西澤 保彦


解体諸因
   


~収録作品~
解体迅速
解体信条
解体昇降
解体譲渡
解体守護
解体出途
解体肖像
解体照応 推理劇「スライド殺人事件」
解体順路


~感想~
バラバラ殺人見本市。
見たこともない「切断の理由」がめじろおし。
いかにも「デビュー作」らしい、無茶で強引なトリックとロジックの数々。
こういうものを期待しているなら、まさにこういうものです。


評価:★★★ 6



完全無欠の名探偵
   


~あらすじ~
“大がかりな”事件を調べるりんの元へ訪れた青年みはるは、
人の心の奥にわだかまる不審事を当人に推理展開させ、真相をしゃべらせてしまう“超能力者”だった。
みはるの周辺では、浮気、脅迫、殺人と様々な事件に潜む真相が、泉が湧くように顕わにされる。
さて、りんのつかんだ“大がかり”な真相の連鎖とは?


~感想~
短編が10本以上書けそうなアイデアの山はすごい。が、こぢんまりとしたトリックばかりで、インパクトは薄い。
設定のおかしさ・面白さが骨格であり、ご都合主義を徹底的に廃してみた実験作。気楽に読むべし。


99.6.16
評価:★★ 4



七回死んだ男
 


~あらすじ~
何度も何度もくり返される殺人。
殺されるのはいつも祖父。
だが、それを認識できるのは孫の久太郎だけ。
特異な能力で時間の“反復落とし穴”にはまり込んだ久太郎は、
祖父の命を救うべく孤軍奮闘するが……。

1995年日本推理作家協会賞候補、東西ベスト(2012)70位

~感想~
すごいすごいとにかくすごい。スラップスティックな展開に乗り、トンデモなSF仕掛けが本格ミステリを演出する。
こんなもの西澤保彦にしか書けない考えられない。
歴代ミステリの中でNo.1に推す評論家がいるというのも納得な、ミステリ嫌いにこそオススメの一作です。


99.5.8
評価:★★★★★ 10



殺意の集う夜
   


~あらすじ~
「嵐の山荘」に引き寄せられた怪奇な人々。
そこで万里が犯したドミノ殺人。だが同時に、万里の親友の園子も、何者かによって殺されていた。
園子を殺したのは、万里が殺した6人のうちの誰かのはず。
複雑にからみ合った殺意の糸を解き明かし、自分が犯した罪もその犯人に着せるべく、
万里の必死の推理が始まった。


~感想~
ただでさえ悪球の設定を、さらにここまでむちゃくちゃにしてしまうのだから、さすが。
結末ですべてをひっくり返され、きっちりと驚かされる怪作。


99.9.29
評価:★★★ 6



人格転移の殺人
   


~あらすじ~
突然の大地震。6人が逃げ込んだ先は、人格を入れ替える実験施設だった。
法則に沿って6人の人格が入れ替わり、脱出不能の状況下で連続殺人事件が起こる。
私を襲うあなたの人格は誰?

1996年このミス10位、本ミス8位

~感想~
不世出と思われた「七回死んだ男」に再び肉薄してみせた大傑作。
例によってのトンデモな設定を、たくみな構成と周到な伏線で本格ミステリに変えてみせる豪腕に脱帽。


99.6.6
評価:★★★★☆ 9



彼女が死んだ夜
   


~あらすじ~
門限はなんと六時! 生粋の箱入り娘ハコちゃんがやっと勝ち取ったアメリカ旅行。
キャンパス仲間たちが壮行会を開いてくれた出発前夜、家に帰ると部屋に見知らぬ女性が倒れていた。
助けを求められた男性陣がかけつけると、ハコちゃんは自分の喉にナイフをつきつけて言った。
「この死体を捨ててきてくれなければ、わたしは死ぬ!」


~感想~
※なぜか感想ノートが見当たらないので再読するまで保留します。


01.12.29
評価:★★★☆ 7



麦酒の家の冒険
   


~あらすじ~
匠千暁たちが迷い込んだ無人の山荘。
家具も内装もないからっぽの室内にあったのは、一台のベッドと冷蔵庫。
そして冷えたビールのロング缶96本とジョッキ13個だけ。
誰がなんの目的で? ビールを飲み続け、推理に推理を重ねた先にたどり着いた真相とは。


~感想~
全編にわたってくり広げられる、純粋論理と純粋論理の応酬。
ともすればマンネリになりかけるところを、奇抜な推理と軽妙な会話で飽きさせない。
が、ここまで反論につぐ反論がつづくと、肝心の結末まで説得力を持ちえず、
これも間違ってるんじゃないかと疑いたくなる。
着地が決まらないのは宿命的か。


99.8.2
評価:★★☆ 5



死者は黄泉が得る
   


~あらすじ~
周囲から隔絶された、死人が甦る館に住む異形の女性たち。
その隣り街で起きる連続殺人事件。
殺人犯は生者か、それとも死者か?


~感想~
「生ける屍の死」に対するオマージュ――にはとても思えない、奇妙な作品。
ラストが綺麗で(私見)どうもこのラストのためだけに作られた設定な気さえしてくる。
ダブルミーニングが巧みだが、やや展開が読めるところも。


99.3.3
評価:★★★ 6



瞬間移動死体
 


~あらすじ~
俺にとって殺意を実行に移し、完全犯罪とすることは簡単だ。
ロサンジェルスにいる妻を、日本にいる俺が殺したなどとは誰も思わないだろう。
なぜなら俺は「テレポーテーション」が使えるのだ!
だがこの超能力には様々な制約がつきまとい……。


~感想~
もはやヘンテコとしかいえない設定を完璧にあやつる手腕は言わずもがな。
奇抜な設定に振り回されず、ここまで制御してみせるのは本当にすごい。が、今回はやや空回りのきらいがあるか。
そんじょそこらのミステリを寄せ付けないガッチガチの論理性が、逆に足かせとなった感。


99.12.13
評価:★★★ 6



複製症候群
   


~あらすじ~
異形の壁に閉じこめられた高校生たち。
だがその壁からは逃げ出すわけにはいかない。
その壁に触れると、姿形、記憶や考え方まで完璧に自分と同じコピーができてしまうからだ。
そんな密閉空間での殺人事件。犯人はオリジナルか、それともコピーなのか。


~感想~
異常さがきわだつ。暗く深くおぞましい、狂って壊れた世界。
今回はミステリというよりもSFホラーといった雰囲気も。
どうもこの頃から、氏の論調は無駄に(私見)理屈っぽくなってきた。まあ面白いけど。


00.3.2
評価:★★★☆ 7



仔羊たちの聖夜
 


未作成



幻惑密室
   


~あらすじ~
密室と化した社長宅で起きた殺人事件。
しかも室内では時間の流れまでも狂っていた!?
不可思議な事件の真相解明に現れたのは
「超能力者問題秘密対策委員会出張相談員(見習)・神麻嗣子」
彼女が告げる真相とは?


~感想~
新シリーズ開幕は絶好のスタート。
魅力的な登場人物と、ひさひざに冴えわたるトンデモ設定。
ジェンダー論が小うるさいが、とにかく楽しんで読める。


00.4.27
評価:★★★★ 8



スコッチ・ゲーム
 


~あらすじ~
高瀬千帆はルームメイトで恋人の鞆呂木恵を殺され、その後も周囲で同様の手口の犯行が相次ぐ。
傷心のまま地元を離れ、安槻大学に進学した彼女はタックらに出会い、そして謎は解かれる。
タカチの高校時代を描いたタックシリーズ長編。


~感想~
大昔に読んだから内容を忘れただけと思っていたら普通に読んでなかったシリーズ長編。この後の「依存」「身代わり」を先に読んでしまった。
しかしタカチの過去が「依存」でほのめかされていたほど重くもなければ、恋人のはずの恵への思い入れも至って薄く、正直拍子抜けした。「依存」のタックの過去が重すぎるせいでもあるが。
例によってわけのわからない独自のジェンダー論(なのかどうかすらもはやわからない)が語られまくるが、中でも「男のナルシシズム」がもうむちゃくちゃで、論旨もさることながら終わってみれば真相に説得力を持たせるためだけに存在していて、なんともはやである。
ミステリとしては特に動機が酷く、そりゃ動機が無いよりはあった方が良いに決まってるが、あれば良いというものでもないと言っておきたい。
総じて(例によって)シリーズファンならこの先何度もほのめかされるタカチの過去が明かされるので必読ながら、内容にはさほど期待しない方が吉である。
…それにしてもSFミステリを読んでた頃には思いもしなかったが、さては長編下手だな?


23.3.14
評価:★★ 4



ストレート・チェイサー
   


~あらすじ~
酒場で意気投合した2人の女性に“トリプル交換殺人”計画に
参加することを約束させられてしまったリンズィ。
翌日、殺害対象に指名した上司の家で他殺体が発見される。
交換殺人計画が実行されたのか? 取り乱すリンズィをしり目に第二の殺人事件が……。


~感想~
これぞ最後の一行まで油断できないミステリ。他にはなにひとつ言えません。


99.6.11
評価:★★★ 6



殺す
猟死の果て 改題
 


未作成



実況中死
   


~あらすじ~
他人の見た風景がそのまま見えてしまう「怪能力」を得たばかりに、
殺人やストーカー行為をそのまま「体験」してしまう恐怖。
せっぱ詰まった女性の訴えに、神麻嗣子と能解匡緒、保科匡緒の3人は、調査と推理をめぐらす。


~感想~
むちゃくちゃな設定を例によって完璧にあやつりきった。
プロットのたくみさに舌を巻くべし。


00.5.8
評価:★★★★ 8



ナイフが町に降ってくる
   


~あらすじ~
「謎が解けなければ時間は永遠に止まったままだ」
なにかに疑問を抱くと時が停止するという奇癖を持つ青年、末統一郎の言葉に、女子高生真奈は逆上した。
二人以外のすべての人間、物体は静止中。
そして謎とは、眼前でナイフを腹に突き立てて固まっている男。誰が、いつ犯行を?
だが真相を探る二人は、町中でナイフの犠牲者を次々に発見。
ナイフの雨が町を襲ったのか?


~感想~
設定の奇抜さが真相を覆い隠しきれず、早々にトリックが読めてしまうのが惜しい。
トリック一本で最後まで引っぱる作品だけに、厳しいか。
あと、あの解決は説得力がなさすぎると思う。


99.9.1
評価:★★★ 6



念力密室!
   


~収録作品~
念力密室
死体はベランダに遭難する
鍵の抜ける道
乳児の告発
鍵の戻る道
念力密室F


~感想~
『念力密室』
小さな悪意がおぞましい。軽妙なやりとりが暗さを中和するに十分。さりげない伏線がお手の物。

『死体はベランダに遭難する』
伏線の多さと仕掛け方のうまさが見事見事。

『鍵の抜ける道』
トリックより話自体が面白い。

『乳児の告発』
傑作。トリックやプロットの巧みさを一気に振り落とす結末。

『鍵の戻る道』
次作以降の伏線を張るための一作といったところ。

『念力密室F』
怖い怖い。これでも本当に氏の予告するハッピーエンドは訪れるのか?


~総括~
シリーズファン以外には、恐らく楽しめない。
その反面、シリーズファンには珠玉の短編集。
自分の造型したキャラを心から愛すれば、ここまでのものが作れるのだろう。
伏線の張り方も絶妙で、ミステリマニアもうならせる。シリーズの最高到達点。


00.5.10
評価:★★★★ 8



黄金色の祈り
 


~あらすじ~
他人の目を気にし、人をうらやみ、成功することばかり考えている「僕」は、高校卒業後、アメリカの大学に留学するが、いつしか社会から脱落していく。
しかし一発逆転を狙ってついに小説家デビュー。かつての級友の死を題材に小説を発表するが……。

1999年本ミス8位

~感想~
語り手と作者の略歴が大きく重なり、私小説の面も合わせ持つ異色作。
なぜか本ミス8位にランクインしたが、謎もトリックも真相もたいしたものではなく、読みどころは私小説としての面に限る。しかし西澤保彦らしいひねくれた視点の青春小説として、それだけでも充分楽しめるだろう。

だがSFミステリでの華々しい活躍から一変し、近年はウザイだけのジェンダー論を振り回す作家に成り下がってしまった氏の、転落への萌芽とも言うべきものが散見されるのは悲しい限り。
綾辻行人「暗黒館の殺人」ばりに言うなら、ジェンダー論、百合成分、誰得の自己主張と「ここに全てがあった」のだ。
西澤保彦転落への分水嶺となった作品なのかも知れない。


11.1.16
評価:★★★ 6



夢幻巡礼
   


~あらすじ~
「ひとを殺すことが、こんなにも、おもしろいとは思ってもみなかった」
能解匡緒の部下・奈蔵渉は、警察官でありながら連続殺人鬼。
自己の狂気を冷徹に見つめる奈蔵が、かつて遭遇した密室殺人が十年後、再び新たな闇の扉を開く。


~感想~
読後感がいいわけもない、暗くおぞましい一作。
シリーズに伏線を張るための作品がこれでは、明るくにぎやかだった本編に影を落とし、ファンが減ったりしないだろうか?
謎解きがなんとなく篠田真由美っぽいと思うのはたぶん僕だけか。


02.9.14
評価:★★☆ 5



依存
 


~あらすじ~
アパートの裏口に挟まれた小石、全く世話をしないのに飼い続けられる犬、ぬいぐるみをもらい帰される誘拐被害者、物を亡くすとおみやげと一緒に返される飲み屋…。
タック、タカチ、ボアン、ウサコら日常の謎の裏に潜む悪意を泥酔しながら推理する面々は、教授の家で新妻を紹介される。
タックは言う。「彼女は僕の母親で双子の兄を殺した」

2000年このミス8位、本ミス7位

~感想~
「スコッチ・ゲーム」に続きシリーズが大きく動いたターニングポイントとなる一作。
気楽に馬鹿騒ぎしながら無責任な推理に花を咲かせる一行にシリアスな展開が訪れるが、問題点がいくつかあり、まずかなりの長編ながらあらすじの地点にたどり着くまでに全体の9割が消化されるのが難。
そこから先のタックらの選択は「あの人ならそうするしそうなるだろう」と予測の範疇を出ずに拍子抜けするし、日常の謎も本題に絡んではいるもののいずれも小粒で、水増しにすら見えてしまう。あの人が肉親とはいえぽっと出の女に負けるわけないだろ…。

そして一番のネックが例のアレで、今回はこれまで目立たなかったウサコを語り手に抜擢しているのだが「ごく一般的な感覚を持つ普通の女子大生」と表現されるウサコがごく一般的どころか「不用意に笑顔を見せたが最後、己の意志に関わらず男を慰撫するためだけに存在し機能する癒やし系ロボットとして認知され封建的システムに組み込まれてしまう不条理を断固拒否する決意表明」とか今やネットのフェミしか言わない極端すぎるジェンダー主張をする始末で、今となってはさすがに古臭く見えてしまうユーモアと相まって破壊力は抜群。
ファンなら必読だが、ファン以外は本作から読まないように要注意のこと。


23.1.27
評価:★★ 4



なつこ、孤島に囚われ。
     


~あらすじ~
異端の百合族作家・森奈津子は、見知らぬ女に拉致され、離れ小島に軟禁された。
だが、意外にも待遇は満点。海は美しく毛ガニは食べ放題で、まさしくパラダイス。
彼女はこの島を「ユリ島」、向かい側に見える島を「アニキ島」と名づけ、誘拐生活を満喫していた。
ところが一週間後、アニキ島で死体が発見され……。


~感想~
ただのエロユリ小説。読んで損した。好きにしてくれ。


01.7.24
評価:なし 0



転・送・密・室
   


~収録作品~
現場有在証明
転・送・密・室
幻視路
神余響子的憂鬱
〈擬態〉密室
神麻嗣子的日常


~感想~
『現場有在証明』
(ネタバレ→)
サイフのくだりが肝である一方、アキレス腱にもなったような。逆にトリックが脆弱になった印象。

『転・送・密・室』
見事な逆転。(ネタバレ→)
タイトルからして「瞬間移動死体」を想起させるが、その逆をつくとは。

『幻視路』
あからさまなどころか、そのまんまの伏線はいさぎよさを通り越して安易では。

『神余響子的憂鬱』
動機がすこし……。新キャラ二人は強烈でお目見え編か。

『〈擬態〉密室』
トリックは本書中、最も強引。短編でもストーリーが動きだしたのはいい。

『神麻嗣子的日常』
さすがは西澤保彦。普通の着地はしない。矛盾を山と抱えそうだが面白くなった。ってか後付けだろ絶対!


~総括~
西澤氏にしては切れ味を欠いた作品ばかりだが、ストーリーが思わぬ方向に転がりだしたのは期待が持てる。
シリーズファン必読。


02.9.16
評価:★★★☆ 7



謎亭論処
   


~収録作品~
盗まれる答案用紙の問題
見知らぬ督促状の問題
消えた上履きの問題
呼び出された婚約者の問題
懲りない無礼者の問題
閉じこめられる容疑者の問題
印字された不幸の手紙の問題
新・麦酒の家の問題


~感想~
『盗まれる答案用紙の問題』
型にはめたようなキャラ造型と、細密論理は氏のお庭芸。この手のトリックに成功例は少ない。

『見知らぬ督促状の問題』
群を抜いて出来のいい一編。

『消えた上履きの問題』
氏の得意とする無邪気な動機が冴える。西澤保彦らしさがいい。

『呼び出された婚約者の問題』
出ました「麦酒の家」。例によって結末はあっけないが、真相は意外。

『懲りない無礼者の問題』
怪奇幻想の世界に片足をつっこんだような。結末の一言が光る。

『閉じこめられる容疑者の問題』
かなり強引なトリックだが、かの傑作「乳児の告発」を思わせるキレ。

『印字された不幸の手紙の問題』
動機が苦笑ものだが、こういった悪意を描かせると本当にうまい。

『新・麦酒の家の問題』
なにが強引って、本書中もっとも強引な作品はこれ。いくらなんでも…ねえ。


~総括~
いや楽しかった。全編にわたり西澤保彦臭全開。氏の力よりもむしろ味に酔いたい。


01.7.24
評価:★★★ 6



夏の夜会
   


~あらすじ~
祖母の葬儀のため、久しぶりに帰省したおれは、かつての同級生の結婚式に出席した。
同じテーブルになった5人は小学校時代の同級生。
飲み直すことになり、思い出を語りあうなか、30年前に起こった担任教師の殺害事件が浮かび上がる。


~感想~
いつもの酩酊ミステリから陽気さを取っ払っただけの気が。
肝心の謎もありがちな決着に到ったり、釈然としない。結末もあっけなさすぎ。


02.12.27
評価:★☆ 3



あの日の恋をかなえるために僕は過去を旅する
異邦人 fusion 改題
 


未作成



小説家 森奈津子の妖艶なる事件簿
両性具有迷宮 改題
 


未作成



聯愁殺
 


~あらすじ~
4年前、私はなぜ見知らぬ男に襲われたのか――。
事件のトラウマに悩まされる梢絵は、担当刑事の勧めで「恋謎会」に赴く。
そこでミステリ作家、犯罪心理学者、元刑事らが繰り広げる推理合戦の果てにたどり着く驚愕の真相とは?

2002年本格ミステリ大賞候補、本ミス9位、1990年鮎川哲也賞候補

~感想~
無いわー。これは無いわー。コレジャナイ。思ってたんと違ーーう!!

どうやら本作に取り掛かるにあたっての姿勢が間違っていたようだ。
傑作「丸太町ルヴォワール」のような問題編2割、解決編8割で喧々諤々の推理合戦のさなかに仮定が崩れ、意外な伏線が明かされ、思いもよらない仕掛けが飛び出すような作品かと思っていたら、まず問題編からして全体の1割にも満たず、推理が始まってから読者が知りようもない新事実が次々と現れるのはもちろん、そもそもの設定自体が小出しにされていく構成。
そして最終最後の解決編が新事実のオンパレードで、前提条件のほとんどをひっくり返してしまい、悪い意味で度肝を抜かれた。
驚いたには驚いたが、こういう驚き方を望んでいたわけではなく、これまでの展開や推理をまとめて無効化し、ジャンルごと変えてしまったような豪快な力業にドン引きしてしまったのだ。
とはいえ終わってみればいかにも西澤保彦らしい幕引きで、推理合戦も(小出しにされる新事実をアンフェアと思わなければ)二転三転し、作者の評価を下げるだけの余計なジェンダー論も皆無と、僕のように偏った先入観を持たず、無心で読めば楽しめることだろう。


14.6.10
評価:★☆ 3



人形幻戯
   


~収録作品~
不測の死体
墜落する思慕
おもいでの行方
彼女が輪廻を止める理由
人形幻戯
怨の駆動体


~感想~
『不測の死体』
伏線・逆転ともにうまい。珍しく動機よりもトリックに傾いてくれた佳作。

『墜落する思慕』
伏線は見え見えだが、真相の逆転がうまい。動機は例によって…。

『おもいでの行方』
終局の逆転と描写が秀逸――なだけ。

『彼女が輪廻を止める理由』
これは完全に動機だけの一編。(ネタバレ→)
主題とはいえ傘をひっぱりすぎ。

『人形幻戯』
(ネタバレ→)
ただ一点。なぜ能力を同時に発現できたかの説明を「偶然」で片づけているのが片手落ち。

『怨の駆動体』
短く鋭い本書中の白眉。タイトルといい、なにか伏線が張られたのだろうか。


~総括~
キャラたちの日常がさして描かれず寂しい。しぜん、ストーリーに進展もなく物足りない。
トリックも動機がメインで、いつもの緻密さはない。
マンネリを避けたのだろうが、逆に西澤臭・西澤味が濃くなりすぎて空回りした感も。


02.9.17
評価:★★☆ 5



ファンタズム
   


~あらすじ~
連続女性殺人事件。遺体の口には必ずある紙片が、現場には犯人の指紋がべったりと遺される。
殺したのは「ファントム」。まるで実体のない幻のような犯人の正体とは?


~感想~
一読して――噂どおりだ。
読み返して――意外とミステリだ。
謎が謎を呼ぶ謎だらけというか、解決を放棄しただけの手抜き。
ホラーとは明瞭な解決を拒むものだと誰が決めた。とにかく不服。
読むか読むまいか迷い、いろいろと調べた方。たぶん、あなたの予想どおりです。


03.4.19
評価:問題外



リドルロマンス
   


未作成



神のロジック 次は誰の番ですか?
神のロジック 人間のマジック 改題
 


~あらすじ~
ここはどこ? いったいなんのために?
世界中から集められ、謎の“学校”で奇妙な犯人当てクイズを課されるぼくら。
やがてひとりの新入生が“学校”にひそむ“邪悪なモノ”を目覚めさせたとき、小さな共同体を悲劇が襲う。

2003年本ミス6位

~感想~
どこを切り取ってもネタバレになるので非常に評しづらい。
なのでトリック以外のことを述べるなら、西澤氏の文章の読みやすさに改めて感心した。全盛期にはトンデモSFと称されたむちゃくちゃな設定を、説明臭くなく自然と説明してみせた腕は健在。
というか、最近のライフワーク(?)になっている人間そのものへの冷めた暗さや、ジェンダー論が語られないだけかもしれない。
扱ったテーマが偶然にも“アレ”とかぶったのは興趣深い。トリック一本勝負でありながら、読了後には余韻を残す佳作である。


06.9.26
評価:★★★☆ 7



笑う怪獣
ミステリ劇場
 


未作成



黒の貴婦人
   


~あらすじ~
自宅マンションで開かれた飲み会の訪問客が刺殺される。しか彼女は招かれていなかったはずで…招かれざる死者
ボアンの飲み会にいつも居合わせ、鮒寿司を食べる女を彼は密かに白の貴婦人と呼び…黒の貴婦人
ド田舎の別荘に泊まった女子大生グループとタック。翌朝意外な人物が死体で発見され…スプリット・イメージ
会長の愛人をしていた女は、亡くなった会長が宝の地図を隠していたというジャケットを探るがそこには何もなく…ジャケットの地図
教員となったボアンの同僚の披露宴で祝儀袋から67万円だけがはっきりわかるよう抜き取られ……夜空の向こう側


~感想~
タックシリーズ短編集。
時系列はごちゃまぜで既刊のどこかの合間に起こっているが、ミステリとしての質はもう問題外にどれも低い。
ただ結果に沿っているだけの何もかも無理のある、優れたミステリならばダミーの解決として片付けられているはずの真相が普通に真相として示されるばかりで、悪い意味で唖然とさせられる。
「スプリット・イメージ」に至っては「タックが初対面の女子大生グループと起居をともにします」という全く意味のわからない設定から始まり、無茶に無茶を重ねたありえない真相が暴かれる始末で、個人的には「赤い糸の呻き」で上げた評価が著しく下がった。
表題作は真相のその先こそ手放しで褒められるが、ミステリとしてはゴ…カ…非常にいただけない。
シリーズファン目線からすれば表題作の結末だけは必見ながら、極端な話そこだけ読んでもらっても構わないと思えるほど、至って面白くない短編集であった。


23.2.26
評価:★ 2



いつか、ふたりは二匹
   


未作成



パズラー
謎と論理のエンタテインメント
 


~収録作品~
蓮華の花
卵が割れた後で
時計じかけの小鳥
贋作「退職刑事」
チープ・トリック
アリバイ・ジ・アンビバレンス


~感想~
石持浅海の倫理観とキャラ造型も相当におかしいが、やはり西澤保彦はすごいと再確認。
登場人物が下手に論理的な思考を装っているだけに、その歪んだ倫理観からつむがれる異常論理や、型にはめて押し込んで判を押して説明書を添付して出荷したように極端な人物像は実にきもちわるい。しかもそれが本筋とは特にからまずに執拗に描かれるものだからたまらない。石持キャラには嫌悪を感じるが西澤キャラには殺意を感じるといったところ。
そして論理の切れと飛躍においては完全に西澤保彦に軍配が上がる。不可解な状況を手際よく説明し、論理的にさばきながら、最後は飛躍して意外な地点へと着地。「謎と論理のエンタテインメント」と銘打つだけはある。が、無駄に汚い思考や下品な描写がどうしても足を引っ張ってしまい、後味は悪い。
「エンタテインメント」と名乗り、都筑道夫の看板を背負うのならば、もっと普遍的な線を狙うべきではなかろうか。
などとさんざんけなしてみたが、西澤保彦ならではのどぎつさと論理の冴えは、近年なかなか見られなかった濃さのため、西澤成分が不足している向きにはうってつけの処方箋であろう。ファンには強くおすすめ。


08.10.8
評価:★★ 4



方舟は冬の国へ
 


未作成



生贄を抱く夜
   


~収録作品~
一本気心中
もつれて消える
殺し合い
生贄を抱く夜
動く刺青
共喰い
情熱と無駄のあいだ


~感想~
『一本気心中』
これ、超能力が必要不可欠か? それどころか全く必要ないのでは

『もつれて消える』
アンフェアにもほどがある

『殺し合い』
例によって胸くそが悪いだけの話。トリックに意外性がないどころかトリックすらない

『生贄を抱く夜』
長い。そしてあまりにも練り込み不足。計画がずさんすぎて説得力ゼロ

『動く刺青』
本書中で最も超能力を効果的に使ってはいる

『共喰い』
最悪。偶然で全てを片づけるとは、どこまで堕ちたのか

『情熱と無駄のあいだ』
なんだこれ


~総括~
ほぼ問題外。
「シリーズキャラを外側から眺めてみたい」その試みは解る。
だが、外側から眺められたキャラたちが、いままでの印象から全く逸脱せず、意外な一面を少しも出さないのならば、こんな試みは無駄としか言えない。
シリーズキャラたちはただ顔を出すだけ。物語に進展もなにもない。
最近めきめきと腕を落としている氏。とうとうここまで来たか。
見限りたくなるほどの酷い出来。かつてはその突飛さと緻密さでならしたトリック・プロットの構成力は見る影もない。
ネタ切れならシリーズを打ち切りすべき。
『殺し合い』などの、例によっての冷めた視点は、読んでいてウンザリしてくる。
もう、こんな西澤氏は見たくない。


評価:★ 2



腕貫探偵
 


未作成



フェティッシュ
 


未作成



キス
   


未作成



春の魔法のおすそわけ
   


未作成



ソフトタッチ・オペレーション
   


~収録作品~
無為侵入
闇からの声
捕食
変奏曲<白い密室>
ソフトタッチ・オペレーション


~感想~
チョーモンインシリーズ。あいかわらずストーリーが進まないどころか、能解警部や聡子、Wアボも出番なしと来てはシリーズとしての興味も薄い。
ミステリとして見ても、真相にげんなりする『無為侵入』、なにもかも無茶がありすぎる『闇からの声』、魅力的な謎が、付けりゃいいってもんじゃない解決を迎える大駄作『捕食』、なにが白い密室だか『変奏曲<白い密室>』、解決に無理がありすぎる『ソフトタッチ・オペレーション』と、さらに腕を落としてきた。
そもそもシリーズキャラが活躍する場面自体がほぼ皆無で、もはやなにをしたいのかすら解らない。
ミステリとしてもダメ、シリーズとしてもダメ。
個人的にはもう見放した。


06.11.16
評価:★ 2



収穫祭
 


~あらすじ~
1982年、嵐の山村で大量殺人が発生。被害者は喉を鎌で掻き切られていた。
生き残った中学生たちの証言から警察は犯人を断定した。
そして9年後、またもや猟奇殺人事件が起こる。凶器は、鎌だった。

2007年本ミス7位

~感想~
何もかも好みではなく普通に感想を書くと暴言しか吐けない。
逐一伏せ字にするのが面倒なので、以下↓ネタバレ↓

まず無駄な三文ポルノ描写の数々。動機その他に密接に絡んでいるのは理解するが、第一部では童貞中坊の妄想、第二部では肉食系女子の男性遍歴、第三部ではイ●ポの変態オ●ニーと無駄にプラトニックな男女関係が何かというと描かれいちいちうっとうしい。

設定は完全に無茶で、第二部は犯人が自分が犯人であることをそこだけ都合よくすっぱり忘れており、ミスディレクションとかそんなレベルではない。第三部は途中から省路が凄腕の殺し屋になるのも意味不明で、それに魔法のように都合よく操られる貫太もわけがわからない。第四部はもう超展開と呼ぶしかない惨状で「よくよく見れば、あの繭子なのだ」っていったいどういうことだ。ジャネットら悪のチャーリーズ・エンジェル(笑)みたいな謎の(笑)組織(笑)が存在し、特殊な訓練(笑)によって気配や雰囲気はもちろんのこと顔形も自在に変えられるのだろうか。第一なぜ繭子の個人的な復讐に悪のチャーリーズ・エンジェル(笑)は組織ぐるみで協力しているのだ。ひょっとして組織は繭子に乗っ取られたりしているのか。なんだそのサクセス・ストーリーは。

事件の真相はといえば動機その他はともかくも、1982年の生存者-アリバイのある人(貫太、省路)-9年後に殺された人(川嶋)=で犯人自体は第三部の開始早々にわかってしまう親切設計なのもいただけない。文庫版なら下巻の開始時点だぞそれ。
また明らかに長大すぎる分量に「この時は気付かなかったが実はこうだったのだ」と漫画版の「攻殻機動隊」か清涼院流水の「彩紋家事件」ばりにいちいち付される注意書きも鼻につくし、時折思い出したように飛び出してくる作者特有のノリの軽いセリフも浮いてしまっている。


評価できるのは第五部で明かされる物語の構図とタイトルの意味くらいなもので、作者はミステリではなくノワール小説か何かを書いたつもりなのかもしれないが、それにしても牽強付会かつ強引かつ無茶な展開が目につき鼻につき、個人的には少しも楽しめなかった。
西澤保彦はもう読まなくていいかな……。


14.12.17
評価:☆ 1



腕貫探偵、残業中
   


未作成



夢は枯れ野をかけめぐる
   


未作成



スナッチ
   


未作成



マリオネット・エンジン
     


未作成



動機、そして沈黙
   


未作成



身代わり
   


~あらすじ~
ボアン主催の飲み会の帰り、曾根崎は通り魔的に女を襲い、返り討ちに遭った。
住宅街では女子高生が自宅で殺害され、偶然そこを訪れた警官も殺された。犯人はたまたま立ち寄っただけの警官をまるで待ち伏せしていたようで…。
「依存」から1ヶ月後のタックらを描くシリーズ最新長編。

2009年本ミス2位

~感想~
「依存」の後を描く待望の長編だが、前作から実時間で9年が経過し、その次は短編集の「悪魔を憐れむ」が出るまでに8年という例によっての超スローペース。イラスト担当が逝去した「チョーモンインシリーズ」のように打ち切りの心配はないだろうが、さすがにもうちょっとなんとかして欲しい。
既刊で卒業後のタックらの進路は描かれているが、本作時点ではまだ在学中で大きな変化はない。というかよくよく考えたら1ヶ月しか経ってなくて驚いた。もっと経っててもよくない? だが小さな変化はあり、それがシリーズファンには最も読みどころ。
ミステリとしては事件の構図が明かされるところがピークで、犯人も意外ではあるものの、言ってしまえばいつもの短編でできる内容であり、あえて長編として採用したのは事件やトリックよりも物語の構図と「身代わり」というタイトルの意味を重視したからだろう。
本ミス2位は過大評価ながら、シリーズをここまで追ってきたなら是が非でも読むべき一冊ではある。うるさいジェンダー論も少ないし。


23.2.8
評価:★★★ 6

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