※おぎぬまX「キン肉マン 四次元殺法殺人事件」完全ネタバレ感想


◆四次元殺法殺人事件
まず冒頭に多彩すぎる能力者のブラックホールを容疑者に置いたのが大正解。
その気になればどんな犯罪でもできるブラックホールの登場で、原作で使える技は当然全て使える本作がミステリとしてなんでもありの世界だと示した。
被害者のペンタゴンも「顔にちょっとでも手が触れられればクロノス・チェンジで逆転できる」チート能力持ちで、そもそもパイルドライバーで殺しようがないという矛盾も「自殺」という明快な回答で、ジャック・チー戦でさえ使わなかったストップ・ザ・タイムも絡めてきたのには唸った。
さらに感心したのは時系列で、本作が王位争奪編と始祖編の間で、それにも関わらず始祖編で活躍するペンタゴンが死ぬ展開は、何が起こってもおかしくないと印象付けることに成功している。
自殺の動機も始祖編へとつながるもので、サブタイトルに採られるだけはある出色の一編である。


◆蘇った被害者
ここでもオメガの六鎗客編で戦うティーパックマンがあっさり死亡w
六鎗客編で意地を見せたカナディアンマンが悲しいほどヘタレだが、超人様でもこんなだったし、スピンオフなら問題ない。
トイレでの事件という時点で読者にはベンキマンの擬態説がずっと見えていて、タイルマンの存在を(覆い隠せるほどではないが)それなりに消しているのも上手い。「言われてみればタイルマンっぽい壁」という強引な解釈もその通りだからしょうがないw
何よりも「超人強度を分け与えれば生き返る」設定から逃げることなく立ち向かい、カナディアンマンを絡めることで拒否させる展開も実に上手い。あいつパイレートマン戦でも相手が8000万パワーあるとも知らず100万パワー誇ってたもんな…。
タイルマンの超人強度があの見かけで20万と集まった面々で一番低いのも笑った。


◆1000万の鍵
ルピーンって。ルピーンがどんな超人なのか読者どころかたぶん作者も知らない。驚異の1万パワーなのも初めて知った。
1000万パワーでしか破れないと来れば読者にはずっとウォーズマンの例の計算式が頭にある。そこでウォーズマンがルピーンの変装となると、トリックは例の計算式ではないと頭から消してしまい、かえって盲点になるという仕組みが上手い。
そりゃルピーンが1000万パワー行く訳がないが、もともとウォーズマンも「両手にベアークロー着けただけで2倍」というお手軽さで実現しており、ギャグ的な展開ならば全然ありだろう。
ガンマン戦でも言及された通り、バッファローマンが実は知的な策士だというのも、作者はよくわかっているのもいいし、ロングホーントレインも「非力なキン骨マンが担げるのか」という根本に目をつぶれば問題ない。超人強度は生まれた時から不変なので、意識を失っていようがバッファローマンをぶつけさえすれば1000万パワーは乗るのである。超人強度は変わらない設定を悪用するなw


◆呪肉館殺人事件
ミスターVTRとバイクマンww
ブラックホールくらいなんでもできるミスターVTRが本当にやりたい放題やって密室トリックを作り上げたのが最高。マリポーサの忠臣設定は特になかったはずだが、原作でもサタンクロスがフェニックスに謎の忠誠心を発揮してたし。王位争奪編のチームは基本的にみんな仲が良い。
ドネルマンという偽名はケバブよりむしろシャネルマンを思い出させ、それも正体を示唆している。田代とか黒塗りとかコンプライアンス的に言及しづらいがおそらくそのつもりもあっただろう。
スグル失踪の理由がただ王の職務から逃げただけだったのはがっかりだが、スグルの逃げ癖は今も試合のたびに発揮されているから原作再現ではある。
ここまで3編で夢の超人タッグ編、超人オリンピック、七人の悪魔超人と来て王位争奪編で締める流れも綺麗で、シシカバ・ブーでギャグ漫画時代も回収したのが見事。マスク交換すれば入れ替われるのはU世究極超人タッグ編の父子対決も思い出させる…と考えるのはちょっと穿ち過ぎだろうか。


◆エピローグ
全ての決着をリングで着けるはずの肉世界で殺人事件が起こる理由を、こう処理してきたのには恐れ入った。
重度のキン肉マン中毒にしかできない発想の数々をいくつも見せてもらい、実に面白いスピンオフだった。続編が出たら絶対買うしぜひ出て欲しい。

ブログへ戻る