飛鳥部 勝則


殉教カテリナ車輪
   


~あらすじ~
憑かれたように描き続け、やがて自殺を遂げた画家・東条寺桂。彼が遺した二枚の絵、“殉教”“車輪”に込められた主題とは?
彼に興味を持って調べ始めた学芸員・矢部直樹の前に現れたのは、20年前に起きた不可解な二重密室殺人の謎だった。

1998年鮎川哲也賞、このミス12位、本ミス3位

~感想~
図像学という、平たく言えば絵画の絵解きをするというマイナーな学問を軸に据え、作中に登場する絵画を著者自ら描いたという意欲作である。
意欲だけにとどまらず、完全無欠の二重密室に、作中作という形式で当然期待されるトリックもぶち込み、いかにもデビュー作らしい、盛りだくさんの内容になっている。
それだけに序盤の濃いミステリ談義、終盤の軽めに流れていく展開が、重厚な雰囲気になりえた作品の魅力を、逆に若干弱めてしまった感がしてならない。
それは有栖川有栖による解説にも共通で、途中までは名文だったのに、中途で自分の文に酔い始めてから酷い有様になっている。
と、脱線はともかくとして、そうした重箱の隅をつつく瑕疵ともいえない瑕疵を差し引いたとしても、実に鮎川賞にふさわしい労作だと言えるだろう。


10.3.12
評価:★★★☆ 7



バベル消滅
   


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N・Aの扉
     


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砂漠の薔薇
   


~あらすじ~
美術館付属の喫茶店でバイトする奥本美奈は画家の明石尚子にモデルに誘われる。
奇矯な発言の目立つ明石の自宅隣に建つ洋館と奇妙な住人。
その洋館では3ヶ月前、親友の真利子が首無し死体で発見されていた。


~感想~
「イマドキの女子高生」なんて枠組みから数光年かけ離れた暴力的かつ退廃的な彼女らの日常(?)を筆頭に、登場人物にいわゆる常識人がおらず、どいつもこいつも頭のネジが数本外れているのがまず特徴。
死体マニアや折原一作品の語り手みたいな精神崩壊をきたした彼らが交わす会話は、当然のごとく現実離れした上滑りしまくるもので、首と衒学と意味不明な詩が飛び交い、薔薇ならぬ百合展開と相まって一般的な読者を拒絶……しそうなものだが、平易な文体と何が起ころうと飄々とした語り口で異様に読みやすいのが良いところ。
そして解決編、急に古き良き本格ミステリに立ち返ったように、伏線を段落ごと転載し丁寧に拾い集めつつ、決して多くない登場人物の中でどんでん返しを連発させ、意外な犯人を用意してみせたのはお見事と言う他ない。
振り返ってみればあからさまな伏線ばかりなのだが、エキセントリックな発言の渦に紛れ込ませ、そうとは気づかせない手管が面白い。森博嗣が「ものすごく遠回しなくどい文体に伏線を紛れ込ませれば誰も気づかない(うろ覚え)」と冗談半分に書いたことがあるが、それの奇人変人バージョンといったところか。
伏線を段落ごと転載したのはこれまで醸成してきた雰囲気を壊した感もあるが、おかげで伏線とどんでん返しの妙に貢献したし、終局での犯人の独白とエピローグで十分に空気感は挽回できたろう。
この作者にしか描けない独特の、そして意外に、といっては失礼だが意外に良く出来た秀作でした。

また文庫版のカバーイラスト、会田誠「切腹女子高生」はたぶん相当数の読者の購入意欲を削いだものの、これ一枚で本書の内容を表したといって過言ではない「だいたい合ってる」逸品なので、ぜひ書店でカバーだけでも見ていただきたい。


14.8.22
評価:★★★ 6



冬のスフィンクス
   


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ヴェロニカの鍵
     


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バラバの方を
     


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ラミア虐殺
   


~あらすじ~
吹雪の山荘で起こった連続殺人。
「突きとめられないなら、全部殺してしまえばいい。
その方が自分がやられるよりは、はるかにいい」
殺すか、殺されるか。極上にして凶悪なインモラルミステリ。


~感想~
これは意表をつかれた。氏の本を初めて読むだけに、これが異色作なのかどうか判断はつかないが、とにかく異質。
予備知識をもって読んだだけに、覚悟はできていたが、もしなにも知らずに読めば、いったいどんな感想を抱いたものか――。
ぜひなにも調べずに、先入観なしに読んでいただきたい。
B級本格ミステリここにあり。

一言でいえば、この作者はバカなんだと思います。(褒め言葉)


評価:★★★ 6



レオナルドの沈黙
     


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誰のための綾織
     


~あらすじ~
新潟中越地震の夜、孤島に集められた三人の女子高生と教師たち。
かつて犯した罪を償わせるため誘拐者は糾弾する。
誰が殺し、誰が生き残るのか。作中作「蛭女」に込められた愛が全ての鍵となる。


~感想~
冒頭からメタ的に作者と編集者が「推理小説に禁じ手はあるのか」と語り合い、「現代の推理作家はバカなネタ、ないし禁じ手を、そう見えなくなるようにごまかして、商売している」とぶち上げ「本作はフーダニットとして成立し禁じ手にも挑戦している」と自らハードルを上げに上げていく趣向に笑った。
なお本作は三原順の漫画「はみだしっ子」との類似点を問題視され絶版・回収に至ったため禁じ手はあった模様。
世に絶版ミステリや幻のミステリは数あれど、諸事情により発売自粛となっておりマジで入手困難な作品は数少ないが、その稀な例が本作である。
当時の騒動の詳しい話は知らないし、すでに終わったことのためこれ以上は触れないが、トリック自体とは全く関係ない問題点なので、このまま葬り去られるのは惜しい……と思ったが、よく考えれば一部のトリックは「堕天使拷問刑」で用いられているなそういえば。

内容に戻ると、倫理のりの字も持たない女子高生と教師が特に理由もなく凶行を働き、全く反省の色もなく上っ面だけのセリフを吐きまくり、当然のごとく凄惨な報復を受けるというイッツ・ア・飛鳥部ワールドの中に「禁じ手」が仕掛けられており、トリック自体は前例のあるものばかりではあるが、その組み合わせと手法が画期的で、確かにフーダニットとしてギリギリで成立しつつ禁じ手を放ち、新たなトリックを創出し見事にハードルを飛び越えている。
冷静に考えると登場人物の誰ひとりとして逮捕されることを恐れていないのが意味不明だが、そんなことを気にしては飛鳥部作品は読めないし、ただでさえ異色の作風で知られる作者があえて禁じ手に挑んだというだけでも飛鳥部ファンやミステリマニアにとって一読の価値は十分。
高騰するプレミア価格を支払うのは馬鹿らしいが、図書館や好事家の手を借りられればぜひ読んでいただきたい。


17.10.26
評価:★★★☆ 7



鏡陥穽
     


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堕天使拷問刑
   


~あらすじ~
両親と死別し祖母に引き取られた中学生の如月タクマ。
そこは奇妙な因習の多く残る寒村で、余所者の彼は冷たい仕打ちを受ける。
彼が村に来る前に起こっていた、密室で全身を絞め殺された祖父、雪の密室で首を斬られた母子三人という2つの事件。
タクマの周囲でも事件が相次ぎ、そして天使と悪魔が現れた……?


~感想~
こんな表現ができるほど作品を読んではいないが「飛鳥部ワールド全開!」と呼びたくなる異形の本格ミステリ。

冒頭、密室で全身の骨が砕けるまで絞め上げられた男と、雪に囲まれた密室状況下で瞬時に首を切断された三人の謎が立て続けに現れるが、それらを置き去りにしてハブられる主人公の日常パートが延々と描かれる。
チンピラ上級生のやり過ぎ感あふれる陰湿ないじめや、謎の集団リンチの儀式はともかく、本筋と一切関係ないようなB級ホラーなエピソードが次々と起こり、中学1年生がおよそ持ち得ない驚異的なウンチク(オタク同級生ばかり目立つが主人公のタクマも大概詳しい)を交えて悪魔学を語り合い、オススメモダンホラーを21ページにわたり紹介するあたりは作者の趣味全開。
登場人物の9割は人格破綻者で、終盤にはとうとう現物まで飛び出して大暴れする段に及ぶと、そもそものジャンル自体がわからなくなるが、一騒動が治まるとそこからいきなり本格ミステリとしてまとまり出すのには驚かされた。

奇人・変人達の奇矯な振る舞いや言動の裏に紛れていた伏線が次から次へとあらわになり、3つの密室トリックはいずれもそれはいくらなんでも無理だろうという代物ながら「だって本当にそうだった」という厳然たる事実を証拠に、強引に押し通す手法にはもはや笑うしかない。
そして最後の最後には急転直下で淡く切ない良い話に落ち着いてしまうという、使い古された言葉を用いればジェットコースターのような起伏に富んだ展開で、この作者にしか成し得ない驚異の作品世界に終始圧倒された。

邪推かも知れないが、この2年前に盗作騒動で絶版となった「誰のための綾織」がなければ、間違いなく何らかのランキングに絡んだだろうと確信している。


16.12.8
評価:★★★★ 8



黒と愛
     


~あらすじ~
亜久直人は幽霊に怯える友人に頼まれ、心霊番組のロケハンに同行し、奇傾城を訪れる。
悪魔的な趣味に彩られた城内で、撮影隊の一人が密室で首を切られて殺される。
犯人は復員兵の幽霊なのか?


~感想~
全作読んでないがたぶん作者の集大成。
冒頭1ページ目、いきなり瀕死の少女が軒先に転がるが、家主の男は意に介さず帰って寝ようとするホットスタートを切る。
その後も隙あらば幽霊や怪人が顔を出し、伏線かどうかも怪しい怪異譚が次々と語られ、登場人物はたいがいが一人や二人は殺しているだろう狂人揃い。
密室殺人の犯人はあっさり指摘され、すぐさま犯人視点で過去編が始まり、やべえ少女と互角以上にやべえお友達らの超やべえ日常が語られ、現在に戻るとお待ちかねの現物が全員集合しバトルロワイヤルを繰り広げる。
終盤にはどんでん返しというか、はっきり言えば「台無し」な展開が4回くらい重なり、ただでさえ飛鳥部勝則を読もうという鍛えられた読者をさらにふるいに掛けるような、全く手加減なしのイッツ・ア・飛鳥部ワールドで終始ニヤニヤしながら読んだ。

あの「堕天使拷問刑」よりもさらに作者の趣味を全開にした変態小説……いや怪作だが、豪快なトリックあり、巧みな誤導ありとミステリとしてももちろんのこと優れている。
さらには先に刊行された「ラミア虐殺」の姉妹編でもあり、後日談としても楽しめる。しかもこの両作はとある特殊な構成から、どちらを先に読んでも双方でネタバレを踏んでしまうという面白い関係にあり、個人的には「ラミア虐殺」を先に読むことを勧めるが、「黒と愛」を先に読んでも全く問題はないだろう。どちらも入手困難なのは問題であるが。

ミステリ的には「堕天使拷問刑」に軍配を上げるものの、やりすぎ具合と個人的な好みでは「黒と愛」の方が上だが、どちらも甲乙つけがたいところ。ともあれ作者のファンならば絶対に読むべき渾身の一作である。


18.2.22
評価:★★★★ 8



フィフス
     


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抹殺ゴスゴッズ
     


~あらすじ~
令和の孤高の高校生2人が空想する怪神ゴスゴッズ。アンチ十戒を旨とし名を呼べば現れ暴を振るう。
平成の廃鉱山に現れる蠱毒王。悪魔的な死体人形を造り闇を蠢く。
2つの時代を隔てた事件の裏には人知を超えた存在が潜むのか?

2025年このミス10位、本ミス4位

~感想~
冒頭から架空の神がチンピラを叩きのめし、チェンソーマンに捧げるゲロチューで幕開けし、ネームドキャラの9割は変態か人格破綻者でもううれしくなってくる。
その後もセックス・ドラッグ・バイオレンスみたいな性と衒学と暴力が延々と続き、いかにもクライマックスで噴火しそうな活火山、いかにもクライマックスで落盤しそうな廃坑、終わってみれば全編に伏線が張り巡らされてるのにある展開にだけはどうしても繋がらなくて困ったのか伏線も理由もなしに唐突に挟み込まれるアレ、全裸待機、無双乱舞されるために30人も出てくるヤクザ、突然のエロ川柳、お前が名探偵やるんかい、お前が名探偵やるんかいⅡ、変態しかいないのになんかすごく良い話風のまとめ、などなど飛鳥部ワールドに次ぐ飛鳥部ワールド。15年ぶりの長編でも純度100%致死量の飛鳥部勝則を提供してくれる作者に花束を贈りたい。
ミステリを読んでいて声を出して笑うことなんてそうそう無いが本作は何度も吹き出した。全裸待機クソ笑った。
もちろん飛鳥部勝則なのでミステリとしてもちゃんとしており、全ての謎は残らず解かれ、そこに多重解決やひねりも加え、特に真犯人はまさかここでこう来るとは予想だにしなかった。
あと
「○○する馬鹿なんているわけねえだろボケ」
いやあ飛鳥部作品にはわりと普通にいそうだから全く不審に思わなかったな……。
予想は裏切り期待は裏切らないいつもの飛鳥部勝則、これは本ミス1位か本格ミステリ大賞行っちゃいますか!?


25.12.3
評価:★★★★☆ 9



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