島田 荘司


占星術殺人事件
 


~あらすじ~
ある画家の遺書に残された奇怪な記述。
「6人の処女から肉体各部をとり、新しい人体を合成する」
そして1カ月後、6人の若い女性が行方不明のあげくバラバラ死体となって各地で発見され……。

1980年江戸川乱歩賞候補、東西ベスト(1985)21位、東西ベスト(2012)3位、本格ベスト3位

~感想~
新本格派の父・島田荘司のデビュー作にして史上に残る傑作……だが僕はまったく楽しめなかった。
某「じっちゃんの名にかけて!」少年のせいである。アレを読んでいない方なら間違いなく面白いはずです。
読んでしまった方も、まだどこか初々しい御手洗&石岡のかけあいは楽しめるはず。
特に御手洗の「まだらの紐」話は最高。


評価:評価不能



斜め屋敷の犯罪
 


~あらすじ~
北海道の最北端、宗谷岬に斜めに傾いて建つ館。
この奇妙な「斜め屋敷」で、主がクリスマス・パーティを開いた夜、奇怪な密室殺人が起きる。
招かれた人々が恐れおののくなか、次の惨劇が……。

東西ベスト(1985)42位、東西ベスト(2012)21位、本格ベスト30位

~感想~
ミステリ史上屈指の物理トリックが炸裂する大傑作。惜しむらくは御手洗の登場が遅すぎること。
その場にいればたちどころに解決してしまうから、しかたないのだが、主役の登場までちょっと中だるみぎみ。
とはいえまさに「奇想」の初期島田長編らしいミステリ。強くオススメです。


評価:★★★★ 8



死者が飲む水
死体が飲んだ水 改題
 
     


未作成



寝台特急はやぶさ1/60秒の壁
   


~あらすじ~
双眼鏡でのぞきをしていた男が、マンションの浴室で、顔の皮をはがされた女の死体を発見した。
だが、死亡推定時刻に、彼女は寝台特急「はやぶさ」に乗っていた。
不可能犯罪に挑む捜査一課の吉敷竹史の前に、第二第三の事件が。


~感想~
ただの時刻表トリックには終わらず、奇想と本格味がふんだんに盛り込まれている。
まるで怪談のような謎が鮮やかに解かれ、さらに二転三転……。見事。


99.1.27
評価:★★★☆ 7



嘘でもいいから殺人事件
   


~あらすじ~
テレビ業界にその名を知られるやらせの天才ディレクター・軽石三太郎。
彼の考えたむちゃくちゃなやらせ番組を撮影するため、無人島へと乗り込んだスタッフ一同。
そこで彼らを待ち受けていたのは、殺人事件と死体消失だった。


~感想~
息抜きのように書かれた作品。
肩の力が抜けきっていて、読む側も気軽だが、ユーモアセンスは期待するほどでは……。


評価:★☆ 3



出雲伝説7/8の殺人
   


~あらすじ~
山陰地方を走る六つの駅にバラバラ死体が流れ着いた。
捜査の結果、殺された女は、死亡推定時刻に「出雲1号」の個室に乗車していたというが……。


~感想~
氏にしては本格臭は薄い。トラベルミステリ寄りで、トリックこそ面白くないが、展開・罠などその他もろもろはさすがの冴え。これで(ネタバレ→)
フーダニットであればなおさらよかったのだが。


00.5.24
評価:★★★ 6



漱石と倫敦ミイラ殺人事件


~あらすじ~
英国に滞在する夏目漱石は、シェイクスピアの勉強のため、ベイカー街へ通っていた。
夜な夜な幽霊の声に悩まされた彼はホームズのもとを訪れる。
そのころホームズは呪いをかけられた男が一夜にしてミイラになった事件の謎を追っていて……。

1984年文春3位、直木賞候補、日本推理作家協会賞候補、吉川英治文学新人賞候補

~感想~
パロディ小説の最高峰。漱石の視点とワトスンの手記とのギャップが秀逸。
奇想の見本ともいえる面妖な事件にスラップスティック、史実をふまえた漱石の足取り、
ホームズ譚の真実(?)と、どこをとっても最高の出来。どうか外見に惑わされぬよう。これは名作!


99.4.9
評価:★★★★ 8



北の夕鶴2/3の殺人
 


~あらすじ~
吉敷のもとへ五年ぶりに、別れた妻・通子からかかってきた電話。
ただならぬ気配を感じた吉敷は通子を追って上野駅へ向かう。
翌日、青森署からの捜査協力依頼は、上野発「ゆうづる9号」で死んだ女の身もとを洗うことだった。
なんと死んだ女の服装は、昨夜見送った通子とまったく同じで……。

1985年文春4位、東西ベスト(1985)98位、本格ベスト23位

~感想~
奇想。それも極上の奇想。
前2作でキャラの薄かった吉敷に血が通い、このシリーズも魅力的なものへと昇華された。
歩き回る鎧武者の謎がこれ以上ないくらい華麗に解明される様など、御手洗ものを越える興奮。


評価:★★★★ 8



高山殺人行1/2の女
   


~あらすじ~
「女房を殺してしまった」愛人に電話で告白された女。
彼のアリバイを偽装工作するため、被害者に変装して、
東京から高山までの道のりを単独でドライブすることに……。
しかし、奇妙な男の尾行、謎の脅迫状など不可解なトラブルが次々と彼女を襲う。


~感想~
テンポ良く、引きつけてやまない文章。不可能興味にあふれた奇想も見事。
多少真相はあっけなく、読後に不満は残るが……。
こんな枝葉末節(失礼)みたいな作品でも手を抜かず、改訂までするとはさすがにさすが。


00.12.17
評価:★★☆ 5



殺人ダイヤルを捜せ
   


~あらすじ~
商社に勤める綾子には秘密の趣味がある。
今夜も期待に震えてダイヤルを回した彼女の鼓膜に響く悲痛な叫び。
張りめぐらされた意外な罠とは?


~感想~
長編の分、切れ味を欠いた都市ミステリといったところ。トリックは解ってみれば「な~んだ」という仕掛け。
そつなくまとまっているし、これ以上縮められはしないのだろうが……。ううむ。


03.4.27
評価:★★ 4



消える「水晶特急」
   


~あらすじ~
全面ガラス張りの豪華展望車「水晶特急」が出発した。
だが出発直後、列車は乗っ取られ、人質を乗せたまま突然かき消えてしまい……。


~感想~
これまた奇想。時刻表ものかと思わせてその実……。
一部で有名な吉敷の(ネタバレ→)女装 まで見られるサービス満点の一作。


00.3.2
評価:★★★ 6



確率2/2の死
   


~あらすじ~
プロ野球選手の子供が誘拐された。身代金は一千万円。
犯人の指示で電話から電話へと走り回る吉敷。
だが、6度目の電話を最後に、犯人は突然、身代金を放棄し子供を解放。
はたして犯人の目的とはなんだったのか?


~感想~
テレビドラマ(ネタバレ?→)
「あぶない刑事」を思い出す方もいるだろう。まさかこれが元ネタなのだろうか?
設定はともかく、氏にしては淡泊な、奇想・不可能興味ともに薄い作品。展開もやや冗漫にすぎるきらいも……。


00.12.20
評価:★★☆ 5



サテンのマーメイド
   


~あらすじ~
アメリカ西海岸で探偵をする「わたし」のもとに、
雨の夜、サテンのドレスをまとった女が依頼に現れた。
フェラーリを駆って自分を12時までにサウスポイントまで運んでほしいと言うのだが……。
人魚の化身のような謎めいた女と無償の追跡を続ける男。はたして彼女の真意は?


~感想~
1つもハードボイルド読んだことないのに「ハードボイルドだなあ~」と思わせるハードボイルドっぷり。
しかし(解りやすいトリックだが)ミステリ根性は決して忘れない。実に島田荘司らしい良作。
ハードボイルドに嫌悪感を持たない方なら楽しめるはず。ハードボイルド言い過ぎ。


04.8.20
評価:★★★☆ 7



夏、19歳の肖像
 


~あらすじ~
19歳の夏、オートバイ事故で入院した「私」は、病室の窓から1つの家を見ていた。
その家に住む女性に恋心を抱く私。だがある雨の夜、彼女が男を殺そうとする光景を目撃してしまい……。

1985年文春10位、直木賞候補

~感想~
直木賞候補作。落選は残念だが、獲っていたら獲っていたで「やっぱり傑作が受賞することはないな~」と思ったろうから、ある意味これで良かった。青春ミステリのていだが、「ミステリ」というほどの趣向はこらされていず、ファンにはやや不満。退屈はしないが、もっと意外な決着を望んでいた。


04.8.5
評価:★★★ 6



火刑都市
 


~あらすじ~
雑居ビルで男の焼死体が発見された。
自殺とも他殺ともつかぬ中、彼のアパートから婚約書の痕跡が消えていたことを突き止める。
残されていたのは「寒子」と書かれた紙きれ。
しかし、苦心の末に会った女には完全なアリバイがあった。失意もさめぬうちに、第2の事件が起こる。

1986年文春5位

~感想~
解説にも断言されているとおり、あからさまな社会派ミステリ。
ゆえに、後手後手に回る鈍い捜査には焦れる。ちと長すぎか。


02.9.24
評価:★★☆ 5



消える上海レディ
     


~あらすじ~
チャイナドレスとつば広の帽子、青いパンプスで着飾った謎の「上海レディ」。
彼女は取材で神戸~上海を結ぶ「鑑真号」に乗ることになった女性誌記者を
出航前から執拗につけねらっていた。密室と化した船内で連続して起こる兇行。
「上海レディ」の正体とは?


~感想~
全体的に整理されていない印象を受ける、混雑した作品。
これで新装版なら元はどうなっちゃってたんだろうと失礼な考えも浮かぶ。まあ、面白いんですけど。


00.12.22
評価:★★☆ 5



Yの構図
   


~あらすじ~
上野駅地下の新幹線ホーム。
終着ホームにすべりこんできた上越新幹線から服毒自殺をはかった女性の死体が発見された。
その反対側のホームに4分の間をおいて到着した東北新幹線の車内からは男性の死体が発見される。
死因はともに青酸カリ。心中と見られたこの事件を、しかし吉敷は他殺とにらみ……。


~感想~
仕掛けといい解決といい釈然としない。中盤以降の展開は氏らしくないとすら思えて……。いまいち。


02.12.19
評価:★★☆ 5



網走発遙かなり
 


~収録作品~
丘の上
化石の街
乱歩の幻影
網走発遙かなり

1987年文春9位、本格ベスト82位

~感想~
現在のところ著者唯一の連作短編集。

『丘の上』
解ってみればなんということもない真相。それでこれだけの怪奇味を見せる手腕。

『化石の街』
複雑な細工ながら非常に解りやすく描かれるさすがの力量。

『乱歩の幻影』
おお、奇想だ。どこまでが創作かまったく解らない造型に脱帽。

『網走発遙かなり』
魅力的な謎が案外あっけなくまとまってしまう。


~総括~
連作ではあるが、大仕掛けではない。もちろん読んで損はしないが、読後感はやや物足りないか。


03.5.1
評価:★★☆ 5



展望塔の殺人
   


~収録作品~
緑色の死
都市の声
発狂する重役
展望塔の殺人
死聴率
D坂の密室殺人


~感想~
『緑色の死』
トリックは陳腐(失礼)だが設定のおぞましさが光る。

『都市の声』
無理はあるがこんな話に整合性をよくぞ付けた。

『発狂する重役』
氏のベスト短編? 2人の出会いも見逃せない。

『展望塔の殺人』
モダンホラー。霊だの超能力だの抜きでも怪談は書ける。

『死聴率』
現実の事件をなぞったおそるべき短編。

『D坂の密室殺人』
あのD坂を島田荘司が描くと……。


~総括~
ミステリというよりも社会派怪談集。余分に「いやらしい」描写が多々あるのが減点も、傑作ぞろいの名短編集。


99.6.23
評価:★★★☆ 7



御手洗潔の挨拶
   


~収録作品~
数字錠
疾走する死者
紫電改研究保存会
ギリシャの犬


~感想~
『数字錠』
島田短編屈指の人気作。

『疾走する死者』
どこまでも周到。

『紫電改研究保存会』
よみがえった赤髪連盟。

『ギリシャの犬』
意外な展開、暗号ものの白眉。


~総括~
短編でもいささかもそこなわれない御手洗味。佳品ぞろいの短編集。


評価:★★★☆ 7



ひらけ!勝鬨橋
   


~あらすじ~
老人ホーム「竹の子寮」の住人たちは脳天気な老人ばかり。
そこに地上げ屋が土地を明け渡せと迫ってきた!
チンピラたちとゲートボール勝負をやることになった最中、成金趣味の老人が殺害され、
さらには「勝鬨橋は今でも開く」と口走っていた老人が失踪。
事態は混迷をきわめる中、はたして「竹の子寮」の運命は……?


~感想~
いやあ面白かった。03年度話題の某作品からつづけて読んだので、なおさら感慨深かった。
ジャンル付けするなら「アクション小説」か。これぞエンタテインメントの鑑。島田荘司の裏ベストワン小説。


03.7.31
評価:★★★★★ 10



灰の迷宮
   


~あらすじ~
新宿駅西口でバスが放火され、逃げ出した乗客がタクシーにはねられ死亡した。
被害者は息子の大学受験の付き添いで鹿児島から上京中だった。
だが、被害者の行動には数々の不可解な点が。
そんな中、吉敷は2年前に担当した迷宮入り事件との関連に思い当たり鹿児島へ飛ぶ。


~感想~
次から次へと浮かんでいく謎。灰の街での出会い。あまりに大胆な真相。そして心にしみいる結末と、息もつかせぬ流れるような展開・物語。吉敷シリーズ屈指のえもいわれぬ感慨を抱かせる傑作。


04.7.25
評価:★★★★ 8



切り裂きジャック百年の孤独
 


~あらすじ~
ベルリンを恐怖のどん底へ落とした連続猟奇殺人。
その手口は、19世紀末ロンドンを震撼させた切り裂きジャック事件と酷似していた。
百年の時を隔てた二つの事件の闇がついに解かれる!

1988年このミス15位、文春10位、日本推理作家協会賞候補

~感想~
あの島田荘司が、あの「切り裂きジャック」の謎に挑んだ!
それだけで説明不要。期待は裏切りません。興味のある方はどうぞ一読を。


00.5.12
評価:★★★☆ 7



毒を売る女
 


~収録作品~
毒を売る女
渇いた都市
糸ノコとジグザグ
ガラスケース
バイクの舞姫
土の殺意
ダイエット・コーラ
数字のある風景


~感想~
『毒を売る女』
氏にしてはひねり不足。

『渇いた都市』
なるほどこうやってつながるのか。

『糸ノコとジグザグ』
こんなに疾走感ある暗号物はかつてない。

『ガラスケース』
幻想譚。

『バイクの舞姫』
ふーん。

『土の殺意』
吉敷物じゃなくてもよかったような。

『ダイエット・コーラ』・『数字のある風景』
皮肉の利いた奇譚。


~総括~
ミステリと呼べるのはせいぜい『糸ノコとジグザグ』くらい。だが幻想物が案外楽しめた。


00.8.6
評価:★★★ 6



異邦の騎士
     


~あらすじ~
記憶喪失の男を襲う、失われた過去の記憶。
失意の底に沈んだ彼を救うため、御手洗潔が颯爽と現れる。

1988年このミス5位、日本推理作家協会賞候補、東西ベスト(2012)56位

~感想~
御手洗潔、最初の長編。これも語れば興を削ぐだけなので、とにかくファンは一読を。


評価:★★★★☆ 9



嘘でもいいから誘拐事件
   


~収録作品~
嘘でもいいから誘拐事件
嘘でもいいから温泉ツアー


~感想~
短編になっても印象は変わらず。短いだけになおさら気軽に読める。


03.5.1
評価:★★ 4



夜は千の鈴を鳴らす
   


~あらすじ~
「ナチが見える!」そう叫んで寝台特急の中で死んだ女社長。
吉敷の捜査により事件の背後に恐るべき犯罪の構図が浮かび上がる。
しかし、犯人と思われる人物には鉄壁のアリバイが。はたして「ナチ」の正体とは?


~感想~
細工・描写・展開・奇想……さすがさすがの熟練技法。
珍しく(ネタバレ→)
叙述トリックまで用い、しかも手法は鉄道ものと見せかけて……これまた傑作!


02.9.23
評価:★★★☆ 7



幽体離脱殺人事件
   


~あらすじ~
夫婦岩を結ぶしめ縄に吊された男の死体は、
吉敷が数日前、酒場で知り合った男、小瀬川の名刺を持っていた。
死体の男と小瀬川を結ぶ線とは?
そのころ、小瀬川の妻に呼ばれ、京都を訪れた女を数々の奇怪な事態が襲い……。


~感想~
氏の作品中でも指折りの緻密な細工。しかしそれが面白さにつながっているかというと……。
細かい分、清冽さに欠けた感。終局の展開は必要だったのだろうか?


02.7.2
評価:★★ 4



見えない女
     


~収録作品~
インドネシアの恋唄
見えない女
一人で食事をする女


~感想~
『インドネシアの恋唄』
こんな無名の作品でも全力投球、氏の匂いがそこはかとなく漂う。

『見えない女』
異色作ながらもなぜか既視感に見まわれる。つまり元祖か。

『一人で食事をする女』
解決で全ての謎が割れる造りはさすが。(ネタバレ→)
ただ今日的に見て、壁は過去の遺物と化し、悲哀は薄い。

~総括~
珍しい趣向の3編が並んだひと味違う短編集。


02.11.13
評価:★★☆ 5



奇想、天を動かす
   


~あらすじ~
平成元年。消費税を請求されたのに腹を立て、店の主婦を刺し殺した老人。
彼はなぜか完全黙秘を続ける。
この裏にはなにか大きな闇があると感じた吉敷は捜査に乗り出し、
過去十年間に及ぶ巨大な犯罪の構図を浮かび上がらせる!

1989年このミス3位、文春4位、日本推理作家協会賞候補辞退、東西ベスト(2012)51位

~感想~
本格ミステリと社会派ミステリが最強の融合を果たした、歴史に残る一作。
おそらく現在においてもこれを上回る融合はひとつもあるまい。
惜しむらくは……またしても『金○一少年』w まるっきり同じ内容の作品があるので要注意。
まあ、このトリックを絵として実際に見られるのは結構なのだが……。


評価:★★★★☆ 9



羽衣伝説の記憶
   


~あらすじ~
吉敷はふと入った画廊で作者のない「羽衣伝説」と題された彫金を目にした。
これは、別れた妻・通子の作品では?
前妻への思いをかき立てられた吉敷は、ホステス殺しの真犯人を追いつつ訪れた羽衣伝説の地で、
通子の出生の秘密に行きあたる。


~感想~
短く鋭い佳作。シリーズ中でも重要な位置を占める一作。作品世界をより楽しむためにもお見逃しなく。


01.12.25
評価:★★★ 6



御手洗潔のダンス
 


~収録作品~
山高帽のイカロス
ある騎士の物語
舞踏病
近況報告


~感想~
『山高帽のイカロス』
正面きっての奇想。

『ある騎士の物語』
悲話。

『舞踏病』
さあ御手洗に振り回されよう。

『近況報告』
非小説。文字どおり。


~総括~
いかにも御手洗ものらしい作品がずらり。特に『近況報告』はファン必読。


評価:★★★☆ 7



踊る手なが猿
   


~収録作品~
踊る手なが猿
Y字路
赤と白の殺意
暗闇団子


~感想~
『踊る手なが猿』
冗長に過ぎるきらいはあるが構成は見事。

『Y字路』
短編ながら完璧に近い奇想。10ページ足らずの超短編と錯覚させるほどのキレ。

『赤と白の殺意』
異色の幻想小説。

『暗闇団子』
いわゆるありがちな話ではあるが、展開のうまさで読ませる著者ただ一つの時代小説。


~総括~
他では味わえない、いい意味で氏らしからぬ短編がずらり。短いながらも読み応えは抜群。


99.4.8
評価:★★★☆ 7



都市のトパーズ


未作成



暗闇坂の人喰いの木


~あらすじ~
さらし首の名所、暗闇坂にそそり立つ樹齢2千年の大樹。
この巨木が次々と人間を呑み込んだ? 近づく人間を狂気に駆りたてる妖樹の謎とはいったい?

1990年このミス10位、文春5位、日本推理作家協会賞候補辞退、本格ベスト81位

~感想~
もはや笑うしかない奇想天外トリック。一歩間違えれば「バカミステリ」に分類されかねない大仕掛け。
圧倒的な資料と知識の波で、多少の不合理さなど粉砕し、読む者を思わず納得させてしまう豪腕はさすが。
舞台も海を越え、以降の御手洗シリーズの飛躍へと通じる分水嶺的作品。
レオナ初登場作品としても見逃せない。


評価:★★★ 6



ら抜き言葉殺人事件
   


~あらすじ~
自宅のベランダで首吊り自殺をした女。
彼女はある作家の「ら抜き言葉」を激しく責め立てていた。
現場には不審な点が目立ち、吉敷が疑念を抱く中、その作家の変死体が発見される。


~感想~
これは完全に島田的文化論。代弁か? と思うほどの作中の作家による訴えには圧倒される。身勝手だけど。
正直、結末の逆転がなければ退屈なだけだった。


04.7.27
評価:★☆ 3



水晶のピラミッド
 


~あらすじ~
エジプト・ギザの大ピラミッドを再現したピラミッドで起こる怪事件。
冥府の使者アヌビスが5000年の時を超えて現れ、地上30メートルの密室で男が溺死を遂げる。
壮大なテーマとともに描かれる、数々の溺死が表すものとは?

1991年このミス5位、文春3位、日本推理作家協会賞候補辞退

~感想~
まず、幕開けの古代エジプトとタイタニック号をめぐる壮大な物語に圧倒される。
これがどう現代の事件とつながるのかと固唾を呑んでいると……。
これぞ島田作品! と唸りたくなる一大エンタテインメント。
娯楽作品としての形式で縦横無尽に文化を語ってみせる、まさしく氏の真骨頂。


評価:★★★☆ 7



飛鳥のガラスの靴
   


~あらすじ~
映画俳優の自宅に、差出人不明の郵便小包が配達された。
その中には塩漬けにされた彼の手首が。
十ヶ月経っても行方不明のまま、事件は迷宮入りの様相を呈した。
吉敷は、この管轄違いの事件に興味を持ち、
反目する主任に「一週間で解決できないなら辞表を書け」と迫られながら、謎を追う。


~感想~
長さに見合った重厚な内容。序盤の魅力的な謎の提示、吉敷の苦心行、展開のうまさがとにかく光る。
これぞ島田文学・吉敷物。満腹。


03.4.29
評価:★★★☆ 7



眩暈
 


~あらすじ~
五体を切断された男女が合成され甦った。
窓の外には荒涼たる世界の終焉が広がっていて……。
『占星術殺人事件』を愛読する青年が書きのこした日記の示すものとはなにか?

1992年このミス15位、文春9位

~感想~
この形式の先駈け的作品。
この形式がなんなのか詳しく書けば即座にネタバレするので、とにかく読んでいただくしかない。


評価:★★★★ 8



天国からの銃弾
   


~収録作品~
ドアX
首都高速の亡霊
天国からの銃弾


~感想~
社会派?ミステリでありながら本格臭が深い。どれも脱線(本線?)の「いやらしい」話が長く、減点材料。
それさえ目をつぶれば、いずれ劣らぬ良作ぞろい。


00.6.6
評価:★★★ 6



アトポス
 


~あらすじ~
虚栄と欲望の渦巻く都、ハリウッドに血でただれた顔の「怪物」が出没する。
ホラー作家が首を切断され、嬰児が次々と誘拐される事件の真相とは。
女優レオナ松崎が主演する映画『サロメ』の撮影が行われる死海でも惨劇はくり返され……。

1993年文春6位

~感想~
とんでもないスケールで描かれる、御手洗長編第一期完結編(?)。
正直、トリックはこの長大さを支えられているとは思えないが……。
(ネタバレ→)
御手洗の登場シーンに爆笑w こういう遊び心はさすがである。


評価:★★★ 6



天に昇った男
     


~あらすじ~
天に昇ろうとした男の伝説が残る九州・星里の街。
祭りの夜、やぐらに三人の男女の死体が吊された。
犯人とされた門脇春男は、17年の収監ののち、死刑を執行される。
ところが奇跡が起こり、彼は生き延び、釈放された。
そしてめぐってきた祭りの夜、彼自身が伝説のとおりに天に昇ったが…。


~感想~
(いきなりネタバレ→)
安易な夢オチに終わらず、夢に堕ちた理由をつけるあたりさすが。
ミステリにあらずも見逃せない佳品。


02.7.14
評価:★★★ 6



龍臥亭事件
 
   


~あらすじ~
御手洗潔が日本を去り1年半。
石岡和己は、突然訪ねてきた女性の頼みで、岡山県まで悪霊ばらいに出かけ、
「龍臥亭」という奇怪な旅館にたどり着く。そこで石岡が遭遇する大量連続殺人事件。
競い立つように甦った昭和史上に残る大事件の真相とは?

1996年このミス15位、本ミス10位

~感想~
あの石岡君が挑む、お屋敷ミステリの最高峰。
実際の事件を題材に、過去最大の分量で描かれる、いい意味で古典的な大傑作。
そして最後に待ち受ける衝撃……の部分を、僕はまったく味わえなかった。だって読んでなかったんだもん(泣)。
ある意味島田作品最大規模の衝撃のラストは、これも書くとたちどころにネタバレするので、僕の口からは言えません。読了済みの方にもおいそれとは言えません。とにかくこの仕掛けの意味を知ったときには悔しかったのなんのって……。(見当がついた方だけネタバレ→)
僕はこの作品を読む前に吉敷ものは1つも読んでませんでした。だから加納通子といわれても誰のことだか……ましてや彼女がつれていた娘の意味するところなんて……涙。


評価:★★★☆ 7



御手洗潔のメロディ
 


~収録作品~
IgE
SIVADSELIM
ボストン幽霊絵画事件
さらば遠い輝き


~感想~
『IgE』
御手洗らしさが爆発。

『SIVADSELIM』
御手洗らしさがきらめく。

『ボストン幽霊絵画事件』
御手洗ものらしさが炸裂。

『さらば遠い輝き』
レオナの思いが描かれる。


~総括~
まさしく御手洗らしい短編がせいぞろい。


評価:★★★☆ 7



Pの密室
 


~収録作品~
鈴蘭事件
Pの密室


~感想~
幼少期の御手洗潔が謎を解くという、まるで同人誌のような設定の短編2作。
正直、出来はさほどでも……。


00.8.21
評価:★★ 4



最後のディナー


~収録作品~
里美上京
大根奇聞
最後のディナー


~感想~
『里美上京』
完全にファン向け。非ミステリ。

『大根奇聞』
トリックは鋭いが、破壊力はそれほど……。

『最後のディナー』
石岡君の持ち味を遺憾なく発揮。


~総括~
ファンはぜったい損しないが、少々消化不良ぎみ。


02.3.2
評価:★★☆ 5



涙流れるままに


~あらすじ~
吉敷の元妻・加納通子は奇怪な運命に翻弄されてきた自らの半生を振り返っていた。
6才の冬、庭の柿の木の根元に埋めたある忌まわしいもの。
「首なし男」に追われる幻影に悩まされながら、
少女時代に体験した数々の悲劇の真相を探る決心をした通子。そこに明かされる凄絶な過去。
一方吉敷は獄中にいる死刑囚の夫の冤罪を主張する老婦人と出会う。
再審請求のため奔走する吉敷が対面した事件の関係者はなぜか、通子と因縁の深い人々ばかりだった。


~感想~
本書はミステリと呼ぶにはやや据わりの悪い代物である。
だが、圧倒的な筆力と一人の人間がこれだけの物語を紡ぎ出せることに感嘆と驚愕の念を禁じえない。
これこそはまさに氏の集大成にして金字塔。島田文学の最高峰ここに在り!!
(以下ネタバレ→)
そうだ! やはり物語は大団円のハッピーエンドが最高だ! これが笠井潔や若手作家なら、井戸さらいの直後にでも恩田氏は亡くなり、吉敷は職を追われていたことだろう。おとぎ話でも構わないと、島田荘司は期待を裏切らない。こうでなくては! 本作中なにより驚かされるのは、読了後余韻に浸る中気づく、犯人がまったく指摘されていないという事実。前代未聞(某メタ作家は除く)、犯人のいないミステリ。……って気づかなかったのは僕だけ?


02.10.9~10
評価:★★★★★ 10



御手洗パロディ・サイト事件
       


~収録作品~
すべてが「あ」で始まる  ――松尾詩朗
ギザのリング  ――園生晃子
沈みゆく男  ――青田歳三
ベートーベン幽霊騒動  ――角田妃呂美
巨乳鑑定士、石岡和己  ――優木 麥
Dark interval&ダージリンの午後  ――まる
御手洗潔の「暗号」つき女子寮殺人事件  ――和泉久生
ホント・ウソ  ――高槻榛襾
The Alien  ――Crystal Stevenson
鉄騎疾走す  ――小島正樹
御手洗さんと石岡君が出ている偽物小説  ――佐藤智子
御手洗潔と学校の怪談  ――コバトミチル
Pair jewels/Pair lovers  ――橘高 伶

シリウスの雫  ――柄刀 一
愚かな深海魚は幻影の海で泳ぐ  ――伊吹 真
北国騒動  ――馬杉 愛
夏季色オレンジ  ――極楽桜丸
US THERE  ――徳月モリ
スージー嬢  ――杉永裕章
ALiS  ――朝日屋ALiS
横浜スタジアム事件  ――氷川 透
追いかけて横浜  ――来栖未遊


~感想~
(全体的にネタバレ&毒吐きのため伏せ字→)
上巻:ごめん暗号キライ『すべてが』。見事にサブストーリーを構築している。でも拾ったのは石岡じゃあ……?『ギザ』。短く鋭い『沈みゆく』。雰囲気良好『ベートーベン』。石岡君の醜態を見事に描いている『巨乳』。御手洗・石岡(特に後者)がとうてい言いそうもないセリフばかり『午後』。名前だけで解る暗号っていったい『女子寮』。頭の体操より抜粋?『ホント』。ごめん読めない『Alien』。「ある騎士の物語」+「疾走する死者」×素人臭さ=『鉄騎』。いいかげん推理『偽物』、稚拙『Pair』。
下巻:ここまで御手洗ものを描ききるとはさすが本職!『シリウス』。ラストが余計『愚かな』。これも見事『北国』。ふーん『オレンジ』。さっぱり『US』。それなりに『スージー』。これだけは本人作?『ALiS』。本職の意地『スタジアム』。強引な推理『横浜』。

まさに玉石混淆。本職は(おおむね)力の差を見せつけた。
とても出版できないような代物もちらほらあるのはご愛敬。
とってつけたような解決(言っちゃった)はともかくとして、島田荘司監修の同人誌と思えば十分楽しめる。


上巻 00.7.31
下巻 00.8.4
評価:★★★ 6



パロサイホテル
   


~収録作品~
二年前の選択に対する回答  ――安藤晃弘
ジョーカー  ――中川淳一
この花の咲く木の下  ――竹内玲子
消えなかった『キ』  ――松尾詩朗
空に消える/冬のオルカ  ――あさなぎ
それが怖い  ――青田歳三
忍者屋敷  ――山田
火事場の水死事件  ――菅原大樹
横浜奇談  ――北川浩二
Architect Panelize  ――庚/カスミ
トロイメライの鈴  ――極楽桜丸
時計仕掛けの密室  ――矢部 貫

動物園の密室  ――霧舎 巧
ト形館の犯罪  ――松尾詩朗
foの密室  ――高槻榛襾
小さな救いの手  ――江馬栗栖
名もなき騎士のために  ――船引良祐
呪われたカラオケ館  ――優木 麥
明晰夢  ――鍋澤純子
作家と探偵の聖夜  ――美帆・ライト
極楽食堂  ――杉永裕章
雪に吊られた男  ――小島正樹
温泉天ぷら談話  ――角田妃呂美
The Stolen Essay  ――Crystal Stevenson
幻想の塔の天使  ――香乃瀬たくみ


~感想~
(全体的にネタバレ&毒吐きのため伏せ字→)
上巻:頭の体操より抜粋?『二年前』。どこかで見た気がするが巧い『ジョーカー』。長すぎ『木の下』。無茶だ『『キ』』。清掃員は真冬なのに薄着だったのか……『空に消える』。うまい!『それが怖い』。御手洗ってテレビっ子だったのか『忍者』。物理トリックは……『火事場』。まとまっただけ『横浜』。論外『Architect』。トリック丸見えもまずまず『トロイメライ』。若書き(若いのかな?)『時計』。
下巻:やはりプロは違う『動物園』。豪快。でも似てるかあ?『ト形』。上巻でほとんどネタバレされ気の毒『fo』。設定はともかく力不足『小さな』。惜しい『名もなき』。笑えるか? これ『カラオケ』、ほぼ論外『明晰』、事例をそのまま写しただけのような『聖夜』、同人誌的ノリにはついていけない『食堂』。これはすんばらしい! 奇想『雪に』。雑学のみ。御手洗いないじゃん『温泉』。ごめん読めない『Essay』。酔いすぎ『塔の天使』。

長編としての完成度は前作の比ではない。収録作品の質は前回より落ちた感。
なにより驚いたのは誤植の山。おおげさではなく、1ページに1つないか?


02.11.22~23
評価:★★★★ 8



ハリウッド・サーティフィケイト
   


~あらすじ~
LAPD重要犯罪課に持ち込まれたテープ。
そこに映っていたのは、ハリウッド女優が自邸で何者かに惨殺される様だった。
LAPDは、彼女の親友レオナ・マツザキに連絡を取り……。


~感想~
これだけの大長編を冗長と感じさせない手腕にはただただあ然。
すべての情景が映像となって脳内で再生され、まるで映画を観ているよう。
(ネタバレ→)
なにより驚いたのは末尾の一文。これが……序章!? 島田荘司がついに隠していた爪をむき出しにしたのか!? 次回は「あの人」の出馬も!? いやあ本当に楽しみ。


02.10.12
評価:★★★★☆ 9

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