『遠い出張』
オチが利いている。

『多々良探偵の失策』
これまた巧い。ショートショートに意外な才能?

『危険な席』
展開がそのまんますぎ。ひねってよ。あと、許すなよ。

『パテオ』
幻想的落語。オチがちょっと解りづらい。

『登竜門が多すぎる』
逆にオチなんてなくてよかった一編。関西人らしいシャレのよさはいいのだが、もっとふざけまくってくれて良かったのに。

『世紀のアリバイ』
本書中の白眉。

『幸運の女神』
そのまんますぎる。

『タイタンの殺人』
真相があっけない。もっと風刺を利かせても。

『夜汽車は走る』
結局のところ、なんなのか? なにを言わんとしていたのか? 釈然としない。

『ジュリエットの悲鳴』
読後感はとにかく退屈。完全にタイトル負けしている。


~総括~
ショートショートは鋭いのに……。僕の嫌いな「文学寄りに傾いたアリス」ばっかりなので、楽しめなかった。


00.12.10
評価:☆ 1



ペルシャ猫の謎
   


~収録作品~
切り裂きジャックを待ちながら
わらう月
暗号を撒く男
赤い帽子
悲劇的
ペルシャ猫の謎
猫と雨と助教授と


~感想~
『切り裂きジャックを待ちながら』
2時間ドラマ。ありがちなプロット。つまらないトリック。陳腐なラスト。安っぽい。

『わらう月』
鮎川哲也『下り“はつかり”』を5レベルくらい下げると、この作品になる。

『暗号を撒く男』
なんだこれ? これがトリック……なの?

『赤い帽子』
作りは丁寧。伏線も周到。だが、地味な展開と解りやすすぎる犯人がどうも……。

『悲劇的』
この短さが効果的。うまい。

『ペルシャ猫の謎』
「こんな物語を見せられた読者はどう思うのでしょうか?」
とうとう開き直ったか……。

『猫と雨と助教授と』
まさにアンコール。


~総括~
「こんな物語を見せられた読者はどう思うのでしょうか?」
少なくとも、あなたが一人のファンを失ったことだけは、たしかです。


99.5.18
評価:☆ 1



幽霊刑事


~あらすじ~
警察官射殺事件。
フィアンセを残して俺は死んだ……はずが、幽霊としてこの世に留まることに!
しかも、犯人の上司は密室状況で何者かに殺されてしまい……。

2000年本ミス8位

~感想~
トリックの切れよりも設定の奇異さに重点が置かれてしまったか。
陳腐と失笑のはざまを揺れるつたない文章。いかにも舞台劇といった構成。
筆力の限界でしらけるばかりの哀嘆と、難点は数々あるが……ひさびさに楽しめた。
ひっさびさに面白いアリスを見た感。


02.12.5
評価:★★★ 6



暗い宿
   


~あらすじ~
犯人当てゲーム“トロピカル・ミステリー・ナイト”に参加するため、リゾートホテルを訪れた火村英生と有栖川有栖。バカンス気分でのんびり過ごしていた2人だったが、訳ありげな夫婦に出会い……(ホテル・ラフレシア)。
廃業した民宿、冬の温泉旅館、都心の名門ホテル―。様々な“宿”で起こる難事件の数々。

~収録作品~
暗い宿
ホテル・ラフレシア
異形の客
201号室の災厄


~感想~
読者が謎を解く手がかりは意図的に伏せられ、ただ読むしかないのが悲しい。
謎自体も読者に推理をさせるほどの魅力に乏しく、うがった見方をすればパズラーとして提供できないため紀行ミステリの体裁をとったように思える。
アリスの論理性に引かれる身としては、どうしても物足りなさを感じてしまう。


05.12.28
評価:★★ 4



有栖川有栖の本格ミステリ・ライブラリー
     


~収録作品~
埋もれた悪意  ――巽昌章
逃げる車  ――白峰良介
金色犬  ――つのだじろう
五十一番目の密室  ――ロバート・アーサー
〈引き立て役倶楽部〉の不快な事件  ――W・ハイデンフェルト
アローモント監獄の謎  ――ビル・プロンジーニ
生死線上  ――余心
水の柱  ――上田
「わたくし」は犯人……  ――海渡英祐
見えざる手によって  ――ジョン・スラデック


~感想~
『埋もれた悪意』
え? これで解けるの? と面食らった。意外性抜群のトリックは、伏線の山に支えられて冴えわたる。逸品。

『逃げる車』
え。これで……解けというの? と面食らった。シンプルすぎてあっけないが、装飾をとっぱらえば、どのミステリもこうなるのだろう。面白い。でも、「異様に論理的」というか「異様な論理的」でしたよね。

『金色犬』
なつかすぃ~。僕のミステリ初体験は、『迷路館の殺人』ではなくこれだったのかあ~。
あんまりなつかしすぎて、評価不能。いま見るともりだくさんの作品。

『五十一番目の密室』
「おお、これがそうなんだ」とマニアならしっぽを振る一編。ただ唸るばかり。

『〈引き立て役倶楽部〉の不快な事件』
「おお! これか! これがそうなのか!」とマニアならよだれを垂らす一編。
こんなによくできた話だとは思わなかった。『五十一番目』ともども、クイーンのルーブリックがすばらしい。
にしても……犯人のあの一言(ネタバレ→)
「その前日の午後には(中略)きれいに見逃してしまうにちがいない」あはは。僕も見逃してた。 大好き。

『アローモント監獄の謎』
元祖バカミス? 史上まれに見る不可能トリックが……実際の情景を思い浮かべるだに爆笑の真相へとさま変わり。「本格って楽しい」

『生死線上』
すみません。読むの放棄しちゃいました。

『水の柱』
先にトリックを解説で見てもうた。しかし、トリックらしいトリックはあったろうか? 謎の設定がこうもあやあやでは。文章はえらく読みやすかったが。

『「わたくし」は犯人……』
うおお。「ただそれだけのトリック」見参。堅牢に見えてすっかすかの蟻塚細工。ひとしきり唸らせる傑作。

『見えざる手によって』
アメリカにも泡坂・天藤臭をただよわせる御仁がいた。トリックも鮮やか。不可能状況には心臓わしづかみ。北村氏も解らなくて安心した。


~総括~
アリス、向いてる。北村セレクションとは逆に、僕好みの良作がずらり。
どれもこれも本格の楽しさを改めて思い知らせてくれる。
アリス、またこれやってくれよ。


04.2.24
評価:★★★★ 8



作家小説
 


未作成



絶叫城殺人事件
   


~収録作品~
黒鳥亭殺人事件
壺中庵殺人事件
月宮殿殺人事件
雪華楼殺人事件
紅雨荘殺人事件
絶叫城殺人事件

2001年本ミス8位

~感想~
『黒鳥亭殺人事件』
井戸に落ちたくだりは思わず本を取り落としかけた。て、天使って……ぷぷぷ。
どうせ暗いなら、二十の扉も昏黒にまみれさせればいいのに。

『壺中庵殺人事件』
トリックだけの一編。

『月宮殿殺人事件』
これはなかなかの出来。ただ、後書きでトリックをほのめかしてるのはこっちのほうだ。
もっと浜さんをうまくからめていれば……。

『雪華楼殺人事件』
世紀の駄作『ペルシャ猫の謎』をほうふつとさせる、事例があれば(たとえ後発とはいえ)なんでもいいんかいと言いたくなるもの。魅力的な謎がガッカリの結末を迎える。
会話のくだりは陳腐さに爆笑した。

『紅雨荘殺人事件』
終盤すこしごたついた。処理がうまければ、好印象だったろうに。

『絶叫城殺人事件』
神経症的な物言いをしているのは、いったいどちらでしょう?
ハンパな解釈。緻密ならざる真相。便利な言葉で煙に巻いたのは、はてさて誰でしょう?


~総括~
いたって退屈。調子が悪いのか、これが常態なのか。ううむ。


02.10.1
評価:なし 0



マレー鉄道の謎
   


~あらすじ~
マレー半島を訪れた有栖川有栖と火村英生を待ち受ける「目張り密室」殺人事件!
外部へと通じるあらゆる隙間をテープで封印されたトレーラーハウス内の死体。
この「完璧な密室」の謎を火村の推理は見事切り伏せられるのか?

2002年日本推理作家協会賞、本ミス3位、本格ミステリ大賞候補

~感想~
……なぜこんなにも面白くないのだろう?
下手な詩情。ハンパな思索。稚拙な誤導。余分な暗号。(そもそも暗号か?)魅力薄の人物。大山鳴動して鼠一匹のトリック。
あからさまで思わせぶりな不審・誤導・注意・ミスディレクションはどれもこれもおおげさなだけで、たいした裏もなく、煩雑なだけ。手がかりにもならない伏線は無駄。
計画はずさんで、隠された過去にもひねりはなし。終局に至っては、ただ後味が悪いだけ。
……これが、年度代表作?


02.9.25
評価:★ 2



蜃気楼に手を振る
まほろ市の殺人・冬
     


~あらすじ~
冬になると、真幌の海に蜃気楼が現われる。
満彦は五歳のころ、母につれられ初めて兄弟たちとそれを見た。
母は言う「蜃気楼に手を振ったら幻の町につれていかれるのよ」
直後、こっそり手を振った長兄が事故死し、
二十五年後の今、蜃気楼が残された兄弟の運命を翻弄する。


~感想~
ありがち→奇想?→ぐだぐだ。
煙に巻いたような(いや、巻いた)トリックに雑学細工。余計な詩情。中編でも切れ味戻らず。


03.9.11
評価:☆ 1



虹果て村の秘密
 


未作成



スイス時計の謎
   


~収録作品~
あるYの悲劇
女彫刻家の首
シャイロックの密室
スイス時計の謎

2003年本ミス2位、本格ミステリ大賞候補

~感想~
『あるYの悲劇』
こういったトリックをメインに据えるのはどうかと思うが、アリス作品としては近年まれに見る完成度の高さ。余分すぎる文学味さえとっぱらい、トリック主体で行けばまだまだやれるはずなのに。
……でも、文学味のない、論理に磨きをかけたアリスって、つまり法月じゃん。

『女彫刻家の首』
古くさいトリックだなあ。ひねりもなにもない、当たり前の切断の理由。新味がなさすぎる。

『シャイロックの密室』
倒叙形式にしておいて、このトリックはないだろう。

『スイス時計の謎』
ド真ん中というか、手抜き。200枚もかけて書くようなトリックか? これ。
え? これで答えなの? どんでん返しは? 奇抜な着眼点は? 肩すかしというか腰くだけ。


~総括~
どれもこれもせめて30ページの短編なら、印象も変わったろうにという内容の薄さ。


03.11.7
評価:★☆ 3



白い兎が逃げる
 


~収録作品~
不在の証明
地下室の処刑
比類のない神々しいような瞬間
白い兎が逃げる


~感想~
『不在の証明』
はい、肩すかしでした。

『地下室の処刑』
前代未聞とか自分で言われても……。たしかに珍しかったけども。

『比類のない神々しいような瞬間』
ひっぱってひっぱってひっぱって……はあ。
こういったトリックは、現実にあったらそりゃあ驚くだろう。面白いだろう。
だが、氏の筆力では、まるで現実に起きたような感慨を抱かせるところまではいけない。読者をそこまで導きえない。
トリックが明かされた時に思うのは「ああ、あれを知って、このトリックを思いついたんだね」という白けた感想だけ。

『白い兎が逃げる』
時刻表ものは面白く読めない。ごめん。


~総括~
いいかげん、ワトスン役の有栖川がトリックを見抜いてしまうのは鼻につきだした。
なんらかの伏線なのかもしれないが、トリックを解けない読者をコケにしているようで、不快。


04.12.15
評価:★☆ 3



有栖川有栖の鉄道ミステリ・ライブラリー
     


未作成



モロッコ水晶の謎
   


~収録作品~
助教授の身代金
「ABC」殺人事件
推理合戦
モロッコ水晶の謎


~感想~
『助教授の身代金』
ミステリらしさとドラマらしさがかみ合った秀作。最近のアリス作品に漂う「古畑任三郎」っぽさを全開にした印象。

『「ABC」殺人事件』
トリックが古くさい。トリックを示す手がかりが浅い。読了後の印象が薄い。三拍子そろった一作。

『推理合戦』
『ジュリエットの悲鳴』でも思ったが、ショートショートが巧い。これも良作。

『モロッコ水晶の謎』
『ペルシャ猫の謎』以来の問題作と喧伝しているが、いまどき珍しくもないトリック。
単に「あの有栖川がこんなトリックを使った」というのが奇異なだけで、この種のトリックとしてはひねりもなにもない基礎的なものに過ぎまい。


~総括~
中編3つと掌編1つ。とはいえ表題作は文章を気どったがために長くなっただけ。
ボリュームはイマイチだが、とりあえず及第点で。


05.12.30
評価:★★☆ 5



乱鴉の島
 


~あらすじ~
船頭の勘違いで孤島に送られた火村英夫と有栖川有栖。
そこには孤高の幻想作家を囲み、裏のありそうな正体不明の人々が。
なごやかに流れていた滞在生活は、IT長者の乱入と撲殺事件で、歪んだ真相へと迷走していく。
はたして彼らの目的は? 正体は?

2006年このミス19位、文春5位、本ミス1位

~感想~
火村シリーズ初の孤島物は、孤島物の定義を大きく外れた、言うならばダークファンタジー。
孤島ミステリに付き物のあれやこれやは一切なく、奇妙で穏やかな孤島生活を淡々と描く前半は退屈とも取れる。
いざ事件が起こってみても、ケレン味は薄く、解かれるべき魅力的な謎は見当たらない。
主題は「孤島に集まった人々の謎めいた目的」であり、殺人事件は味つけ程度。謎は謎、事件は事件で別個に存在し、謎と事件が密接に絡まなかったのが大きな不満である。
また肝心な謎も、解かれるのは終盤で、そこまでは背景に留まり、物語に大きな影を落としつづけているものの、あくまでも特異な設定として存在するだけになってしまった感が強い。
これだけの奇抜な設定なのだから、欲を言えば、そこから始まる物語が、そこから紡がれる謎が見たかった。
孤島ミステリながら、流れる雰囲気はいわゆる村ミステリ、あるいは邑ミステリ。しかし閉鎖された空間で行われる異様な風習――は匂いと気配だけに終わった。
謎も事件も、物語を終始いろどる、空を舞う鴉たちと同程度の存在感に過ぎなかったのかも知れない。


06.6.24
評価:★★ 4



女王国の城
 


~あらすじ~
急成長をつづける新興宗教団体の聖地、神倉。
聖地に消えた江神二郎を追い、神倉へ向かったアリスら4人。しかし「城」と呼ばれる総本部はかたくなに入城を拒み、どうにか入ったものの思いがけず殺人事件に直面。外界との接触を阻まれ囚われの身となった一行は、必死に脱出と真相究明を試みるが、その間にも事件は続発し……。

2007年本格ミステリ大賞、このミス3位、文春1位、本ミス1位

~感想~
傑作傑作大傑作。あの歴史的傑作『双頭の悪魔』の続編として出すだけはある。15年待たせただけはある。
正直、終盤まではあまりに冗長な地道な展開に辟易し、読み進める速度も落ちていたのだが、解決にいたって一変。
まさに目から鱗が落ちる謎解きに感服。あれだけ精緻な謎がまさか(ややネタバレ→)
たった3つの手がかりで砕け散るとは!
過去と現在の事件が表裏一体、有機的に結びつき、たったひとつの真相を導き出すあたりは本格ミステリならではの感動。これぞ本格の醍醐味、100%混じりっけなしの本格の中の本格。
さらにさらに終局にいたって作品世界全体を覆っていた不穏な霧が、一瞬で消えさる魔術的な真相。恐れ入りました。
気の毒なのは、これでまた 江神シリーズ>火村シリーズ という図式はより定着してしまうだろう。

『双頭の悪魔』から15年、奇蹟は2度起きた。2007年度最高傑作ここにあり。


07.11.5
評価:★★★★★ 10



壁抜け男の謎
   


未作成



妃は船を沈める


~あらすじ~
夜の港に飛び込み車中で溺死した男には多額の保険金が掛けられていた。
妻は催眠ダイエットを生業とするがアリバイが有り、借金した友人の元保険屋は足が不自由で、その息子は決して泳げなかった。
さらに数年後、関係者の自宅で男が射殺され…。

08年本ミス7位

~感想~
火村英生シリーズ長編。長編だが2つの中編をつなぎ合わせた構成で、その趣向に関してはあとがきならぬ冒頭の「はしがき」で説明されるが、前半を発表した後にそれにつながる後半を思いついたそうだ。
火村シリーズとしては犯人特定に一撃で至る鋭い推理こそ見ものだが、前半パートでそれはやっちゃいかんだろうというがっかりな禁じ手、というか単にアンフェアな箇所があるのが残念。それを認めたらミステリとして成り立たないと個人的には思う。
また猿の手をめぐる議論は重度のミステリ中毒らしい、しかしそれゆえに納得はするが面白くはないもので、作中では火村が主張するがどちらかといえば作家アリスの方が言いそうだと思った。


24.6.1
評価:★★☆ 5



火村英生に捧げる犯罪
   


未作成



赤い月、廃駅の上に
   


未作成



闇の喇叭


未作成



長い廊下がある家


未作成



真夜中の探偵
 


未作成



高原のフーダニット
   


未作成



江神二郎の洞察
   


2012年本ミス6位



論理爆弾
   


未作成



幻坂
   


未作成



菩提樹荘の殺人
   


未作成



怪しい店
   


未作成



鍵の掛かった男
   


~あらすじ~
推理作家の有栖川有栖は、大物作家の影浦浪子から、執筆に使うホテルに定住していた謎めいた男の死が、自殺か否かを火村英生に調べて欲しいと依頼される。
試験期間中で動けない火村の代わりに有栖川は調査を始めるが、その男の生涯はまるで鍵が掛けられたように厳重に閉ざされていた。

2015年このミス8位、文春5位、本ミス7位

~感想~
火村英生シリーズ最長で、面白いは面白いが絶対こんなに長い必要はない。
仕事で身動きの取れない火村が出張ってくるのは中盤以降だが、本作が面白いのは有栖川有栖による素人探偵パートの方。丹念な調査と、少しばかりの幸運から次第に浮かび上がってくる「鍵の掛かった男」の生涯と、意外な事実は読ませる。古色蒼然たる夢の中での被害者との語り合いやら、ただ丁寧に同じ内容を繰り返すだけの回想はやっぱり必要なくて長いけども。
この有栖川パートを「ハードボイルド」とする感想をちらほら見たが、全然さっぱりハードボイルド味は感じないものの、シリーズでも随所に見られた、火村より遅れているだけでわりと真相に近付いてるし推理も正しい、意外と有能なワトソン有栖川の実力が存分に発揮されており、ぶっちゃけ時間さえ掛ければ火村はいらなかった気さえする。
対して火村パートは到着早々に新証拠を次々と見つけ一気に調査を進めるが、(ほとんど言いがかりに等しいが)言ってしまえばただの本格ミステリに戻っており、本作の特徴だった一歩ずつ着実に進める、サッカーに例えれば遅攻の楽しさは無い。
また真相や解決や動機が、個別に取り出してみればこれだけの長編を支えられるものでは全くないのも厳しいところ。一人の鍵の掛かった男の正体を追う物語としては面白かったが、大長編の本格ミステリとしては高い評価はとてもできない。

同じ題材で書かせたら、東野圭吾ならば本格ミステリに特化して枝葉末節をカットし短くしたか、ミステリ味をもっと削ぎ落として「白夜行」・「幻夜」のように仕立て上げただろうし、宮部みゆきなら絶対もっと面白かったはず、というかそれが「火車」である。
正直なところ自分は作者があまり好きではないため評価は辛くなったが、それでも前半パートを中心に楽しく読めたので、作者のファンなら文句なしに楽しめ、シリーズでも上位にランクインさせるほどの作品だろうとは思う。


21.10.22
評価:★★★ 6



狩人の悪夢
   


2017年このミス6位、文春4位、本ミス2位



濱地健三郎の霊なる事件簿
   


未作成



名探偵傑作短篇集 火村英生篇
     


未作成



インド倶楽部の謎
   


~あらすじ~
前世からの絆で結ばれたと主張するインド好きが集まる例会に、過去~未来の全てが記されたアガスティアの葉を読み解く占い師が招かれた。
例会から数日後、メンバーが殺され、その死はアガスティアの葉によって予言されていた?
彼らを「インド倶楽部」と命名した有栖川有栖と火村英生が謎を追う。

2018年このミス14位、本ミス5位

~感想~
国名シリーズ13年ぶりの新作。間が空いたのはあとがきによると「あれ?時間が経つのが早いな。えっ、なんで?と思っているうちに歳月が流れていた」ということで特段の理由は無いそう。
前世からの因縁、アガスティアの葉に予言された死とザ・本格ミステリな道具立てだが、いたってライトな語り口かつ火村の休暇期間だけで解決するスピーディーさで、肩の力が抜けているのは良いところ。例によって火村とアリスがいちゃつくのも需要があるだろう。
個人的に初期の有栖川は文章も美しく描こうとしすぎて苦手だったが、最近の筆致はわりと好きだ。
論理と推理の流れは明快ながら、その実かなり奇抜なことをやっているのも読みどころで、特に予言の謎は腰砕けになりかねない真相を鋭い気づきで納得の真相に変えているのが見事。ご丁寧に火村が解いた時点で真相を予告してくれており、読者もそこで考えれば解ける趣向になっているので、ちょっと考えてみるのも面白いだろう。

またあとがきで作者は「本格ミステリはざっと十種類ぐらいのタイプに分かれるのではないか」「細かく分類し、まだ現れていない空席の分もカウントすれば、二十種類を超えるかもしれない」と話しており、タイプごとのそれぞれの代表作を検討するのも楽しそうだ。

本ミス8位だった白井智之「少女を殺す100の方法」より上位と聞くと「は?」ながら、先頃まさかの刊行となった京極夏彦「鵼の碑」と同じく、名物シリーズの十数年ぶりの新作だと期待し過ぎず、肩肘張らずに読まなければ十分に面白い佳作である。


23.10.19
評価:★★★ 6



こうして誰もいなくなった
   


未作成



カナダ金貨の謎
   


未作成

目次へ