今野 敏


隠蔽捜査
   


~あらすじ~
連続殺人は序章にすぎなかった。
警察庁長官官房でマスコミ対策を担う竜崎伸也。その朴念仁ぶりに、周囲は〈変人〉という称号を与えた。だが彼はこう考えていた。エリートは、国家を守るため、身を捧げるべきだ。私はそれに従って生きているにすぎない、と。
吉川英治文学新人賞受賞作。


~感想~
こんなに典型的な、にもかかわらず魅力的な官僚がかつていただろうか。
このミス20位にランクインしているが、ミステリ的な要素はほぼ皆無。
起こる事件に謎はなく、主人公の竜崎は事務方だけに、捜査にたずさわることもない。だが物語はその事件を中心に動き、その時々で竜崎に迫られる決断が読む者を引きつけてやまない。
だが構成やストーリーの行方もさることながら、この小説の真の魅力は竜崎という特異な人物の造型にあり、彼の一本芯の通った、だがそれゆえに奇抜な言動や、選択の数々が、非常に面白いのだ。
そういった意味では今作は純然たるキャラ小説であり、どこまでも官僚的で、いついかなる時も正論を放ち、それがしかも本音とリンクしている竜崎というキャラを産み出した時点で、大成功を収めたと言えるだろう。


09.6.4
評価:★★★☆ 7



果断 隠蔽捜査2
     


~あらすじ~
大森署の署長へ異動となった竜崎伸也警視長は、着任早々に重大事件に直面する。
容疑者は拳銃を所持し、現場ではSITとSATが対立する。竜崎は自ら指揮を執り、この事案は解決したはずだったが……。

07年日本推理作家協会賞、山本周五郎賞、このミス4位、文春9位


~感想~
前作ではマスコミ対策を手掛けた竜崎が、本作では署長に就任。署長が主人公というだけでも物珍しいのに、主人公はあの竜崎なのだ。これは面白くならないはずがない。
竜崎の完全無欠に正論ながらそれゆえにかえって奇抜に響く言動を追っているだけでも実に痛快で楽しく、それに加えて日本推理作家協会賞にふさわしい、解決したはずの事件が反転する構成や、意外な人物による些細な気付きも見事で、物語としてもミステリとしても万全の構え。
はじめの事件は竜崎が自ら前線に出ているため丹念に描かれるが、事件の様相の反転から始まる捜査のほうは、なにぶん竜崎が署長室に座ったまま動かないため、ひどくあっさりとしか触れられないのだが、文量の余計な長大化を防げてもいるし、話の肝は構図が反転すること自体にあるので気にはならない。
前作「隠蔽捜査」を確実に上回る良作である。

それにしてもドラマ版は未見なのだが(杉本哲太も古田新太もイメージと違いすぎるんだよなあ…。竜崎はもっと見るからにエリート然とした役者が良かった。それこそ柳葉敏郎とか)竜崎というキャラの面白さは心理描写あってこそのものだと思うが、そのあたりはどう処理していたのだろうかと今更ながらに思ってみたり。


15.1.8
評価:★★★★ 8



疑心 隠蔽捜査3
     


~あらすじ~
アメリカ大統領の来日に際し、大森署署長の竜崎伸也が方面警備本部長に任命された。
異例の抜擢の裏には竜崎を陥れる罠が?
米シークレットサービスはテロリストの存在を指摘し、さらに竜崎は派遣されてきたキャリアの畠山美奈子に人生初の恋心を抱いてしまう。


~感想~
竜崎の年甲斐もない初恋(?)にお手軽に事件を絡めて一冊ものした感が強い。
まるで童貞小説のようにうじうじと恋に悩む竜崎が延々と描かれ、これまでのシリーズで築き上げた竜崎の魅力やキャラの面白さが完全に死んでいる。
おっさんが若い娘に夢中になる話は古今東西よくあるが、男性視点から見ると、逆転しておばはんが若い男に夢中になる話は端的に言ってすげえムカつくのだから、女性から見れば噴飯物だろう。ぜひ諸作家方にはきっぱりと辞めていただきたいものだ。

前作で某アニメをきっかけにしたように、いかにも竜崎らしい訳のわからない立ち直り方を経てからはいつもの調子を取り戻すものの、脇に置かれた事件の行方はものすごくご都合主義かつお手軽に点が線につながり解決してしまい、作者としては初恋譚のほうを描きたかったのだろうと見受けられる。
畠山の再登場は許すが、次回はいつもの竜崎を見たいものだ。


15.6.8
評価:★★☆ 5



初陣 隠蔽捜査3.5
     


~あらすじと感想~
伊丹俊太郎を主人公にしたスピンオフ作品。
隠蔽捜査シリーズの1~4の前後の出来事が時系列に沿って描かれ、事件が全く起こらない、他作品の裏を描いた短編も見受けられる。
位置づけとしてはファン向けのサービス作品で、シリーズを読破していなければ十全には楽しめないだろう。
逆に言えばファンなら、普段は語り手を務める竜崎伸也を他者の視点から見られるという垂涎の内容で、客観的に描写される竜崎の異端ぶりはやはり面白い。
いくつかの短編では伊丹からの電話だけで難題を立ちどころに解決してしまう、安楽椅子ならぬ電話探偵を披露し、推理を働かせるものもあるが、基本的には竜崎らしい原理原則を口にしているだけなのに、伊丹を悩ませていた難問が消え去ってしまうのもお見事。

あくまでシリーズファン向けではあるが、短編の名手だという作者の手腕が存分に発揮された好作品集である。


15.11.1
評価:★★★ 6



転迷 隠蔽捜査4
     


~あらすじ~
第2方面本部でひき逃げ、放火、殺人の3つの事件が発生。竜崎伸也が署長を務める大森署も対処を迫られる中、ひき逃げに故意の可能性が高まり、殺人事件として大森署に捜査本部が置かれた。
そのうえ麻薬取締官が署員と衝突し、竜崎に直談判を求め、竜崎の娘の恋人が海外で航空機事故に巻き込まれる。

11年このミス14位、文春10位


~感想~
大小いくつもの事件が続け様に起こり錯綜を深める中、キャリアが階級を振りかざし、所轄と上が衝突するが、原理原則の正論で竜崎がそれらをまとめてぶった斬るいつもの隠蔽捜査シリーズ。
前作では女キャリアにときめいてフラフラしていた竜崎だが、今回は徹頭徹尾いつもの竜崎で、判子押しを続けながら小気味よく相手を論破し、もつれた事件を解きほぐしていく。
期待通りに全ての事件は微妙に連関していき、各方面から竜崎も認められていくのだが、物語の展開こそ最後まで意外なつながりを見せ続けるものの、結末は予測の外を出ない所に落ち着き、真相に驚くことはないだろう。
とはいえこのシリーズは竜崎の言動や彼を取り巻く環境の変化などが読みどころであり、ミステリ的なサプライズを期待するのはお門違い。
安定感あるシリーズの安定感ある続編である。

また文庫版の千街晶之氏の解説は、これまでのシリーズの竜崎の言動からその心境の変化を拾い集めており、記憶力の悪い読者には大変助かった。


15.11.3
評価:★★★ 6



宰領 隠蔽捜査5
       


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自覚 隠蔽捜査5.5
       


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去就 隠蔽捜査6
       


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棲月 隠蔽捜査7
       


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清明 隠蔽捜査8
       


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探花 隠蔽捜査9
       


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審議官 隠蔽捜査9.5
       


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一夜 隠蔽捜査10
       


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蓬莱


~あらすじ~
スーパーファミコンへの移植が決まったシミュレーションゲーム「蓬莱」。
ゲーム会社社長の渡瀬はヤクザに販売を撤回するよう迫られる。さらにプログラマーが不審死を遂げ、渡瀬は関与を疑う。
なぜ極道がゲームの販売を止めようとするのか? その裏には思わぬ真実が潜んでいた。

1994年このミス18位

~感想~
オリジナルゲーム「蓬莱」は要するに「シヴィライゼーション」でこれが独自のアイデアならばすごいが、「シヴィライゼーション」は日本でも本作の2年前に発売されており、アイデアを借りた可能性は残る。
明らかにスーファミの性能を超えているのはフィクションだから構わないし、その隠された謎は思いも寄らない方向へ広がっていき、さらに作者の別シリーズの主人公の安積警部補が探偵役として登場するなどエンタメ性は十分。
とどめとばかりに一般サラリーマンの語り手とヤクザによる血まみれのタイマンバトルが15ページに渡って繰り広げられるのもとにかく読者を楽しませようという気概が感じられて良かった。
さすがほぼ昭和ミステリ、ヤクザに殴られた報復はヤクザを殴ってやり返さなくては!


25.6.7
評価:★★★ 6



同期
       


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