離愁
汚名 改題
~あらすじ~ 実の姉妹にも打ち解けず孤独のまま亡くなった叔母の藍子。
明るい少女時代の映像とはかけ離れた、暗鬱な性格になぜ叔母は変わったのか。
作家の私は職業柄の興味から、そして甥としての立場から叔母の生涯へ迫っていく。
2003年このミス20位
~感想~
謎は残らず解かれ、意外な真相も現れるものの、語り手が推理を働かせることはほとんどなく、関係者の述懐によって全てが語られるため、ミステリよりも純文学に近い。
調査の過程はまったく無理なく描かれ、一つの謎が解けるとそれをきっかけにさらに調査が進みと淀みなく話は流れ、たるむ場面は少しもなく、完結まで一息に読み通せる。
叔母やその周囲の人物はもちろん、語り手、従妹、両親と脇を固める面々も残らず血が通い、世界大戦前後の空気感も抜群で、実際の事件を絡ませた展開も巧みと、物語として非の打ち所がない。
最後に待ち構えるある仕掛けは、トリックだと大上段に振りかぶるようなものではなく、物語に深みを持たせるためにあり、冒頭の一文に帰り着く末尾の言葉まで実に巧緻に編まれた、ミステリ、文学を問わず本好きなら読んで損のない作品である。
14.5.19 評価:★★★ 6
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