今村 昌弘


屍人荘の殺人
   


~あらすじ~
神紅大学のホームズを自認するミステリ愛好会の明智恭介と葉村譲は、警察にも認められた本物の名探偵である剣崎比留子の協力を得て、不穏な空気の漂う映画研究部の夏合宿…という名の合コンに加わる。
ところが合宿先の紫湛荘に到着するやバイオテロが発生し、付近で行われていたフェスの参加者がゾンビ化し紫湛荘に殺到。
そんな絶体絶命の窮地のさなかに、事件は起こった。

2017年鮎川哲也賞、本格ミステリ大賞、このミス1位、文春1位、本ミス1位、本屋大賞候補

~感想~
ゾンビに触れずにあらすじを書いている記事も多いが、やはりこの作品の最大の魅力はゾンビパニックと本格ミステリの融合にあるため、あえてあらすじはネタバレさせてもらった。

今年は白井智之の新刊が出なかったと思ったら似たような時期にこれが出た。ホラーからコメディまであらゆるジャンルと融合してきたゾンビは本格ミステリとも抜群の相性だった。
実のところミステリ部分もゾンビ部分も非常にオーソドックスな内容で、話の展開はゾンビを除けばこれまで無数に書かれてきたいわゆる雪の山荘物に過ぎず、ゾンビの設定はこれといった説明を要しないほど典型的なものである。
だがこの2つの典型例が融合することで相乗効果を発揮し、作者が目指した通りの、誰も読んだことのないミステリが誕生。
まだ書き慣れていないせいか、伏線は後々に伏線として生きてくることが見え見えのものばかりだし、どうフォローしてもアンフェアの謗りは免れられないような面もあるにはあるが、それでも少なくとも鮎川賞史上最高傑作の一つに数えられることは間違いあるまい。

またこれだけ工夫のない(といっては語弊があるが)いたって普通のゾンビの設定でこんなに面白いミステリが産まれるなら、ゾンビ自体にひねりを加えればさらなる飛躍が――と思ったがそれがそもそも白井智之だった。

なお巻末に付された選評だが、しかたのないことだがネタバレ三昧で、しかもまるで示し合わせたように、選考委員3人の選評を合体させると内容のほぼ九割が書かれているのには笑った。ネタバレを騒がれていたのは知っていたが、まさかこんな巧妙なトリックを仕掛けていたとは……。
くれぐれも選評は先に読まないようご注意のほどを。


17.11.10
評価:★★★★ 8



魔眼の匣の殺人
   


~あらすじ~
紫湛荘の事件から数ヶ月、新たにつかんだ斑目機関の情報を探るため、剣崎比留子と葉村譲は、研究所があったという山奥の村へ。
そこでは予知能力を持つ巫女サキミが村人から恐れられており、折しも「男女2人ずつが死ぬ」という予言を出したところだった。

2019年このミス3位、文春3位、本ミス2位

~感想~
デビュー作「屍人荘の殺人」は、「容疑者Xの献身」以来の三冠馬として、たった一作しか無いのに漫画化・実写映画化と過剰に持ち上げられ、本作も数ヶ月前からあらすじと書影が公開されと、ものすごいプレッシャーが掛かっていたが、冗長な面や荒い点もあるにせよ、前作よりはるかに良く出来ているし、期待通りに前作のような特殊設定も上手く活かしてくれた。ゾンビに目を付けただけの一発屋の可能性も少しは危惧していたので、この普通に良く出来た、いやさ非常に良く出来た、早くもランキング上位は確実と思える堂々たる本格ミステリぶりには恐れ入った。

そして内容よりも気になったのが、いろいろ話題になったとはいえ、こんなごくごく普通の(特殊設定が絡んではいるが)超が付くほど正統派の本格ミステリがあっという間に10数万部も売れ、一般層にそんなに受け入れられるなら、本格ミステリの未来は明るいという希望が抱けた。一般層に受け入れられたのがうれしいのではない。良い作家がちゃんと儲かる未来が見えたのがうれしいのだ。

破格のデビュー作一冊限りで力を使い果たした作家も多い中、二作目できちんと前作を超え、何よりこの王道を歩み、そこに特殊設定を上手いこと織り交ぜた、端正なTHE・本格ミステリを見る限り、作者にはもうなんの心配もいるまい。
出版社は久々の大型新人として持ち上げたいのはわかるが、あまり余計なことはせず粛々と見守ってもらいたい。


19.3.11
評価:★★★★☆ 9



ネメシスⅠ
     


未作成



兇人邸の殺人
     


~あらすじ~
斑目機関との関連を聞き、葉山たちが向かったのは、遊園地の中に建つ「兇人邸」。
そこでは機関の研究者が怪しげな実験を行い、わけありの従業員らが犠牲になっているという。
研究成果を奪うため傭兵も同行するが、思いも寄らないものが待ち受けていた。

2021年このミス4位、文春3位、本ミス3位

~感想~
シリーズ第3弾。いわゆる特殊設定ミステリに分類されるシリーズだが、今回は原点回帰し、第一作を思い出させるようなある存在が立ちはだかる。
そして推理やトリックも特殊設定を根本としたもので、パニックホラー的な要素と噛み合い、本作でしか味わえない面白さに仕上がった。
それだけではなく、名探偵と助手の関係性についても今回も思索を続け、その進展も見どころである。
トリックに関してはミスディレクションはあからさまで、伏線もかなり大胆なものの、それでもギリギリで裏をかいて来るし、解明のロジックも明快かつ緻密に組み立てられる。終盤に明かされる事件の背景も意表を突きつつ納得の行くもので、かなりどぎつい外道な(しかしそれしかない)逆転の秘策も見事だった。さらっと流され過ぎてて笑ってしまったが、あの外道さをつつくと大変なことになるので仕方ない。
前作から実に1年半ぶりの刊行と、漫画化!映画化!100万部!という周辺の騒がしさとは無縁の落ち着きぶりで、安定した良作を生み出し続けている作者だが、それにしても本作のラストには驚いた。これだけ完成度の高い作品がまさか単なる前編に過ぎないのか? この作者ならばまた期待に応えてくれるに違いない。楽しみにゆっくり待ちたい。


21.8.24
評価:★★★★ 8



でぃすぺる
     


~あらすじ~
小学六年生のユースケ、サツキ、ミナは掲示係になり壁新聞で町に伝わる七不思議を特集。
サツキの従姉のマリ姉は七不思議のメモを遺して殺されており、真相を探るためサツキは推理から、オカルト好きのユースケは怪異から事件を追い、ミナは中立の立場で裁定を下す

2023年文春10位

~感想~
自分が無類のオカルト好きで、男1人女2人の編成も「夕闇通り探検隊」を思い出させたこともありめっぽう面白かった。
作者はデビュー作の「屍人荘の殺人」から続くシリーズでも本格ミステリと怪異を融合させており、いわばお家芸のような設定で、安定感は抜群。
七不思議一つ一つが怪談として良く出来ており、しかも本格ミステリ的な仕掛けが施されている。
ユースケのオカルト目線とサツキの現実目線がせめぎ合い、真相がどちらに転ぶか最後まで迷わせようと試みるが、到底現実に落とし込めないような怪異が連発されるのが玉に瑕で、
このあたり作者がミステリ作家で読者もほとんどがミステリファンだろうから「どうせミステリ的解釈ができるんでしょ?」という思い込みに依存して、現実目線が常に劣勢を強いられているのは確か。
とはいえ最終的にオカルトと現実のどちらに落ち着くかはもちろん言わないが、個人的には本格ミステリと怪異の融合としてバランス良い、しかし大胆極まりない真相に非常に満足した。
好事家(笑)の間では中途半端とか失敗作とささやかれ、自分も重度のオカルト好きのためだいぶ採点が甘くなったとは自覚しているし、たぶん年間ランキングでもそう上位には行かないと思うが、事前の期待値は優に超えてくれた偏愛したくなる良作だった。


23.11.26
評価:★★★★ 8



明智恭介の奔走
     


~あらすじ~
もう一人の泥棒に襲われたと主張する泥棒。オンボロビルを高値で買い取った謎の男。二日酔いから目覚めると密室の自宅で引き裂かれていた自分の下着。全く無意味だが不可能状況の試験問題漏洩事件。一見無差別にばらまかれるストーカーの手紙。
それは「屍人荘の殺人」で剣崎比留子に出会う前、葉村譲と明智恭介の事件。

2024年このミス13位、文春7位

~感想~
ドラマ原作の「ネメシス」は未読だが、短編でもその切れ味は健在どころかますます研ぎ澄まされ、たった一冊で短編ミステリの名手であることも証明してみせた。
冒頭の「最初でも最後でもない事件」からロジックとストーリー展開の上手さはもちろんのこと、「屍人荘の殺人」では尺と物語の都合でそこまで顕著ではなかった明智恭介のポンコツさが全開で、迷探偵ものとしても読めてしまう懐の広さをいきなり見せつける。

続く「とある日常の謎について」が個人的には白眉で、まさかやり尽くされたと思われたアレがこんな形で現れるとは夢にも思わなかった。アレに挑んだ作家は山ほどいるがこの切り口でやってのけるとは! ミステリマニア垂涎にして必読である。

「泥酔肌着引き裂き事件」はミステリ名物といえばそれまでだがあまりにも都合よくピンポイントで重大な手掛かりを忘れているのはともかくとして、話自体は面白く、「宗教学試験問題漏洩事件」は二転三転しつつひょっこり思いも寄らない大仕掛けが飛び出してくるのが楽しい。

そして末尾の書き下ろし「手紙ばら撒きハイツ事件」は時系列では最も古い、葉村と出会う前の話でちょっとごちゃつきすぎた感はあるものの、前日譚としてはこの上ない仕上がりで、掉尾を飾るに相応しかった。

「屍人荘の殺人」以降のネタバレは無いので、ここから読んでも大丈夫のシリーズ入門編だが、凝った仕掛けや趣向からやはりミステリマニアこそぜひ読んで欲しい一冊である。


24.7.9
評価:★★★★ 8



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成



未作成
       


未作成

目次へ