柳 広司


黄金の灰
   


~あらすじ~
世界の誰もが夢物語と笑う中、トロイアの遺跡から黄金の山を掘り当てた伝説の探検家シュリーマン。
しかしその史実の裏には謎が謎を呼ぶ異様な事件があった!
歴史の闇に消えた事件の秘密、シュリーマンの秘密、そして世界の秘密とは。


~感想~
著作を連続刊行され波に乗る柳広司のデビュー作。これまた労作である。だが描写とキャラの魅力ですらすらと読み進められるのが氏の特色。
まるで小説上の人物のようにぶっ飛んだ性格のシュリーマンを軸に、消失の謎、密室の謎、動機の謎が乱れ飛ぶ。
デビュー作だけに(?)全ての謎や秘密が渾然一体と溶け合うところまでは行かなかったが、推理のたびに明かされる各人の秘密や、単なる財宝争いに見えた事件の裏に潜む壮大な動機には唖然。
推理が謎を打ち砕き、歪んだ情景を再構成したり、全ての謎が明かされ、しかしそれでも歴然と説明不可能の奇蹟が忽然と立ちのぼるあたり、やはり京極夏彦の匂いを感じる。
柳広司。まだまだとんでもないミステリ書きがいたものだ。


07.3.21
評価:★★★ 6



饗宴
   


~あらすじ~
紀元前5世紀。相次ぐ戦乱の果てにアテナイは暗雲に覆われつつあった。
そんななか、奇妙な事件が連続して発生する。若き貴族が衆人環視下で不可解な死を遂げ、アクロポリスでは異邦の青年がバラバラに引きちぎられたのだ。すべては謎の“ピュタゴラス教団”の仕業なのか?
哲人ソクラテスが、比類なき論理で異形の謎に挑む。


~感想~
哲学者が探偵役――などと尻込む必要はない。文体はいたって平易。御手洗潔をほうふつとさせる奇人ソクラテスのキャラと相まって、簡単に読み進めていける。謎も島田荘司さながらに奇想が冴え、解決に到っては事象を再構築し別の世界を作り上げるという京極夏彦風味。よって、島田・京極のファンならばすんなりと作品世界に入っていけるだろう。
その分、終盤の哲学を利かせた論理の応酬にはちょっとげんなり。勝手な希望だが、もっと鬼面人を驚かす一発トリックを望んでいたのだが。
しかし(僕にはさっぱり解らんけど)ラストはプラトンの著したソクラテスの経歴をそのままなぞり、ソクラテス最後の選択を事件の解決と絡めたあたり、ものすごい技巧である。
書くのに非常に骨の折れるだろう労作ながら、読者に提供するのは解りやすく、楽しい物語。柳広司、ただものではない。


07.3.4
評価:★★★ 6



贋作『坊っちゃん』殺人事件
 


~あらすじ~
赤シャツと野だに鉄拳制裁を喰らわせ、「おれ」が松山を離れた直後、赤シャツは謎の自殺を遂げていた。
再会した山嵐とともに松山に戻ったおれは、事件の思いもよらない根深い真相を突きつけられる。
夏目漱石の名著『坊っちゃん』に秘められた真実とは?


~感想~
歴史上の人物や史実に秘められた(秘められていない)真実を本格ミステリとして掘り起こす労作を放つ作者の出世作。
今回、題材となったのは日本人なら義務教育で一度は読まされる『坊っちゃん』であり、原作に隠された(もちろん作者の夏目漱石はまったく意図していない)真相が明かされるが、事前に『坊っちゃん』をもう一度読み返す必要はなく、とおりいっぺんのあらすじさえ知っていれば存分に楽しめる。
その牽強付会というか、むりやりなこじつけぶりが楽しく、破天荒な青年の日常を描いた原作の裏に、どろどろとした陰謀や背景を潜ませ、当時の社会情勢までたくみに織り込みながら、しっかりと『坊っちゃん』の後日談としても成立させているのだから驚かされる。
しかもこれだけの労力をつぎ込みながら、分量は原作とほぼ同じくらいの薄さで手軽に読めてしまうのもいいところ。ミステリマニアに限らず普通の小説好きにもおすすめできるだろう。


08.12.8
評価:★★★ 6



はじまりの島
   


~あらすじ~
1835年9月、英国海軍船ビーグル号は本国への帰途ガラパゴス諸島に立ち寄った。
ゾウガメとイグアナの楽園に上陸したのは艦長を含む11名。翌日、宣教師の絞殺死体が発見された。犯人は捕鯨船の船長を惨殺し逃亡したスペイン人なのか?
若き博物学者ダーウィンが混沌の中からすくい上げたのは、異様な動機と事件の驚くべき全体像だった。


~感想~
歴史上の人物を主人公に本格ミステリを描き、さらにその事件が偉人の業績に多大なる影響を与えていた――という離れ業をやってのける才人が、今度はダーウィンに食指を伸ばした。
が、なにぶん「神の不在」を解き明かした偉人だけに、哲人ソクラテスを主役に据えた『饗宴』よりもさらに哲学的で、真犯人の動機の破格さはちょっと理解を超えてしまう。不可能殺人のトリックはさすがに意外なところに伏線を忍ばせてくれたが、動機と濃厚な哲学に引いてしまったのが敗因。とはいえ翻訳調の文体と変人ダーウィンの言動でぐいぐいと読ませる手腕は健在。読んで損はない。


08.5.13
評価:★★☆ 5



新世界
   


未作成



パルテノン
   


未作成



ザビエルの首
聖フランシスコ・ザビエルの首 改題
   


~あらすじ~
フランシスコ・ザビエルの遺骸は、死後も腐敗することがなかったという。
だが鹿児島で新しく「ザビエルの首」が見つかり、それを取材した修平は、ミイラと視線を交わした瞬間、過去に飛ばされ、ザビエルが遭遇した殺人事件の解決を託されることに……。


~感想~
歴史上の偉人の業績と本格ミステリを強引かつ緻密に組み上げる作者だが、今回ばかりはその豪腕がふるわれず。
ザビエルを探偵でも狂言回しでもワトソンでもない単なる背景にしてしまったのが最大の弱点。せっかくの題材がただの小粒な短編の雰囲気作りにしか貢献していない。
また、ザビエルの身近な人物に乗り移るという設定もいまいち生かされず、終章にてすべての短編がつながり裏の真相も明かされるが、取ってつけたような、とは言いすぎだかどうにも食い足りないもの。
作者のこれまでの作品群と比較してあまりにも格が落ちる。なんとももったいない。


08.10.14
評価:★★☆ 5



吾輩はシャーロック・ホームズである
   


未作成



トーキョー・プリズン
   


~あらすじ~
戦時中に消息を絶った知人の情報を得るため巣鴨プリズンを訪れた私立探偵のフェアフィールドは、調査の交換条件として、囚人・貴島悟の記憶を取り戻す任務を命じられる。
捕虜虐殺の容疑で拘留されている貴島は、戦争中の記憶を失っていた。
フェアフィールドは貴島の相棒役を務めながら、プリズン内で発生した不可解な服毒死事件の謎を追う。


~感想~
偉人シリーズから離れた一作……はまたも個人的にハズレ。
氏の作風はきわめてオーソドックスで、「ジョーカー・ゲーム」を見てもわかるとおり、意外なトリックも論理の鋭さも発想の飛躍も薄い。
いつもはそれを偉人伝で覆い、奇矯なキャラで物語をひっぱり、史実のエピソードと事件を絡ませる豪腕で補うのだが、そうした装飾を失うと、残るのは当たり前の人物と当たり前の舞台に、いかにもありそうなストーリー展開と裏切りのない結末という平板な物語だけ。
おそらく自身も弱点をわきまえ、偉人伝に活路を見出しているのだろう。なんせ「百万のマルコ」にいたっては、「頭の体操」からそのままトリックを拝借し、なくてもいいようなマルコ伝を付け加え、それでよしとしているのだから。(でも面白いから困る)
個人的には偉人伝から離れた作品はもういいかな~。


09.2.16
評価:★★☆ 5



シートン<探偵>動物記
   


~あらすじ~
悪魔と恐れられる巨大な狼との知恵比べの最中、のどを食い破られた死体に遭遇する「カランポーの悪魔」。
カラスの宝物からダイヤを見つけたことで奇想天外な盗難事件に巻き込まれる「銀の星」等、全7編収録。
自然観察者にして『動物記』の作者シートンが、動物たちをめぐって起こるさまざまな難事件に挑む。


~感想~
作者の真骨頂はスパイ小説や戦争小説ではなく、こうした偉人伝の改作にあると思っているのだが、これは内容的には一息といったところ。
というのも主人公のシートンが、これまでの哲人ソクラテスや、神の不在を解き明かしたダーウィンのような奇人・変人と比べればきわめて常識人のため、ちょっとした動物雑学を交えた小ネタ短編集になっているのだ。
しかも他の偉人伝では、多少のトリックの弱さや話の矛盾は、虚実取り混ぜた物語の面白さと、大胆にアレンジした奇人・変人の吃驚な振る舞いで覆い隠していたのだが、元が「動物好きな優しいおじさんの一代記」のため、事件発生と同時にネタが割れてしまうような、トリックの弱さを全くごまかしきれていない。
せめてトリックにもう一捻りがあれば、だいぶ印象は変わっただろう。


11.9.8
評価:★★☆ 5



百万のマルコ
     


~あらすじ~
黄金があふれる島ジパングで、私は黄金を捨てることで莫大な黄金を手に入れた――。
囚人たちが退屈に苦しむジェノヴァの牢。新入り囚人“百万のマルコ”ことマルコ・ポーロは、彼らに不思議な物語を語りはじめる。いつも肝心なところが不可解なまま終わってしまう彼の物語。囚人たちは知恵を絞って真相を推理するのだが……。


~感想~
連作短編集。一編一編は20ページ程度と短く、気軽に取り組める。
そのぶん内容も薄く、「頭の体操」や中国故事が元ネタの話まで散見され、出題と同時に答えが解ってしまうこともしばしば。しかしそこは20ページ程度なのですらすら読み進められ、多少の質の低さは気にならない。謎と答えよりも熟練の腕前でものされた物語自体が楽しく、それが13編も集まると一定の満足感は得られる。
飛び抜けて面白い一編こそないが、質より量、騙りより語りの物量作戦は成功を収めたと言えよう。
それにしても、13編そろって初めて勝負になるというのに、たった1編取りだして(それも2年連続で)年度代表作としてしまう『本格ミステリ』シリーズの選考基準っていったいなんだろう。(シリーズファン以外は置いてけぼりの『黒の貴婦人』を選んだり)


07.6.4
評価:★★★ 6



漱石先生の事件簿
   


~あらすじ~
『吾輩は猫である』にはこんな真実が隠されていた!
奇矯な先生と奇矯な来客たち、そして名無しの猫と書生の私が織りなす、七転八倒抱腹絶倒の大騒ぎ。


~感想~
大著『吾輩は猫である』に描かれるエピソードの裏に潜む、意外な真実(?)を白日の下にさらす(?)稚気にあふれた佳作。
先生を筆頭に変人奇人たちのやりとりだけでも楽しいのに、スラップスティックにさりげなく伏線を張りめぐらせ、思いもしない真相を隠しているのだから一粒で何度もおいしい。
にぎやかで脳天気な表層の裏に忍び寄る戦争の足音、陰謀に暗闘……。重低音のように響く裏の物語に驚かされる。
白眉は最終話の「春風影裏に猫が家出する」。重くなりかけた雰囲気を一掃する最高の幕切れを見せてくれる。予備知識なしでも楽しめる作品集だが、こればかりは『吾輩は猫である』を読んでいればなおさら輝くことうけあい。
中高生をターゲットとしたレーベルながら、特に大人を満足させてくれるのでは。


07.4.19
評価:★★★☆ 7



ジョーカー・ゲーム
   


~あらすじ~
「魔王」の異名を持つ元スパイ結城中佐により、陸軍内に設立されたスパイ養成学校“D機関”。
「スパイとは“見えない存在”であること」「殺人及び自死は最悪の選択肢」。
これが、結城が訓練生に叩き込んだ戒律だった。軍隊の信条を真っ向から否定する“D機関”の存在は猛反発を招いた。だが、頭脳明晰、実行力でも群を抜く「魔王」は、次々と諜報戦の成果を挙げ、陸軍内の敵をも出し抜いてゆく。

~収録作品~
ジョーカー・ゲーム
幽霊
ロビンソン
魔都
XX


~感想~
例年1つや2つは混じる「ふーん。これでこのミス2位なんだ~」という作品。
本名も経歴も不明という無個性なスパイたちばかり登場するが、したがってキャラ造型も無個性で、結城中佐以外はまったく区別が付かない。
その分、結城という人物のすごさを浮き彫りにさせようという意図だろうが、結城の能力が完璧すぎて浮き世離れしていて、やりすぎ感もただよう。
ではミステリとしてどうかといえば、「スパイならではのトリック」や「スパイならではの世界観」に重きを置きすぎ、「単純なトリックにスパイの感性を当てはめてみました」というだけの安易さがぬぐいされない。伏線も張られたそばからわかるような代物ばかり。ミステリとしての驚きや鋭さがもうすこしあれば……。
っていうか、ワクワクもドキドキも微塵もないスパイ小説ってなんなんだろう。
いかにも評論家や本読みと呼ばれる人種が好きそうな作品ではあるのだが、エンタメ性があまりに低い。
しかし各種ランキングでのきなみ上位なので僕の口に合わないだけだろう。興味のある方はひるまずどうぞ。


08.12.11
評価:★☆ 3



虎と月
     


未作成



ダブル・ジョーカー
   


~あらすじ~
結城中佐率いる“D機関”の暗躍の陰で、もう一つの秘密諜報組織“風機関”が設立された。D機関の追い落としをはかる風機関に対して、結城中佐が放った驚愕の一手とは。表題作「ダブル・ジョーカー」ほか5編を収録。
09年このミス、文春2位。


~感想~
ハズレなしの良質な短編集。前作はスパイ小説なのにドキドキもワクワクもなかったが、今回はその両方をカバーしてきた。
ゴルゴ13ともタイマン張れそうな結城中佐の完璧っぷりに前作では引いてしまったが、免疫ができた今回は素直に楽しめたのもいいところ。
昨今流行の「操り」の構図をさまざまな角度から描いて見せ、謀略戦の妙味を楽しめるまたとない作品である。
……が、やはり「このミス2位」に推すほどの何かがあるとは思えないのだが。
どの短編もクオリティが高いことは認めるが、年度代表作として推せるほどのアピールポイントが僕には見つけられない。いわゆる本読みと呼ばれる人種とは目の付け所が違うのだろうか。


11.2.21
評価:★★★ 6



キング&クイーン
   


~あらすじ~
六本木のバーで働く元SPの冬木安奈のもとに、元チェス世界王者の警護依頼が舞い込む。
依頼者は「アメリカ合衆国大統領に狙われている」というが……。


~感想~
いつもの偉人伝やジョーカーシリーズのような重厚さからは離れ、軽快なタッチで描かれたサスペンス。
古武術の達人のヒロインや奇人の天才チェスプレイヤー、オネエ系の協力者と濃いメンツがそろっているわりに、印象もストーリーもどうにも薄い。それが読みやすさにつながり、終局のある仕掛けに意外さを内包させることはできているのだが。
いちゃもんを付けるようだが、物語の筋も、事件も、なにもかもが注文どおりに流れているようで、うまく行き過ぎているのが、このヒロインの性格をなぞるような、起伏に乏しい無機質な読後感を招いているようである。
しかし展開も犯人の策謀も、チェスの技巧になぞらえているので、こうした印象を抱くことは、作者の狙い通りなのかも知れない。
と、なんだかんだとケチをつけてみたが、気軽に読んで気軽に騙される、小粒ながら良質のミステリではある。


10.12.17
評価:★★★ 6



最初の哲学者
     


未作成



ロマンス
     


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怪談
     


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パラダイス・ロスト
     


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