芦辺 拓


殺人喜劇の13人
 


~あらすじ~
古びたアパート「泥濘荘(ぬかるみそう)」へ転がり込んだミニコミ誌仲間の13人。
根城を得た喜びもつかの間、縛り首、毒殺、密室とあらゆる手段で、1人また1人と殺されてゆく。
残った仲間の誰が犯人なのか。友人たちを救おうとする森江春策の推理は?

1990年鮎川哲也賞、文春7位、91年このミス20位

~感想~
おもちゃ売り場をひっくり返したような、本格要素てんこもりミステリ。
ミステリに付き物のありとあらゆる装飾が施され、豪華さでは本家「りら荘事件」を越える。
挑戦状がつけられ、難解な物理トリックや物語中に明かされない過去の事件などは冒頭に示されるフェアプレイぶりはいい。
ただ、軽妙なのはいいが文章はごたついて読みづらく、状況の把握に苦労するのが玉にきず。


評価:★★★☆ 7



歴史街道殺人事件
   


未作成



時の誘拐
 


~あらすじ~
大阪府知事に立候補した根塚成一郎の娘が誘拐された。
犯人から身代金の護送を命じられた阿月慎司は不吉な予感を覚え、森江春策に万一の時の弁護を依頼。
事件は意外な展開を見せ、調査を始めた森江は、戦後間もない頃に起こった連続絞殺事件や、大阪の歴史そのものが誘拐と密接に関わっている事実に気づく。

1996年このミス17位、本ミス7位

~感想~
作者自ら出世作の一つどころか、これを書かなければ筆を折る事態になっていたやもとすら振り返る渾身の一作。
ありがちな誘拐事件から、戦後の混乱や、わずかな期間だけ実在した大阪市警視庁、昭和初期ならではのアリバイトリックと密室トリック、太平洋戦争に隠された闇にまで大風呂敷を広げていき、そりら全てを短い解決パートで破綻なくまとめて見せる豪腕ぶりはすさまじい。
一方で一つ一つのトリックを取り出してみればどれも非常に小粒で、推理のきっかけとなる手掛かりもほとんどが読者には気づきようもない代物ばかりのため、ミステリ的には辛めの評価になってしまうのだが、壮大なスケール感と全てが一本の線に繋がっていくストーリーテリングは素晴らしい。
本ミスで7位に入った本格ミステリと思って読むより、浪漫あふれる歴史ミステリとして読んだ方が吉かもしれない。


21.4.12
評価:★★★ 6



地底獣国の殺人
   


~あらすじ~
1930年代。
創世記の伝説を探るためアララト山を目指した〈ノアの方舟探検隊〉の飛行船。
奇人学者に美人秘書、新聞記者ら一行を待ち受けていたのは、絶滅したはずの恐竜と謎の部族、そしてスパイに連続殺人だった。冒険の果てに彼らが見たものとは?


~感想~
突飛な設定をうまくミステリと絡めて見せた快作、いや怪作。
叙述の罠、裏をつく展開、楽しく軽妙な比喩も冴える逸品。


99.7.19
評価:★★★★ 8



探偵宣言
森江春策の事件簿
   


~収録作品~
殺人喜劇の時計塔
殺人喜劇の不思議町
殺人喜劇の鳥人伝説
殺人喜劇の迷い家伝説
殺人喜劇のXY
殺人喜劇のC6H5NO2
殺人喜劇の森江春策


~感想~
連作短編集ではなく、いままでに出された短編を、巻末の書き下ろし短編でむりやり連作短編にまとめた異色作。
ただ、連作としての魅力は当然ながら薄い。
『鳥人伝説』・『時計塔』などは奇想のあふれた名短編。
その一方でファンブックのような同人誌的ノリの作品、物理トリックに頼りきった作品など、好みが大きく分かれるところ。
ともあれにぎやかな短編集である。


99.4.12
評価:★★★ 6



十三番目の陪審員
 


~あらすじ~
架空の殺人事件を演出し、その容疑者として冤罪の実態を取材する「人工冤罪」計画の犯人役に志願した鷹見瞭一は、DNA鑑定すら欺く偽装を経て、予定通り警察に連行された。
ただし、全く身に覚えのない現実の殺人容疑者として。
関西初の陪審法廷での弁護を引き受けた森江春策が、驚愕の真相を暴き出す。

1998年本ミス6位

~感想~
まだ裁判員制度ができていない時期に書かれた異色の法廷ミステリ。
架空の陪審員法を用いているが、裁判員制度と多くが重なるため、いまの読者ならばすんなり話に入れるだろう。
が、惜しむらくは読む時期を完全に逸してしまい、せっかく作者が趣向を凝らした、独自の陪審員法や、それを軸に据えた個性的な仕掛けなどは、魅力が半減してしまった。
架空の法律が制定されたことから生じるあつれきや、世間の反応などなど見どころはたくさんあるのに、実際に裁判員制度が導入された現在の視点からは、どれも新鮮味が失われ、しかも裁判員制度が順調に推移している現実と比べると、作中の陪審員法に対する無理解や反発はもはや平行世界を描いたSFにも等しくなってしまっている。
類まれな労作だけに、今さら読んだのは悔やまれる次第である。


10.12.24
評価:★★☆ 5



不思議の国のアリバイ
   


未作成



怪人対名探偵
   


~あらすじ~
下校途中に暴漢に襲われ、顔に傷を負った玲美。
彼女を励まそうと誘われたコスプレ・パーティで、玲美は謎の怪人と出会う。
時計台の磔、気球の絞首刑、監禁された美女……はたして名探偵・森江春策は謎を解けるのか。
江戸川乱歩へ捧げる怪人VS名探偵!

2000年本ミス10位

~感想~
まさしく怪人ものミステリ。
いかにもな要素がこれでもかこれでもかと詰め込まれ、装飾過多に彩られた「やりすぎ感」すらただようお祭りミステリ。
ただ、その装飾に「なぜそんなことをするのか」と問うてはいけない。答えは「だって怪人だから」と言うしかないのだから。
とにかくにぎやか。とにかく豪華。古式蒼然たる様式美が光る。
が、それだけではなく現代的なトリックも全編にわたって張りめぐらされるのだから油断ならない。


01.12.27
評価:★★★ 6



和時計の館の殺人
   


未作成



時の密室
   


~あらすじ~
明治政府の雇われ技師エッセルは、謎の館で死体を発見するが、その後火災とともに死体は消失した。
昭和45年、医大生・氷倉は河底トンネルで、そこにいるはずのない友人の刺殺体に遭遇した。
そして現代、路上の密室を追う森江春策の前に、明治・昭和の未解決事件が甦る。

2001年文春8位、本ミス2位

~感想~
大小あわせ6つもの密室をめぐり、明治~平成の時代を超える意欲作。それだけに読みとおすだけで疲労困憊。
独特の重たい文体に、明治の空気を漂わせる作中作、そして密室の大盤ぶるまいと来ては芦辺中毒を起こす寸前。
これだけの長編ながら、数は多いが小粒な密室トリック(物理科学の応用授業あり)に、団塊世代への感情的な恨み節。そして投げっぱなしたような動機と消化不良で胸やけも起こしそう。
時代を超えて6つの密室が連関する趣向は買うが、その連関ぶりは我田引水とまでは言わないが、結びつきが脆弱なのも事実。
作者の大阪LOVEは強く強く伝わってくるが、関東人にはこれまた味がどぎつすぎる。元新聞記者らしい社会性を出しすぎてしまったのも、口に合わない原因か。
都市(大阪愛)小説としては満点。だがミステリとしては味に好みが分かれる、読む人を選ぶ作品であろう。
…………疲れた。


08.5.26
評価:★★☆ 5



赤死病の館の殺人
   


~あらすじ~
赤死病の館の殺人
土砂降りのなか遭難しかけた新島ともかがたどり着いた奇妙な館。
階段状に区切られた部屋はエドガー・アラン・ポーの作品のように赤・青・緑など一色で塗りつぶされていた。
一泊の宿にありついたともかは、夜半に黒い影を目撃。そして翌朝、死体が現れ二人の人物が失踪していた。

疾駆するジョーカー
連続暴行殺人の容疑をかけられた少年と、それを冤罪だと主張する弁護士ら。
彼らが宿泊する屋敷にトランプから抜け出したようなジョーカーが神出鬼没に現れる。

深津警部の不吉な赴任
キャリアが田舎の警察署に赴任し、出迎えに大わらわになる署員たち。
着任早々に墜落事件が発生し、意見を戦わせるが……。

密室の鬼
殺害予告された傲岸不遜な教授。
衆人環視の中、腹を刺された彼のそばにたたずむ出来損ないのロボット。
果たして誰がいかにして密室を破ったのか。


~感想~
森江春策シリーズの短編集。
魅力的な謎が明快に解かれるものの、どうしても腑に落ちない点や物足りなさが目につく。
真相の根幹に関わるネタバレは避けたが、一部の展開や犯行方法には言及するので以下、要注意。


赤死病の館
表題作にふさわしい好編。館の奇怪な構造や意匠にもっともな理由をつけ、シンプルに密室を作り上げた。
もし●●●●●未経験で●●の愛用者だったらどうするんだという疑問は残り、まずこの作品に限った話ではないし、芦辺作品にはよくあることだが普通に共犯者がいるのは不満ながら、予想を裏切る終盤の展開も見事に決まった。

疾駆するジョーカー
こちらもある些細な錯誤を利用したシンプルな密室に好感。
一方で二編続けて鍵穴から睡眠薬を垂らし(古典には詳しくないのだがこれってそんなにメジャーな方法だろうか?)共犯者も大活躍するのはどうかと思うが。

深津警部の不吉な赴任
芦辺作品には珍しい(と思う)あるトリックだけに留まらず、立て続けにどんでん返しを仕込んだ良作。
短い分量で見えていた構図を反転させ、事件の様相を一変させる手管はさすが。

密室の鬼
隙のない密室を単純なトリックで破り、ばらまかれた伏線がことごとく回収された――だけのような。以下↓文字反転↓
例によって共犯者の占めるウエイトが重すぎるし(刑事以外の全員が共犯者かよ)いざとなれば簡単に握りつぶせる素材(??)で作られたお面っていったいなんだ。
ロボットもわざわざ動いてどうでもいい役割をこなすし、被害者を刺したトンデモ博士がつぶさに犯行を自供していたらトリックも即座にバレる。
そのまま通報すれば無罪なのにわざわざ事件に加担して罪をひっかぶるおもちゃ屋の心理も意味不明だし、致命傷を負いながら現場まで徒歩でたどり着く被害者もお達者すぎ、と何から何まで強引すぎて、牽強付会というレベルじゃないだろ。

また余談ながら発刊当時はほとんど陰謀論同然で、「赤死病の館」ではテーマそのもの、「密室の鬼」では脈絡もなく言及されるある話が、2014年現在から見ると全て「仰るとおり」になっているのは確かに興味深かった。


14.7.25
評価:★★☆ 5



グラン・ギニョール城
   


~あらすじ~
欧州にひっそりとたたずむ古城、通称グラン・ギニョール城に招かれた名探偵ナイジェルソープ。一癖も二癖もある客の間には緊張がただよい、嵐の夜ついに惨劇の幕が開く。一方、森江春策は、列車内で怪死事件に遭遇し、手がかりを追ううちに探偵小説『グラン・ギニョール城』を探し当てたが、その小説世界が彼の現実を浸食していく。
文庫書き下ろし掌編「レジナルド・ナイジェルソープの冒険」収録。

2002年このミス9位、本ミス7位、本格ミステリ大賞候補

~感想~
古式ゆかしい本格探偵小説――と見せかけて、主題はナイジェルソープと森江春策の虚・実2つの物語の融合である。
作者自ら「バカミス?」と言及するとおり、細工は豪快というよりも強引きわまりない。しかしその豪腕でつなげられる2つの物語は、なかなかに見事な結実を見せた。
不可能興味あふれるトリックは前時代的な(?)小粒な真相でげんなりだが、森江春策の冒険譚としては十二分に楽しめる。
なお書き下ろし掌編はごく短いユーモア作品なので、単行本をお持ちの方は買い換える必要はなさそう。
ちなみに解説といい、あちこちの書評サイトといい「それを言っちゃいかんだろ」という物語の筋に平然と触れているので、予備知識無しに読むことをオススメする。


06.5.16
評価:★★★ 6



死体の冷めないうちに
   


未作成



メトロポリスに死の罠を
   


未作成



保瀬警部最大の冒険
     


未作成



殺人喜劇のモダン・シティ
   


未作成



名探偵Z
     


~あらすじ~
閑静な地方都市、Q市をありえない犯罪の渦が襲う。
そこに颯爽と現れた乙名探偵(おとなとるただ)、人呼んで“名探偵Z”が卓越した推理で快刀乱麻と事件を解決する!


~感想~
短編バカミステリ。
も、くり出されるギャグはことごとく滑り、主眼は「見たことないトリック」の面白さのみ。
だがその見たことないトリックが他の追随を許さない暴走ぶりでえらく楽しい。
小粒な短編ばかりだが、分量が短いのでハズレを引いても全く気にならない。
一見の価値はアリ。


評価:★★★ 6



殺しはエレキテル
   


未作成



紅楼夢の殺人
   


~あらすじ~
絶世の美女たちが日々たわむれ遊び暮らす地上の楽園「大観園」。しかしその桃源郷に死の影が忍び寄る。
謎めいた詩をなぞるように、あるいは衆人環視下で、あるいは宙を飛び、あるいは忽然と姿を消し、殺されていく美女たち。はたして犯人は? 鬼計は? 中国の奇書「紅楼夢」を基に描かれる空前絶後の事件。

2004年このミス10位、文春10位、本ミス4位、本格ミステリ大賞候補

~感想~
「紅楼夢」は未読だが、中国小説の魅力を存分に味わえる。既に成立し完結した物語を本格ミステリとして組み替えるのは並大抵のことではあるまい。しかも本格ミステリとしても空前絶後の仕掛けが凝らされているのだからたまらない。
作者はこの作品を「本来の意味でのメタミステリ」として突きつけたのだが、その切っ先はただメタミステリに対してだけではなく、本格ミステリそのものの喉元に向けられている。世にはびこる勘違いしたメタミステリへの、いわゆるアンチテーゼに留まらず、本格ミステリ自体を揺るがしかねない問題をはらんだ一作なのだ。
はたしてそれがなんなのか、それは即ネタバレにつながるので明かせないが、ひとつ言うのならば、それは単に学術的な小難しい問題ではなく、本格ミステリのトリックとして、いままで見たこともない魅力的な、実に面白い問題である。


06.9.21
評価:★★★★ 8



妖奇城の秘密
     


未作成



謎のジオラマ王国
     


未作成



電送怪人
     


未作成



真説ルパン対ホームズ
   


未作成



金田一耕助VS明智小五郎
明智小五郎対金田一耕助 改題
 


未作成



切断都市
     


未作成



三百年の謎匣
   


~あらすじ~
巨額の遺産と謎めいた書物を残し、依頼人は袋小路に消えた。
謎を解く鍵は、時空を超え書きつづけられてきた一冊の本の中に?
世界を股に掛けくり広げられる数々の奇譚があわさるとき、三百年の謎匣が開いた!

2005年このミス14位、本ミス8位

~感想~
芦辺ハリウッドと銘打ち、東方、海賊、中華、密林、西部劇、大空とジャンルとり混ぜごた混ぜの一大エンターテインメント小説。
……なだけに、一つ一つのトリックはやや小さく、連作短編集のように合わさったときの破壊力も控えめ。騙しの手管など見事な冴えは見せるが、人物消失トリックの真相は脱力もの。ミステリとしての輝きはちょっと足りない。
その分、物語としての面白さは一級品。もともと大時代的な語り口だけに、古き良き時代を描くと、実に描写がしっくり来る。ふだんの現代劇では大げさとも取れる文体が、本領を発揮してくれるのだ。
これだけ多種多彩の物語を書き分け、さらにまとめてみせる手腕、さすがはかの『堕天使殺人事件』のトリを務めただけはある。つくづくなんでも描ける作家だと、感銘を受けました。


06.11.27
評価:★★★ 6



名探偵・森江春策
少年は探偵を夢見る 改題
   


未作成



千一夜の館の殺人
   


~あらすじ~
不遇の天才・久珠場俊隆博士が、莫大な遺産を残して急死した。
遺言状の開示から日をおかず、久珠場家を次々と惨劇が襲う。
動機は遺産? それとも?
相続の立会弁護士・森江春策のもとを離れ、久珠場家に「潜入捜査」することになった助手・新島ともかに危機が迫る。
事件のそこかしこに顔を覗かせる『アラビアン・ナイト』に秘められた謎とは?


~感想~
『アラビアン・ナイト』で幕を開き『アラビアン・ナイト』で幕を閉じる構成は見事の一言。
事件とそのトリックは小粒だが、メインの大仕掛けは「そこに仕掛けるか!」という盲点になされる。いやはや、一見して無意味に思えたアレに、あんな真相があったとは。
展開はいわゆる「遺産相続お家騒動」ものでバタバタと殺人が多発するが、雰囲気は終始のんき。特に明るい描写はしていないのに、どこか牧歌的な空気がただようのは作者の人徳か。
王道ミステリであることを強調するが、展開もトリックも結末も全てが変則的。本格ミステリのセオリーで、セオリーを叩き壊したような異色の作品。
とにかく盛りだくさんでにぎやか、古風でいながら新鮮、王道でありながら異風、さまざまな仮面をかぶった野心作である。


06.7.24
評価:★★★ 6



探偵と怪人のいるホテル
     


未作成



五瓶劇場
     


未作成



迷宮パノラマ館
     


未作成



裁判員法廷
   


~あらすじ~
2009年、ついに始まった裁判員制度。
指一本触れていないのに血まみれで死んだ被害者。提出できなかった決定的証拠を評議して欲しいと訴える弁護士。有罪を高らかに主張する被告。
裁判員に選出された「あなた」達は3つの法廷に臨む。

08年本ミス6位、本格ミステリ大賞・候補

~感想~
裁判員制度の施行前に架空の陪審法を題材にした「十三番目の陪審員」に続き、今度は本当に裁判員制度を題材にした連作短編集。
大仰な癖のある文体で読みづらいことの多々ある作者だが、「あなた」に呼びかける二人称のおかげで今回はきわめて読みやすいのはいいところ。
だが各短編にそれぞれ欠点が見え、まず「審理」は傑作ゲーム「逆転裁判」の一エピソードの範疇を出ず、「評議」は弁護士・森江春策の「提出できなかった決定的証拠を評議して欲しい」という無茶ぶりは面白いが、「だが裁判はあくまでも提出された証拠だけで戦うものなのでは?」という疑問が最後まで付きまとい、どうして裁判官の誰も気づかなかったのか不自然なほどわかりやすい暗号もあんまり。
「自白」では大胆な罠が待ち受けているものの、事件の様相はヒントを出しすぎてほとんどバレバレ状態。
本ミス6位とあってこちらに期待しすぎた感もあるし、単純に作者との相性が良くないだけだが、それにしても物足りなかった。

まったくの余談ながら1話目では被告がネクタイとベルトを締めることを認められているのに、2話目では自殺の恐れがあるためベルトは認められていないと真逆の描写をされているのだが、2つの事件の間に法改正でもあったのだろうか。


15.3.16
評価:★★☆ 5



月蝕姫のキス
     


未作成



彼女らは雪の迷宮に
   


未作成



少女探偵は帝都を駆ける
     


未作成



綺想宮殺人事件
     


~あらすじ~
琵琶湖畔にそびえる怪建築群「綺想宮」を訪れた森江春策を待ち受けていたのは、西澤保彦作品みたいな難読姓名の8人と、「匣の中の失楽」みたいな衒学の洪水。
天地創造の七日間を表わす曲が奏でられる中、次から次へと起こる殺人事件。
本格ミステリを愛し、その神髄を知り抜いた著者が「探偵小説の最期」に捧ぐ訣別の書!

2010年このミス10位、文春8位、本ミス4位、本格ミステリ大賞候補

~感想~
作者はあとがきで「この世で一番嫌いなアンチミステリをひょっとして書いてしまったのだろうか」と言っているがこれがアンチミステリじゃなかったら何をアンチミステリと呼べばいいのだろうか。
名前と概要はミステリマニアなら誰もが知っているが、概要だけで怖気をふるい読む人のごく少ない、かの小栗虫太郎「黒死館殺人事件」に芦辺拓は真っ向から対峙し、しかし重機で館ごと根こそぎ引っくり返し、ついでにダイナマイトで完膚なきまでに爆散させてしまった。

ペダンチックに超ウゼえ衒学の螺鈿細工が延々と描かれ、面白くなるのは最後の最後だけで、それも見えない相手に超上から目線で罵詈雑言の限りを尽くし、それに収まらず全方面に喧嘩を売っていくファイトスタイルにはドン引き。
作者がメフィスト賞作家とかだったら「うるせー!」とぶん殴って本を真っ二つにすればいいのだが、ミステリ界に多大な貢献をしてきた芦辺拓となると(́◉◞౪◟◉)こんな顔や( ΄◞ิ .̫.̫ ◟ิ‵)こんな顔をせざるを得ない。

概要を聞くだけでもうかがえる通りの労作である。歴代でも3本の指に入るのではと思うほどの参考文献の山には驚きを通り越してもはやドン引きであり、それだけの苦労をしておきながら作中では全てをブッ壊し、シリーズ最大級の巨悪をこれ以上ないほどの方法で粉砕する。
ミステリ界広しといえども芦辺拓にしか書き得ない驚異の作品であることは間違いない。

だが読者の感想はおそらくジャイアンシチューを食べたのび太・静香・スネ夫ら三人のうちのいずれかになるだろう。自分の感想はスネ夫と同じである。



色々とくさしたが以前、麻耶雄嵩「メルカトルかく語りき」の感想で「もし本格ミステリが終焉を迎えるとして、最期の日に読まれるべき作品はこれだろう」と書いたが、本作はより最期の日にふさわしい一冊だと思う。


18.6.20
評価:★★★ 6



黄金夢幻城殺人事件
     


未作成



七人の探偵のための事件
     


未作成



大公女殿下に捧げる密室
     


未作成



スクールガール・エクスプレス38
     


未作成



スチームオペラ
   


~あらすじ~
蒸気を動力源に発展した科学都市。進路に悩む女学生エマ・ハートリーは宇宙から帰還した父を迎えに港に急ぐ。
父が船長を務める「極光号」の船内で謎の少年ユージンと出会ったエマは、彼とともに名探偵バルサック・ムーリエに弟子入りし、頻発する奇妙な事件に挑む。

2012年本ミス9位、本格ミステリ大賞候補

~感想~
序盤から作品世界の説明に多くのページが費やされ、さらに連載SFマンガならともかく一冊限りの小説にそんだけ詰め込まれても、興味が無いし煩雑なだけのSF的ガジェットと固有名詞がこれでもかと乱発され、それらがとどめとばかりに個人的に苦手としているジュヴナイル的な寒くてしかたのない軽妙さを試みた筆致で描かれと、描写の9割に興味を持てないという厳しさだった。
が、そんなこんなも全てが全て、こういった仕掛けをするために作られたものだったら絶賛するしかないではないか。

終盤までは本当に苦しかった。理屈はわからないでもないが納得のいかない謎解きも、厨二に謎めいた断章も、ガールミーツボーイな展開もことごとく好みではない。が、隠されていたある一つの、厳密には一つではないが大本をたどればたった一つの真相が明かされるや、世界そのものが反転し、不満が物の見事に消し飛んだ。
島田荘司御大の某作を思い出させる、世界の秘密を明かすことで、作品世界の謎を解く、他に類例の少ない大仕掛け。これは様々なジャンルを手掛けてきた芦辺拓だからこそ、描くことができたのだろう。

それにしてもこういった作品の面白さを理解できないからといって、その責を作者に求め「スチームパンク、推理もの、SFの内、どれか一つでも読んだことあるのか?」と作者を罵るアマゾンレビュアー(爆)には戦慄を禁じ得ない。それ芦辺拓にだけは絶対言っちゃいけないセリフだろ。
まあ自分も似たようなことをしてきた気もするし、これだけ褒めそやした本作も最後の最後にあの人が「よろしくニキー」と飛び出してきたのには苦笑を通り越して軽いいらだちも感じたが。


14.12.31
評価:★★★★ 8



奇譚を売る店
   


2013年このミス20位



時の審廷
     


未作成



異次元の館の殺人
   


~あらすじ~
菊園綾子検事は罪に陥れられ服役中の恩師を救うため、森江春策に勧められた最新の粒子加速器・霹靂Ⅹ(ヘキレキテン)による証拠の分析を依頼。
だが霹靂Ⅹは暴走し、近くに滞在していた菊園は平行世界へと飛ばされる。
そこは発生した密室殺人事件を解かない限り、元の世界に戻れない異次元の館とでも言うべき場所だった。

2014年このミス10位、本ミス4位

~感想~
本作の特色にして一番の魅力のためあらすじをネタバレするが、菊園検事が密室殺人事件に対し誤った推理を披露すると、時間がさかのぼって推理前に戻り、そこは関連人物たちが微妙に異なる名前・容貌に変化し、しかも誤った推理で用いた手掛かりが消失した平行世界になっている、というトンデモなSF設定である。
平行世界に飛ばされるたびに推理をやり直し、手掛かりはそのたびに消失してどんどん密室は堅牢になっていき、最後の最後には……と考えるだに頭の痛くなるような設定で、器用な作者をしても大変な苦労を強いられたとあとがきで述懐している。

この設定を考え、そして実行した時点でもはや一定の評価を得ることは確実なわけで、実際に各種ランキングで上位を賑わせたが、ぶっちゃけると面白かったのは設定だけで、トリックはほとんどが箸にも棒にも掛からない、ただ密室を作り上げただけの代物に過ぎず、最終的な解決もその延長線上にあるだけの話である。
とはいえ多重解決物……にジャンル分けしてもいいと思うが、2015年に話題を呼んだ深水黎一郎「ミステリー・アリーナ」に勝るとも劣らない、多重解決ジャンルの一つの頂点を極めた作品であることは間違いなく、その多大なる労力と卓越したアイデアには称賛を与えられて当然であり、本格ミステリファンならば一読の価値あることは保証する。


16.10.1
評価:★★★ 6



金田一耕助VS明智小五郎 ふたたび
     


未作成



降矢木すぴかと魔の洋館事件
     


未作成



金田一耕助、パノラマ島へ行く
     


未作成



ダブル・ミステリ 月琴亭の殺人
     


未作成



楽譜と旅する男
   


未作成



帝都探偵大戦
   


未作成

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