阿津川 辰海


名探偵は嘘をつかない
   


2017年カッパツー、本ミス3位



星詠師の記憶
   


2018年本ミス6位



紅蓮館の殺人
     


~あらすじ~
高校生探偵の葛城と助手で親友の田所は、合宿を抜け出し山奥の推理作家の邸宅を訪ねる。
だが山火事が発生し、刻々と火の手が迫る中、凄惨な事件が起こる。
殺人鬼はなぜ、この窮地であえて罪を犯したのか?

2019年このミス6位、本ミス3位、本格ミステリ大賞候補

~感想~
誰だよ講談社タイガなんてラノベ気味レーベルでこんなガチ本格ミステリ出そうと考えた奴はww

高校生探偵と助手、からくり満載の館、山火事という天然の密室の中で起こる密室殺人、異名付きの連続殺人鬼と、THE・本格ミステリな要素が目白押しなだけではなく、名探偵の勝利と敗北、栄光と挫折、過去と未来を描き切ったガチ過ぎる本格。
これを本当に講談社タイガで、千円でおつりの来る価格で売っていいの?
あれか。デビュー作「名探偵は嘘をつかない」がメフィスト賞をパク…真似たカッパツーから2千円で出されたから、対抗して900円で売ったのか。

下衆の勘繰りをしてしまったが、よく考えれば講談社タイガは京極夏彦「百鬼夜行シリーズ」の外伝を出してもいるレーベルでもあり(どちらかといえば百鬼夜行シリーズはラノベよりだけども)、ターゲットにしているのはライト層だけとは限らない。
とはいえミステリ初心者が読めば面食らうような内容だし、設定の割に登場人物も事件数も少ない話を、山火事にいぶされる館と同じように、弱火でじっくりことこと煮込んだド本格で、しかも本格ミステリの数あるギミックの中でも「名探偵」という要素にとことん光を当てた、名探偵の物語でもあるため、やはり訓練された本格ミステリファン向けの作品なのは間違いない。

いずれにしろ、せっかくお求めやすく持ち運びやすい文庫で出してくれたので、本格ミステリファンなら迷わず読んで欲しい出色の作品である。
レーベルで敬遠されなければ本ミスランクインは確実ではなかろうか?


19.11.12
評価:★★★☆ 7



透明人間は密室に潜む
   


2020年このミス2位、文春2位、本ミス1位、本格ミステリ大賞候補



蒼海館の殺人
     


~あらすじ~
「紅蓮館の殺人」以来、失意の日々を送る葛城は登校せず自宅で謹慎させられていた。
田所は友人の三谷とともに葛城の家に向かう。折しも葛城の祖父の四十九日法要が執り行われ、刑事・議員・弁護士ら華麗なる一族も顔を揃えていた。
そこへ未曾有の台風が迫り、そして事件が起こる。

2021年このミス5位、文春8位、本ミス2位、本格ミステリ大賞候補

~感想~
前作「紅蓮館の殺人」もいちおうラノベレーベルのはずの講談社タイガで「名探偵とは何か?」という問いに真摯に向き合ったド本格だったが、本作はそれをさらに突き詰め、絶望に打ちひしがれた名探偵の再生の物語をじっくり丹念に描いて見せた。
そのため講談社タイガ最長の、というか文庫本としても珍しい、手持ちのカバーには入らない分厚さに仕上がった。
しかし内容は前作を上回るどころか、早くも今年の本ミス1位は疑いないと絶対的な確信を得るほどの傑作である。

前作と同じく事件の数は絞られ、しかも冒頭から犯人の性別も明かされる。前作の火攻めに続いて水攻めにさらされるわかりやす過ぎるタイムリミット要素は笑ったが、もちろんその水攻めも推理やトリックに組み込まれている。
なんといっても恐るべきは、この分厚さでありながら無駄な要素のほとんど無い、何気ない会話から描写までほぼ全てが伏線という重厚さには脱帽する。

事件はわりと早く起き、名探偵が動き出すまでに仕込みは全て終わり、中盤からは延々と推理が続く。事情聴取がてら、本筋ではない謎を解くことで新たな手掛かりを得て論理を補強して行く流れは、要所要所でサブの事件の真相開示をすることにより、長い推理パートを飽きさせず、また名探偵の推理の流れを理解させることに大いに貢献している。
叙述トリックがバーン!館が物理トリックでドーン!が大好きな自分も久々に(※依井貴裕「記念樹」以来2年ぶり)論理が面白い!と思えた。

そして最後に明かされる黒幕の正体は、ここまで来るともうそれしかない着地点ではあるが、その潜ませ方は実に見事で、直接対決から全てを締めくくる決着まで鮮やかに決まった。
ネタバレを避けて言うと、本作はあるトリックの新たな一つの到達点と呼べるのではなかろうか。

前作で終始問われ続けた「名探偵とは何か?」という問いに明確な答えを与え、絶望の淵から立ち上がった「名探偵の再生」を描き切った素晴らしい本格ミステリである。
もう一度言うが、この先何が出ようとも今年の本ミス1位は疑いないと絶対的な確信を持っている。


21.2.28
評価:★★★★★ 10



入れ子細工の夜
   


2022年本ミス7位



録音された誘拐
   


2022年このミス15位、本ミス3位



あなたへの挑戦状
     


未作成



午後のチャイムが鳴るまでは
     


~あらすじ~
昼休みに学校を抜け出してラーメンを食べ、泊りがけで部誌を作り、消しゴムポーカーに熱中し、不可解な言葉を推理する。
下らないけれども輝かしい青春の日々の裏に潜む数々の謎は、午後のチャイムが鳴るまでに解き明かされる?

2023このミス11位、本ミス4位

~感想~
全作読んでいないので断言できないが、これまでガチガチの本格ミステリを書いてきた作者が初めて挑んだ学園青春物。
阿津川辰海といえばデビュー作から7作続けて5年連続で本ミスベスト10入りしてきた本格ミステリの鬼であり、今回もガワだけ青春物でいつものように全ページに伏線が張り巡らされたようなガチガチの内容かと思いきや、いわゆる「肩の力を抜いて描いた」と冠されてもおかしくないゆるさ。
もちろん(既刊と比べればゆるめだが)豊富な伏線や連作短編集らしい仕掛けも用意され、好人物ばかりのキャラ造形で楽しい学園ミステリに仕上がってはいるものの、全体を貫くトリックは作者ほどの実力者がいまさら披露するまでもない代物で、伏線もほとんどが仕掛けられた瞬間に丸わかりのゆるさで、期待を上回りはしなかった。
特に3話目の消しゴムポーカーのコンゲームが繰り広げられる「賭博師は恋に舞う」は漫画ならまだしもやはり文字だけで読むと厳しく、盛り上がっているのは登場人物ばかりだった。(余談だが今月刊行の青崎有吾「地雷グリコ」も同様の理由で厳しそう)
とはいえそこは本格ミステリの鬼で及第点は優に超えており、阿津川辰海の初の学園青春物!?と期待し過ぎたこちらが全面的に悪いだけで普通に楽しいミステリではある。
しかし流石に本ミスベスト10入りは難しそうか。


23.11.16
評価:★★★☆ 7



黄土館の殺人
     


~あらすじ~
元名探偵・飛鳥井光流のSOSに応え芸術家一家の暮らす荒土館を訪れた葛城輝義と田所・三谷。
しかし地震で道路は封鎖され、葛城と田所・三谷は内外に分かれてしまう。
近くの旅館で宿を取った葛城は偶然にも殺人計画に巻き込まれ、そして荒土館では惨劇の幕が開く。

2024年このミス20位、本ミス8位

~感想~
シリーズ3作目。
もう章題からして「名探偵・葛城輝義の冒険」「助手・田所信哉の回想」「探偵・飛鳥井光流の復活」と激熱の並びでワクワクしてくるが、冒頭には「顔を見ずに交換殺人の約束を交わす二人の殺人者」というさらに激熱かつ「某有名作家の代表作の真相」を思い出さずにはいられない展開が飛び出すホットスタートで、サービス精神はいつも通りに満点。
その後も別の「某有名作家の代表作の真相」を思い出させる仕掛けが思っただけで3つ繰り出され、既視感はさすがに否めないし、わりと無理のある強引な設定・トリックは多々見られるが、膨らんだ期待にきっちり応えた真相と結末が待ち受けていてくれるので、十分に満足した。
デビュー以来続けている本ミスランクインは今回も確実だろう。

しかし欠点が無いわけではなく、自分を「勘の良い読者」に定義するのは汗顔の至りだが、「勘の良い読者」なら(※以下ネタバレのため 別ページへ)で早々に犯人も構図もわかってしまうのはさすがにいただけない。

全くの余談だが、友人に「ネットで表紙に犯人が隠れていると指摘されている」と教えてもらい一目見るや爆笑した。
思っていたのとは違って逆に感心したのだが、興味のある方はぜひネタバレに注意してググって欲しい。


23.3.6
評価:★★★☆ 7



バーニング・ダンサー
     


~あらすじ~
ある時、世界に現れた100人のコトダマ遣い。100の言葉を媒介に様々な能力を使う彼らは、あるいは犯罪者となりあるいは刑事として能力を活かした。
日本に誕生したコトダマ犯罪調査課SWORDには7人のコトダマ遣いが所属し、コトダマを用いた犯罪の調査に当たる。

2024年このミス8位

~感想~
帯には「最高峰の謎解き×警察ミステリ!!」と警察物を強調されているが、どう考えてもバリバリの特殊設定ミステリである。
100人のコトダマ遣いは死ぬと別の人間にランダムにコトダマが受け継がれるというだいぶ「ワンピース」の悪魔の実に近いもので、能力の設定もだいぶゆるく、なんでもありになってしまいぶっちゃけ面白くなるとは思えない。
そこを作品全てが本ミスランクインしている本格の鬼・阿津川辰海はいかにクリアしたかというと、帯にあるようにあくまでガチガチの警察ミステリとして描くことで打開を図った。
時にコトダマバトルが繰り広げられる以外はまるで普通の警察ミステリのように振る舞い、捜査が進むごとに丹念に事件の構図や得られた手掛かりを箇条書きで記し、地道に描いて行く。だがそれがお世辞にも成功しているとは言えず、どんなに伏線を細かく張って推理を紡いでみせてもぶっちゃけ「う~~んやっぱりコトダマが余計!」という結論に落ち着いてしまう。
作者が特殊設定ミステリをあまり描き慣れていないこともあり、やりたいことと隠したいことがコトダマ周りの設定でほぼほぼ丸見えで、同じく帯にある「怒涛のドンデン返し」もだいたいが予測できてしまった。
しかも物語の結末があからさまに続編を意識したもので、本作も面白くなかったわけでは無いが真価が発揮されるのは(出るならだが)シリーズ2作目の方。
ネタバレにならないと思う感想だと「2作目で阿津川版mediumみたいなのやろうとしてます?」と聞きたくなる。
シリーズ続編へ向けての助走・種まきとも取れるし、この一作で終わりでも全然おかしくない。でも2作目があるならそっちですごいことしてきそうなので、単品では決して高い評価はできない、そんななんとも感想に困る一冊だった。


24.8.21
評価:★★★ 6



最後のあいさつ
     


~あらすじ~
刑事ドラマの名優が妻殺害の容疑で逮捕されるも、ドラマの名刑事さながらの推理で真犯人を指摘した。
30年前のその事件をなぞるように起こった新たな殺人事件。真犯人は別にいたのか?
名優は本当に名探偵だったのか?

2025年このミス18位、本ミス5位

~感想~
参考文献を見るまでもなく「相棒」と「古畑任三郎」をミックスさせた設定の刑事ドラマからそのまま抜け出してきたような名優の半生を振り返りつつ、現在進行する事件と30年前の事件の真実、そして名優と推理の正体、公開されなかったドラマ最終回の全貌に迫るノンフィクションのような構成で描かれる。
終盤にはミステリのある有名な要素も顔を出し、何重にも凝った構成ながらちょっとひねりすぎたか。またトリックもしょぼい。かなりパワータイプの密室で解決方法も力ずくであり、堅牢な密室にありがちな、真相はそれしかないけどがっかりさせられる類のものである。
ラストシーンは最高だったが、阿津川作品にこちらが(勝手に)期待しているのはそこではなく論理やトリックのほうであり、デビュー以来8年続いた本ミスベストテン入りも今度こそ厳しいのではなかろうか。
(※追記 ランクインしました。恐れ入りました)


25.11.4
評価:★★☆ 5



ルーカスのいうとおり
     


~あらすじ~
2年前に亡くした母との思い出の人形ルーカス。
母の死を乗り越えなさいとパパに捨てられたルーカスを河原で拾った日から周囲で事件が起こる。
犯人は30センチの人形なのか?


~感想~
帯には「あなたはこのフーダニットを見破れるか!?すべての伏線を見逃すな」と書かれているが中盤を過ぎたあたりで「フーダニットってそういうこと!?」となり終盤には「伏線ってやっぱりそういうこと!?」と事情が変わる。
このあたりネタバレになるので詳しくは言えないが、いっそネタバレして初めからそういうものだと明言しておいたほうが良かった気もする。
デビュー以来毎年必ず本ミスベスト10入りしている阿津川辰海作品でフーダニットと言われたらあっちを期待するが、このやり口は「パノラマサイト」とかそっちの方が近い。
作品自体の質は悪くないし、これはこれで面白いけども、しかしなにか釈然としない思いに終始囚われてしまう作品である。


26.2.22
評価:★★★☆ 7



犯人はキミが好きな人
     


~あらすじ~>隆一郎が好きになった女性は100%なんらかの罪を犯している。
幼馴染で名探偵志望の花林は、リューイチの恋心センサーを利用し謎を解く!


~感想~
隆一郎の能力は範囲内に入った女性が一定以上の重たい罪を犯したか、近々罪を犯すと察知すると自動的に恋心を抱くというあまりにも精度良すぎる代物で、一行目で犯人の名前を明かしてしまう麻耶雄嵩「さよなら神様」フォロワー(※勝手に呼んでる)作品に勝手に分類するし、きっと作者も「さよなら神様」を目指したと思うが、回を進めるごとにセンサーの使い方を工夫し独自の味を出してきて面白かった。
しかしどうしても相沢沙呼「medium」や紙城境介「僕が答える君の謎解き」ら10点満点を叩き出したフォロワー作品(※勝手に分類)には見劣りしてしまう。
そのどれとも違う切り口は見せていたが、始祖の「さよなら神様」からしてその設定で考えうる限りの変化球をあれだけ出してしまっており、挑むこと自体が難解ではある。
本作内でこれしかないいかにもな結末を迎えてしまい、シリーズとしては一作限りかもしれないが、なんせあの本格ミステリの鬼・阿津川辰海だから続ければいずれ「さよなら神様」を超えかねないので、なんとかして欲しいと個人的には思うのだが…。


26.2.17
評価:★★★☆ 7



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