岡嶋 二人


焦茶色のパステル
 


~あらすじ~
競馬評論家の夫が二頭の馬、そして牧場長とともに射殺された。
妻の大友香苗は離婚寸前だった夫の足跡を友人の綾部芙美子とともに追う。
夫は射殺された焦茶色の毛並みを持つ仔馬・パステルの売買に疑問を抱き「これ本当にパステルか?」という謎めいた言葉を残していた。

82年江戸川乱歩賞、文春1位、東西ベスト(85年版)61位

~感想~
後に数々の競馬ミステリをものすことになる岡嶋二人のデビュー作。
競馬に疎い主人公を通し、競馬初心者の読者にも無理なく知識を与えていく設定や、射殺事件・仔馬の売買・大学講師殺害と数々の謎を一本にまとめていく展開は実にそつなく、凡百のデビュー作の域を超えている。
特筆すべきは、競馬ミステリを書くにあたって無くてはならない「競馬を題材にした理由」に素晴らしい「動機」を用意してみせたこと。なるほどこの動機ならばこれだけの事件が起こってもおかしくなく、競馬を題材にしたことも納得至極である。
それだけではなく正体の見えない黒幕に挑む鋭い推理、終盤の活劇的な展開にどんでん返し、シリーズ作品の主役を張ってもおかしくない魅力あふれる探偵役と、何拍子も揃った良作だった。

また2時間ドラマ化された際のタイトルが、いかにも2時間ドラマらしくストレートかつネタバレも甚だしい代物なので、読了後に調べることをおすすめする。


15.2.10
評価:★★★☆ 7



七年目の脅迫状
     


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あした天気にしておくれ
     


~あらすじ~
3億2千万円で落札された期待の若駒セシアが、デビュー前に再起不能の骨折をした。
管理する鞍峰牧場は骨折の隠蔽をもくろみ、セシアの狂言誘拐を企てる。

83年文春3位、江戸川乱歩賞・候補、吉川英治文学新人賞・候補、本格ベスト91位


~感想~
エイシンサンディのように良血なら未出走でも種牡馬にしてある程度の投資は回収できるのでは…と競馬ファンなら思うところだが、本作の刊行はエイシンサンディがまだ産まれてもいない1983年で、狂言誘拐を企てた中心人物もあるいは窓際に追いやられていたり、あるいは資金面で苦心していたりと、犯行に踏み切らざるをえない事情があり、さほど無理は感じない。
そしてすでに設定の段階で面白い物語が、中盤から思いもよらない展開を見せ、倒叙形式でありながら謎解きの妙も味わえるという凝った構成で、誘拐に関するあるトリックも「競馬ミステリ」にふさわしい意外性あるもので、なんとも言えない結末まで気を抜かせない。
誘拐・競馬・倒叙と様々な要素が絶妙にかみ合った良作である。

ここからは余談だが、本作は江戸川乱歩賞の最終候補に残るも「トリックが実現不可能で前例もある」ことを理由に落選したという。
作者は文庫版のあとがきで反論しており、まず「トリックが実現不可能」なのは(乱歩賞の選考をした)現時点でのことで、作品の時代に設定した1981年には可能だったという。そもそも「現時点で不可能」が認められないなら全てのSFミステリや捕物帖が存在し得ないではないか。
また「トリックに前例もある」には「競馬の外の社会で頻繁に行われていることからの応用」で「この小説のトリックを思いつくための入口は、あちらこちらにゴロゴロしている」と皮肉交じりに反論しており、これだけの良作を難癖としか思えない理由で落とすとは(後に落選させながらも刊行してくれたとはいえ)新人賞の選考というものを有望株を潰すための場だと勘違いしている輩は80年代の昔からはびこっていたのだなあと思わずにはいられない。


14.11.23
評価:★★★☆ 7



タイトルマッチ
     


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開けっぱなしの密室
     


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どんなに上手に隠れても
     


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三度目ならばABC
   


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チョコレートゲーム
   


~あらすじ~
小説家の近内泰洋は息子の省吾が学校に行っておらず、家の金を持ち出し、さらに全身にアザを作っていると知る。
そして省吾が夜遅く帰宅した日、同級生が何者かによって殺されていた。
登校拒否の息子は同級生の死に関わっているのか? 息子たちが絡んでいたチョコレートゲームとは?

86年日本推理作家協会賞、85年文春6位


~感想~
読んでいて歌野晶午の某作を思い出さずにはいられないストーリー展開で、まるで後日談(というか本編)のよう。
正直言ってトリックは古臭く、事件の背景も作中では「まさか中学生がこんなことを」と驚かれるものの、昨今のネット時代により次々と発掘された、過去の過激な少年犯罪と比べると明らかに小粒で、意外性は感じない。
また余談になるが、息子の素行を心配した父親がふらっと教室に入っていき生徒をつかまえては「私は省吾の父だ」と名乗って聞き込みするところなど、現在ではたとえ保護者だろうと不審者扱いの通報待ったなしだろうなと時代を感じずにはいられない。

しかし本作の最大の長所は無駄を省いた必要最低限の描写による圧倒的なスピード感にあり、とにかく展開が早く、父の疑念から始まり、事態が急展開を迎えるまではもちろん、再出発から決着そして後日談まで簡素に描かれ、筆が衰えることはない。
それでいて父の悲哀や悔恨の念も必要かつ十分に描写され、やれ心情がどうしたのやれ風景がどうしたのと無駄に長大化した作品とは一線を画している。まだ3作しか読んでいないが、このあたりが岡嶋二人の美点なのだろう。

なおどうでもいい話だが、いつもブログ記事には読了した判型の表紙を使用しているが、初出文庫版の表紙は激しくネタバレしているので、今回は新装版の画像を使用したことを付記しておく。


14.10.1
評価:★★★ 6



なんでも屋大蔵でございます
     


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解決まではあと6人
5W1H殺人事件 改題
     


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とってもカルディア
     


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ちょっと探偵してみませんか
     


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ビッグゲーム
     


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コンピュータの熱い罠
   


~あらすじ~
結婚相談システムの「エヌ・システム」を管理する夏村絵里子は、登録者の中に恋人の名前を見つける。独身男性の全員が登録させられただけと釈明されるが、データは不自然なほど詳細に記録されていた。
そしてデータの閲覧を求めた女性が不審死を遂げ、絵里子は巨大な陰謀の影を感じ取る。

86年文春9位


~感想~
発端の謎と徐々に明らかになっていく不可解な情報は非常に魅力的。
だがさすがに日進月歩のコンピュータ業界を題材にしたのはネックで、隠された陰謀は今日的に見れば「GoogleやBaidu、なんならTカード規約のほうがよっぽど悪質」で、現代人からはたいした問題に思えなくなっている。
また犯行経緯も、明かされてみれば予想以上にそのまんまなもので、某国政府からの抗議がなかったのが不思議なくらい豪快ではあるが、驚きはなかった。
古臭いと責めるよりも、単純に読むのが20年遅かったこちらが悪いと言うべきだろう。


14.11.26
評価:★★☆ 5



七日間の身代金
   


~あらすじ~
富豪の未亡人の鳥羽須磨子。友人である彼女から弟と義理の息子を誘拐されたと相談された千秋は、恋人の要之介とともに、身代金を手に車を走らせる須磨子の後を追う。
千秋は警察署長である父に助けを求め、身代金の受け渡し現場を包囲するが、密室状態の小島から犯人と身代金が姿を消してしまう。


~感想~
「人さらいの岡嶋二人」の異名を持つ作者による誘拐ミステリ。だが中盤からは誘拐物のジャンルから離れ、奇妙な密室と人物消失、そして鉄壁のアリバイ崩しに重点が移るという構成が光る。
2つの密室はわりと力任せに解かれるものの、事件の周囲で相次いだ不可解な人物消失や無数の手掛かりが最終的に一つにつながっていき、合間に探偵コンビの恋愛模様が描かれ、最後は犯人の鬼気迫るマシンガントークで背景が余さず語られる、と実に無駄のない作品。
密室のあっけなさは少々物足りなかったが、岡嶋二人の長所と魅力を凝縮させたような秀作である。


16.5.17
評価:★★★ 6



珊瑚色ラプソディ
   


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殺人者志願
     


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ダブルダウン
   


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そして扉が閉ざされた
   


~あらすじ~
あの日、崖から車とともに転落した彼女は誰かに殺されたのか?
彼女の母親によって密室に閉じ込められた四人の男女は、極限状況下で推理を強いられる。
はたして彼女の死は自殺か、他殺か、この中に犯人はいるのか?

88年このミス6位、本格ベスト72位

~感想~
容疑者はたったの4人。事件はすでに終結しておりこれ以上の発展はなく、密室に閉じ込められ新たな手掛かりの入手も困難。
推理を進めようにも突然のサバイバルを強いられた4人の関係はぎくしゃくし、そもそも真相を導き出せば脱出できるという確証すら無くモチベーションも上がらない。
そんな事件的にも物語的にも八方塞がりの、いわゆる縛りのきつい設定ながら、きっちり意外な真相に意外な犯人を用意してみせたのは――まだ読むのは二作目ながら――さすが岡嶋二人といったところ。
いささか類型的なキャラ付けや「一目惚れし合いました」以外に言いようのない男女仲、各人が発揮する古武士ばりの謎の自己犠牲精神などは単純に古臭いものながら、似たような状況下のミステリは2014年現在、他にも多々あるものの(矢野…龍王? 左90度に黒の…くっ…頭が痛い…)1988年刊行の本作に匹敵する完成度の作品はそうはないだろう。


14.9.2
評価:★★★ 6



眠れぬ夜の殺人
     


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殺人!ザ・東京ドーム
     


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99%の誘拐
   


~あらすじ~
誘拐された息子の身代金は五千万。それは会社を立て直すために必要な金額と一致していた。
犯人に振り回され、幕を閉じた事件から12年後、新たな誘拐事件の幕が開く。
コンピュータによって全てが制御される、前代未聞の完全犯罪だった。

吉川英治文学新人賞、本格ベスト28位、文春8位


~感想~
岡嶋二人を初体験。発刊当時の1988年とは隔世の感もある日進月歩のコンピューターを題材に、いまだWWWは影も形もない(影くらいはあったか)、チャットという言葉にすら事細かな説明が必要だった頃の作品でありながら、2014年の今なお斬新さを失っていないのはお見事。当時の状況から言えばほとんどSFミステリさながらの設定であったろう。
物語自体も最初の誘拐事件は当事者の手記で語られ、事件中、事件後の捜査の過程が付記されるかたちで、煩雑さを慎重に排してうまくまとめられており、後半の誘拐事件はリアルタイムで進み、息つく暇もないスピード感あふれるもので、とにかく構成の巧みさが光る。
惜しむらくは倒叙ミステリ形式で犯人も犯行手段も最初から明かされており、事件が終わっても残された謎はほぼ皆無で、どうでもいいような補足が付けられて幕引きとなるのは少々あっけないものの、事件の過程それ自体が非常に面白いため不満はあまり感じない。今後も岡嶋二人の作品を読まなければと思わせるに十分な良作だった。

まったくの余談だが講談社文庫版の西澤保彦の解説は、いかにも氏らしい、作者本人の言葉をガン無視して妄想を炸裂させる平常運行で、ある意味こちらも必読である。


14.5.27
評価:★★★☆ 7



クリスマス・イヴ
     


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記録された殺人
     


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眠れぬ夜の報復
     


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クラインの壺
   


~あらすじ~
上杉彰彦が大学時代に書いた冒険小説を原作にした画期的なゲームマシン「クラインの壺」。
彰彦は原作者としてテストプレイに参加し、現実と区別がつかないほどの仮想空間に魅了される。
だが「引き返せ」という謎の声が彰彦の耳にだけ届き、やがて現実にも暗い影を落とし始める。

1989年このミス5位、文春7位、本格ベスト29位


~感想~
まず1989年の刊行当時には「20~30年後には実現しているかもしれない近未来の技術」だったのが、2017年現在から見ると「30年後でも無理そうなSF」になっており、リアルタイムで読んでいた人とは相当捉え方が違ってくるのだろうなと思った。
ゲーマーの端くれとしてPSVRがやっとこの現状を見るにつけ、昨今の技術の進歩は目覚ましいが、よほど革命的な発展でもない限りは本作で描かれたレベルの仮想現実が自分の生きている間に誕生するとは思えない。はたして22世紀でもどうだろうか?
お金の話をすると「ウィッチャー3」の百倍綺麗なグラフィックで、百倍の自由度があり、音声認識でしかも五感に働きかけるゲームなど少なく見積もっても「ウィッチャー3」の一万倍の開発費が必要なことは疑いない。(※ウィッチャー3の開発費は宣伝費を含めず40億円。その一万倍は40兆円。ロシアの国家予算が35兆円)
「ウィッチャー3」自体が不世出の可能性すらある化け物ゲームなのに、それがファミコンでドラクエⅢが発売されていた時代に開発されていた、とする設定はあまりにも無理がありすぎて、なまじ現実に根ざした話だけにSFを通り越し絵空事のように感じてしまった。

物語自体は素晴らしい引きで始まる冒頭から、不穏な気配の漂う展開へ流れていき最後まで読ませるものだが、「クラインの壺」を題材にし、この設定で描いた時点で予想していた物語から一歩も出ないもので、正直言って全く好みではない。
この作品を最後に岡嶋二人は解散し、片割れの徳山諄一は本作について(※超ネタバレ→)
「いわゆる夢オチではないか」という身も蓋もない発言をしているそうだが、自分もそれに完全同意である。

ミステリとして見れば評価できる点はほとんど無く、刊行当時はまだしも現在では物語も結末も一切の裏切りのない、極端に言えば平板なものながら、岡嶋二人ほどの作者に今さら言うまでもなく読ませる力は十分であり、読んで損することは一切ないだろう。


17.7.16
評価:★★★ 6



ダブル・プロット
     


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