連城 三紀彦


年上の女
     


~感想~
ノンシリーズ短編集でこれまた「浮気」がテーマ。
「嘘は罪」よりも仕掛けはおとなしめで、これだけ続けて連城短編を読んでいると、ある程度は結末に予想がついてくる。
それでも「恋愛小説でこんなことするの?」と一般的な恋愛小説ファンは戸惑ってしまうのではと思う、構図の反転や伏線の妙味は変わらず、連城ファンならば間違いなく楽しめるだろう。
そして「パターン読めたよ!」と油断したところを狙い澄ました某作の鮮やかな罠に目を剥いたところに続いて叩き込まれる、最後に待ち受ける「砂のあと」の一撃が強烈。
女性週刊誌のようにあけすけな、今なら広末の手紙を思い出す告白が長々と続き、少しだれてきたところで明かされるやばすぎる真相。良い話めいた終わり方してるけどいやいやいやいや、なんでこんなことするの…?と真顔になってしまう。連城の発想恐るべし。


23.7.8
評価:★★★ 6



火恋
     


未作成



秘花
 


~あらすじ~
「お父さん、浮気してるわよ」中学三年の娘・水絵の言葉に動揺する知子。
一方で夫の行広には「お母さんが浮気している」と吹き込む娘の胸中を図りかねる。
そして亡き母ゆいと夫の関係について煩悶する知子に、水絵は思いもよらない告白をする。


~感想~
ゆい、知子、水絵ら三世代の女たちをつなぐ一代記と呼べば据わりがよく、下巻のほぼ全編にわたって描かれる遊郭の女郎の日々を描いた回顧録が、本格バカの自分にすら読ませてしまうもので、ぶっちゃけカバー裏に書かれたあらすじ以上のことは起こらないし、展開に裏切りがないどころか本筋だったはずの話はまるっきり解決しないまま幕を閉じるのだが、描写の上手さはもちろんのこと比喩の的確さ、巧みさに唸るばかりで、肝心なところはいろいろと置き去りにしながらも、ある一つの疑問だけは氷解させるラストまで、熟練の筆さばきに浸るのがただただ幸福。
正直言って連城三紀彦が書いていなければ絶対読むことはないし、間違いなく酷評しているだろう物語だが、自分にとってここまで連城の文章が心地良いものだとは思わなんだ。
まるっきり何もかも解決していないのは難点ながら、ファンならば必読とまでは言わないが、読んで損のない作品である。


上巻 14.7.4
下巻 14.7.19
評価:★★★ 6



ゆきずりの唇
   


未作成



夏の最後の薔薇
     


未作成



白光
   


未作成



人間動物園
   


~あらすじ~
記録的な大雪に覆われた街で、汚職疑惑の渦中にある政治家の孫娘が誘拐された。被害者宅のいたる所に仕掛けられた盗聴器に、一歩も身動きのとれない警察。追いつめられていく母親。そして前日から流される動物たちの血……。二転、三転の誘拐劇の果てにあるものとは。


~感想~
誘拐トリックの新境地。
誘拐ミステリといえばトリックが仕掛けられるのは誘拐方法や身代金の受け渡し手段、犯人の正体などが妥当なところだが、本作では全く予想だにしない部分にトリックが待ち受けており、度肝を抜かれること請け合い。
トリックだけではなくそこは連城三紀彦、圧倒的な筆力で多くの人物を書き分け、しかも誰もかれもが怪しく見える。それでいて複雑な事件も心理描写も解りづらい部分が全くないのだから流石である。
中盤やや流れが止まり冗長になるきらいもあるにはあるが、いかにもといった結末まで飽きさせることはない。誘拐ミステリの白眉。


07.11.24
評価:★★★★ 8



さざなみの家
     


未作成



流れ星と遊んだころ
   


~あらすじ~
花ジンの愛称で親しまれる有名俳優・花村陣四郎のマネージャーの北上梁一は、舞台裏では横暴な花ジンへの怒りを募らせる。
ある夜、バーで出会った女に騙されその恋人に脅迫されるが、梁一は脅迫相手にスター性を見出しデビューを持ちかける。

2003年このミス9位


~感想~
おなじみの、それは嘘→嘘と言ったのは嘘→嘘と言ったのは嘘と言ったのは嘘(嘘とは言ってない)、といった具合に虚実が延々と入れ替わる手法が一人称と三人称の混在でさらにやりたい放題。
しかも舞台は海千山千の有象無象がうごめく芸能界。連城ワールドの芸能界では枕営業も当たり前で、誰も彼もが手段を選ばず他人を騙して益を得ようと手ぐすね引いている。
そんな中で登場人物間だけではなく、読者をも騙そうと企み、それまでの前提の全てが引っくり返る大ネタが仕掛けられているのだが、面白いのはそれが終盤ではなく中盤の段階で明かされるところ。爆弾の投下とともに虚実の反転は控えめとなり、以降は収まるべきところへと収まっていく展開がお見事。
40過ぎの演技経験ほとんど無しのオッサンが才能だけでスターの座に上り詰めることが有り得るかどうか(芸能界広しと言えどもちょっと思い当たらないのだが)に目をつぶれば、いかにも連城らしいやりすぎ感あふれる嘘の洪水と、連城らしからぬやさぐれおじさんの叙情的やさぐれ一人称が同時に堪能できる佳作である。


17.9.25
評価:★★★ 6



嘘は罪
     


~感想~
ノンシリーズ短編集だが様々な趣向があり、まずタイトルが冒頭で単行本版の原題の「夏の最後の薔薇」から始まり「薔薇色の嘘」、「嘘は罪」、「罪な夫婦」と、しりとりで繋げていき、最後の「雨だれを弾く夏」で一巡する。
さらに12作全てが「浮気」をテーマにし、20数ページの分量で殺人事件なしの日常の謎だけで構成されており、非常に凝った構成である。
内容ももちろんどれも連城短編のクオリティを保ち、何作か挙げると冒頭からの4編がいずれも強烈で、さりげなく張られた伏線から構図を反転させたり、全く別の意味を持たせたり、思いもしない展開を導いたりとやりたい放題。これでミステリを書くのはやめて恋愛小説に専念したと言われても説得力ゼロですってば。
冒頭からの4編と言ってしまったが、改めて読み返すとどれもこれも空恐ろしくなるほどすごい仕掛けが施されており、読者が連城短編に求めるものが詰まっている。
これだけ縛りを付けてなお、いや縛りを付けたからこそ研ぎ澄まされた粒ぞろいの一冊である。


23.6.27
評価:★★★☆ 7



棚の隅
     


未作成



造花の蜜
 


~あらすじ~
その二月末に発生した誘拐事件で、香奈子が一番大きな恐怖に駆られたのは、それより数十分前、車の中で事件を察知した瞬間でもなければ、犯人からの最初の連絡を家の電話で受けとった時でもなく、幼稚園の玄関前で担任がこう言いだした瞬間だった。
「だって、私、お母さんに……あなたにちゃんと圭太クン渡したじゃないですか」
それは、この誘拐事件のほんの序幕にすぎなかった。


~感想~
すでに『人間動物園』という誘拐ミステリ史上に残る傑作を放っている作者が、あえてもう一度挑んだ誘拐ミステリ。一発目に勝るとも劣らない良作に仕上がった。
この作者のことだからもちろん、誘拐方法や身代金の受け渡し方法など、普通のところにはトリックを仕掛けない。
その手があったかとあ然とするしかない、とんでもないところにトリックを仕掛け、事件と物語全体を何度もひっくり返してくれる。
白眉は最後の章。それまでの展開を逆手にとり、さらに驚く一手を打ってくれる。
この結末は賛否両論で、たしかに現実を飛び越えてしまったやりすぎ感もあるが、ボーナストラックととらえれば、そのやりすぎ加減もかえって讃えるべきだろう。
このミス期限ギリギリに出版されたため、賞レースに乗れなかったものの、年度を代表しうる出色の一作である。


08.12.4
評価:★★★★ 8



小さな異邦人
     


~収録作品とあらすじ~
昨年亡くなった作者の最後の短編集と銘打たれる。
しかし初出を見ると最新の作品でも2009年なので、もう一冊出せるくらいの短編は残っていそうな。以下感想。

指飾り
別れた妻によく似た後ろ姿の女は、私の前で指輪を道端に放り捨てた。
彼女は本当に妻で、私に気づいているのか。

無人駅
寂しい宿場町に現れた女は不思議に目立つ行動を繰り返す。
女が待っているのは、今日で時効を迎える指名手配の男なのか。

蘭が枯れるまで
造花教室の帰り道、小学生の頃の同級生を名乗る女は、私に夫の交換殺人を持ちかける。
ただの愚痴だったはずの話は次第に具体性を持ち始め――。

冬薔薇
レストランで待つ男に刺し殺される夢を何度も繰り返し見る。
いまレストランに向かっている私は夢? それとも現実?

風の誤算
浮気、武勇伝、恩返し――地味で静かな水島課長にささやかれる無責任な数々の噂。
やがて噂が一つの事件へとつながっていき……。

白雨
記憶から抹消した両親の無理心中が、娘へのいじめにつながっていく。
脅迫しているのは誰か。そして脅迫されているのは娘か私か。

さい涯てまで
北へ北へと向かっていく不倫旅行。駅員の私の前に現れた女は、その旅行先への切符を求め、支払いせずに去っていこうとする。

小さな異邦人
母1人子供8人の9人家族に掛かってきた脅迫電話は言う。「子供を一人誘拐した。3千万円払え」
だが子供たちは8人全員が揃っていて――。


~感想~
指飾り
小さな謎が小洒落て粋なはからいに変わる。その過程で普通に浮気してしまっているのが連城作品らしくて笑えるが、心に残る味わい。

無人駅
怪しい女の奇行が意外な事実にたどり着くが、そんなことよりも一つ一つの小さな描写が物語として必要なところにぴたりぴたりとはまっていくのが素晴らしい。この一編に限った話ではないが、余裕で中~長編に昇華できるだけの濃密さがある。

蘭が枯れるまで
ありがちな交換殺人を結末でこんなところに落とし込むとはさすが連城三紀彦。
ラスト数ページはあまりの超展開に「ちょっと待てちょっと待て」と目を剥き大混乱に陥った。
歴代短編でベストに挙げる人もいるだろう。

冬薔薇
作者の数々の長編を思い起こさせる幻想的な一編。
しかしとうてい現実の出来事に置き換えるのは無理そうな話を……。と読者の期待を裏切らない。

風の誤算
いくらなんでもこんなに様々な噂の的になる人間はいないが、怪談のような展開が落ち着いた後に、もう一つの別種の怪談的な事実が浮かび上がるのが面白い。

白雨
そう来たか! 娘へのいじめと過去の無理心中が一つに重なっていき、顛倒した論理から導き出される真実はとんでもない予想外のものに。作者の発想と稚気はいささかも衰え知らず。

さい涯てまで
要するにバカップルの不倫旅行とその破局という単純な筋に、謎めいた女と過去を絡めて一級の恋愛譚、しかもミステリとして仕立て上げてしまう。結末も決まり、これぞ連城短編と言いたくなる。

小さな異邦人
これが本当に遺作だとして、最後の最後に作家人生でもベスト級の短編を書いてしまうなんて、奇跡としか言いようがない。
すでに長編で「造花の蜜」「人間動物園」、短編で「過去からの声」と全ミステリの中から誘拐物のランキングを作っても上位に入るだろう作品をいくつも出している作者が、またしても誘拐物の新境地を切り拓いた。
魅力的な導入部から意外すぎる真相、張りめぐらされた伏線と見事な結末。まだこんな手があったとは!


~総括~
遺作だとか7年ぶりの短編集だとかそんな背景はおいといて、手放しで絶賛せざるを得ない傑作短編集。
8編揃ってハズレ無し、しかも作者の無数の短編の中でもベストに挙げられる作品がいくつも光る。
どこまでも恋愛小説でありながらどこまでもミステリであり、作家として晩年であろうと連城三紀彦はいつまでも連城三紀彦であった。


14.3.28
評価:★★★★☆ 9



処刑までの十章
     


~あらすじ~
朝、いつものように家を出た夫・西村靖彦はそのまま行方をくらませた。
土佐清水で起こった放火事件と夫をつなぐ「五時七十一分」という謎めいた言葉。
残された妻・純子と義弟・直行は靖彦の影を追うが、やがて直行は義姉に疑念を抱く。


~感想~
追悼、連城三紀彦。
病床で書き上げた遺作で、ただでさえ一字一句をゆるがせにできない濃密な筆致の作家なのに千枚超の長編で、あらすじの部分にたどり着くまでに500枚経過と、正直に言うと半分ほど読んだあたりで「もう真相はどうでもいいから早く終わってくれ」という気分になってしまったが、最後の最後にまったく予想だにしなかった真相が立ち上がってきて救われた。
それがなければぶっちゃけ4点以下を付けていたところだし、解決編は闘病中の影響もあってかページを埋め尽くす勢いで一人語りして強引に幕を閉じる急ぎ足で、雑誌での連載終了から2年近く放置されていたのもむべなるかなというところ。

また何かというと謎めいたセリフを吐き散らし事態を混乱させた人妻が(ネタバレ→)
終わってみれば単なる中二病気味のドジっ子なあたりは、連城短編の登場人物らしくはあるものの、長編でこれをやられると殺意を覚えた読者も多いはず。
彼女はもしシリーズ作品に出れば西之園萌絵と犬坊里美が火花を散らす「殴りたいミステリヒロイン」ランキングでベスト10も狙える逸材ではなかろうか。

結末こそ予想外だったが、そこに至るまでにどいつもこいつも晦渋なセリフで怪しげな行動を取り、わかってみれば決して難しくない真相を韜晦して見せるのは甚だ迷惑きわまりない。
しかし衰え知らずの比喩や描写力はさすがの冴えで、期待通りに読み応えのあるいつもの連城長編なので、ファンは腰を据えてじっくりとどうぞ。
でももう一つの(今後ももっと増えそうな)遺作「女王」はしばらくは置いといていいかな……。


14.12.9
評価:★★★ 6



女王
       


未作成



連城三紀彦 レジェンド 傑作ミステリー集
       


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わずか一しずくの血
       


未作成



連城三紀彦 レジェンド2 傑作ミステリー集
       


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悲体
       


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六花の印 連城三紀彦傑作集1
       


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落日の門 連城三紀彦傑作集2
       


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虹のような黒
       


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黒真珠
       


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