



〇四二 髀肉の嘆
荊州(けいしゅう)
![]() |
![]() |
| 劉備 (りゅうび) |
張飛 (ちょうひ) |
劉表の客将 |
劉備の義弟 |
![]() |
「曹操さんが袁紹さんを討伐した功績で、丞相(じょうしょう)に昇進したそうじゃ。 景気のいい話じゃのう」 |
| 劉備 (りゅうび) |
![]() |
「丞相といえば皇帝陛下に継ぐ最高位ですね。まさに『位人臣を極める』というわけですか」 |
| 劉表 (りゅうひょう) |
![]() |
「曹さんが丞相なら、表さんは司徒(しと)くらいになってもいいのになあ」 |
| 劉備 (りゅうび) |
![]() |
「ははは。とんでもない、私はそんな大した人物ではありませんよ」 |
| 劉表 (りゅうひょう) |
![]() |
「いやいや、わしらを始め、多くの優れた人材が表さんを慕って、この荊州に集まっとるんじゃ。 わしらも新野(しんや)の城をもらって、もう8年近くお世話になっとる。 こんな太っ腹な人がそういるものか。謙遜しなさんな」 |
| 劉備 (りゅうび) |
![]() |
「曹操さんが北へ遠征している間、荊州は平和でしたからね。ただそれだけのことですよ」 |
| 劉表 (りゅうひょう) |
![]() |
「私も、こんなしがない料理人を拾っていただいて感謝しています……。 さあさあ、お肉が焼けましたよ。召し上がってください……」 |
| 劉安 (りゅうあん) |
![]() |
「劉安さんは何度も奥方を亡くされて、それでも立派に料理人を続けています。私も感謝していますよ」 |
| 劉表 (りゅうひょう) |
![]() |
「おお、これは旨そうじゃ! それにしても安さんはなんの肉を使っとるんじゃ? 牛でもないし、馬でもない……?」 |
| 劉備 (りゅうび) |
![]() |
「企業秘密でございます」 |
| 劉安 (りゅうあん) |
![]() |
「ちょっとちょっとアンタたち、大変よ!」 |
| 張飛 (ちょうひ) |
![]() |
「なんじゃい張さん、騒がしいのう。わしら三人は皇族会議を開いておる最中じゃぞ」 |
| 劉備 (りゅうび) |
![]() |
「名字が陛下と同じ劉だってだけで、なにが皇族だか……。 そんなことより大変なのよ。曹操からの使者が来たのよ!」 |
| 張飛 (ちょうひ) |
![]() |
「ほほう、曹操さんからですか。いったいどんなご用事でしょうね」 |
| 劉表 (りゅうひょう) |
![]() |
「……降伏勧告だそうよ。 おとなしく降伏しなければ、荊州はかつて大虐殺を行った徐州(じょしゅう)の二の舞になるって」 |
| 張飛 (ちょうひ) |
荊州 襄陽(じょうよう)
![]() |
| 禰衡 (でいこう) |
曹操の使者 |
![]() |
「フン、どいつもこいつもシケた面しやがって。劉表はまだか!」 |
| 禰衡 (でいこう) |
![]() |
「お待たせしました。荊州刺史の劉表でございます」 |
| 劉表 (りゅうひょう) |
![]() |
「やっと来たか老いぼれめ! こんなド田舎からはさっさと引き上げたいからな。 単刀直入に用件を言ってやるから、5秒で返事しろ。 曹操丞相に降伏しやがれ!」 |
| 禰衡 (でいこう) |
![]() |
「ははあ。それは藪から棒に――」 |
| 劉表 (りゅうひょう) |
![]() |
「5秒経ったぞ! 能書きはいいから返事しろ!」 |
| 禰衡 (でいこう) |
![]() |
「待たれよ使者殿。そんな重大な案件を即答するわけには――」 |
| 蒯越 (かいえつ) |
![]() |
「百万の大軍がこの荊州に向かっている! 断れば死、あるのみだ! わかったらさっさと答えやがれ!」 |
| 禰衡 (でいこう) |
![]() |
「私どもはいま、孫権さんと戦っています。 もし我々が降伏したら、孫権さんへの対処はどういたすのですか?」 |
| 劉表 (りゅうひょう) |
![]() |
「知れたことを。孫権も踏み潰すまでだ!」 |
| 禰衡 (でいこう) |
![]() |
「それでは江夏(こうか)で孫権さんに応戦している黄祖(こうそ)さんにも、その旨お知らせください」 |
| 劉表 (りゅうひょう) |
![]() |
「!」 |
| 蔡瑁 (さいぼう) |
![]() |
「黄祖さんが同意されれば、私どもも降伏いたしましょう」 |
| 劉表 (りゅうひょう) |
![]() |
「フン、主人のお前が部下に頭が上がらんのか? 劉表という男は噂ほどではないな! それならもうお前に用はない。黄祖とやらに会ってやる」 |
| 禰衡 (でいこう) |
![]() |
「行ったか……。だが劉表、黄祖に会えだなんてお前、黄祖は間違いなく――」 |
| 蔡瑁 (さいぼう) |
![]() |
「ええ。彼を丁重におもてなしするでしょうね」 |
| 劉表 (りゅうひょう) |
![]() |
(どうせ孫権との戦いで死んでもらう黄祖に、とことん泥をかぶってもらうというわけか……) |
| 蔡瑁 (さいぼう) |
許昌(きょしょう)の都
![]() |
| 曹操 (そうそう) |
後漢の丞相 |
![]() |
「使者として荊州に赴いた禰衡は、劉表配下の黄祖に殺されたそうです」 |
| 荀攸 (じゅんゆう) |
![]() |
「ふむ。劉表君もなかなかやるものだね。 程昱君の発案で、禰衡君に挑発させて、怒った劉表君が抗戦を決意し、 荊州を主戦派と降伏派に分裂させ、その隙をつく計略だったんだけど、うまく処理したものだ」 |
| 曹操 (そうそう) |
![]() |
「ならば次は、使者を殺したことを責めてやろう」 |
| 程昱 (ていいく) |
![]() |
「お詫びに使者を殺した黄祖の首を送ってきて終わりではないか?」 |
| 劉曄 (りゅうよう) |
![]() |
「いや、黄祖を処刑したいところだが孫権と交戦中でできないと、時間を稼いでくるだろう」 |
| 賈詡 (かく) |
![]() |
「あはは。それならとるべき道は一つしかありませんね。 劉表のもとには、殿の暗殺未遂で追われている劉備がいます。 劉備を引き渡すよう迫るのです」 |
| 荀彧 (じゅんいく) |
![]() |
「それが妥当な線だろうね。ついでにもう少し脅しをかけておこう。 ――曹仁君。10万の兵を率いて荊州に向かってくれるかい」 |
| 曹操 (そうそう) |
![]() |
「待ってました!」 |
| 曹仁 (そうじん) |
![]() |
「おそらく劉備君が迎撃に出てくるだろう。兵力は少ないが、百戦錬磨の相手だ。 くれぐれも用心したまえ」 |
| 曹操 (そうそう) |
荊州 襄陽(じょうよう)
![]() |
「曹操から次の使者が来たそうだな。 前の使者を殺したことは不問に付してやるから、逆賊の劉備を差し出せというわけか。 それでどう返事したんだ?」 |
| 蔡瑁 (さいぼう) |
![]() |
「今度の使者殿は気の長い方ですから、返事はまだ待ってくれています」 |
| 劉表 (りゅうひょう) |
![]() |
「悠長なことを……。迷うまでもない、劉備を殺すんだ」 |
| 蔡瑁 (さいぼう) |
![]() |
「おやおや。物騒なことをおっしゃいますね蔡瑁さんは。 劉備さんに危害を加えて、その後はどうします?」 |
| 劉表 (りゅうひょう) |
![]() |
「我々に曹操に抗う力はない。降伏するしかないだろうな」 |
| 蔡瑁 (さいぼう) |
![]() |
「私に荊州を手放せとおっしゃるのですね?」 |
| 劉表 (りゅうひょう) |
![]() |
「俺は曹操と旧知の仲だ。仲裁してやるから、おとなしく降れば命までは取らんだろう。 それとも曹操と戦って勝つ自信があるのか?」 |
| 蔡瑁 (さいぼう) |
![]() |
「あと三年あれば、勝ち目が見えてきます」 |
| 劉表 (りゅうひょう) |
![]() |
「……本当か?」 |
| 蔡瑁 (さいぼう) |
![]() |
「孫権さんは黄祖さんの首さえ取れば満足するでしょう。 そうしたら孫権さんと和睦し、曹操さんの背後を襲ってもらいます。 さらに都にいる馬騰(ばとう)さんは陛下に忠誠を誓っている方です。 彼や関中(かんちゅう)に残った息子の馬超さんたちに蜂起してもらい、これも背後を脅かします。 これで我々とあわせ三方からの挟撃です。曹操さんといえども少々お困りになるでしょうね」 |
| 劉表 (りゅうひょう) |
![]() |
「そのための手は打ってあるのだな。相変わらず恐ろしい陰謀家だよ、お前は」 |
| 蔡瑁 (さいぼう) |
![]() |
「……しかし、一つだけ問題があります。 名医に診ていただいたところ、私の寿命はもってあと一年です」 |
| 劉表 (りゅうひょう) |
![]() |
「な……ッ!?」 |
| 蔡瑁 (さいぼう) |
![]() |
「とても残念ですね。曹操さんと天下を争いたかったものです。 私の亡き後、息子たちではとても曹操さんにはかないません」 |
| 劉表 (りゅうひょう) |
![]() |
「………………」 |
| 蔡瑁 (さいぼう) |
![]() |
「せっかく集めた荊州の兵や人材は失いたくありません。 なんとか穏便に事を済ませたいものです。そのためには……わかりますね?」 |
| 劉表 (りゅうひょう) |
![]() |
「ああ。やはり劉備は除かねばならんな……」 |
| 蔡瑁 (さいぼう) |
荊州 襄陽
![]() |
![]() |
| 関羽 (かんう) |
伊籍 (いせき) |
劉備の義弟 |
劉表の家臣 |
![]() |
「ほれほれ見てみい! この毛並み! この筋肉! こいつはまさに名馬じゃぞ!」 |
| 劉備 (りゅうび) |
![]() |
| 的盧 (てきろ) |
![]() |
「………………( ´,_ゝ`)プッ」 |
| 関羽 (かんう) |
![]() |
「んん? 関さんは何か言いたそうじゃな。そりゃ関さんの赤兎馬(せきとば)にはかなわんが、 それでもこれは天下にそうはいない名馬じゃぞ。 いやー王威(おうい)さんはええもんを譲ってくれたのう!」 |
| 劉備 (りゅうび) |
![]() |
「でもせっかくもらった名馬だけどさ、今のアンタは乗れるのかしら」 |
| 張飛 (ちょうひ) |
![]() |
「わはは。平和続きですっかりなまってしまったからのう。馬の乗り方も忘れてしもうたかもしれん」 |
| 劉備 (りゅうび) |
![]() |
「本当にもうやんなっちゃうわ。アタイもこんなに太ももにお肉が付いちゃって……」 |
| 張飛 (ちょうひ) |
![]() |
「劉安さんに削ぎとってもらって、食べちまったらどうじゃ?」 |
| 劉備 (りゅうび) |
![]() |
「……ぜんぜん洒落になってないし、だいたいこれはアタイのセリフじゃない気がするわ」 |
| 張飛 (ちょうひ) |
![]() |
「おっ。張さんのメタ発言がまた出たぞ。 それはそうと、この馬の名前は何にしようかのう」 |
| 劉備 (りゅうび) |
![]() |
「……それは的盧です」 |
| 伊籍 (いせき) |
![]() |
「おお伊籍さん。なんじゃ、こいつにはテキロという名前があったんか」 |
| 劉備 (りゅうび) |
![]() |
「いえ、名前ではありません。 額に星のある馬を的盧と言いまして、乗る者に災いをもたらすと言われています」 |
| 伊籍 (いせき) |
![]() |
「……それホント? 王威はなんだってそんなものをくれたのかしら」 |
| 張飛 (ちょうひ) |
![]() |
「劉備様、蔡瑁将軍がお呼びです。至急ご相談したいことがあるとか」 |
| 孫乾 (そんけん) |
![]() |
「おう、また宴会の誘いじゃな。すぐ行くと伝えて――」 |
| 劉備 (りゅうび) |
![]() |
「待ちなさい! 話が読めたわ。これは王威からの警告よ。 アンタに的盧を贈ることで、危機が迫っていると遠回しに教えてくれたのよ。 蔡瑁はアンタを、いえアタイたちを殺すつもりだわ!」 |
| 張飛 (ちょうひ) |
![]() |
「またまた~。張さんはすぐに人を疑うんじゃから」 |
| 劉備 (りゅうび) |
![]() |
「……私も張飛殿と同じ考えです。 曹操が劉備殿を差し出すよう要求していると噂を聞きました。 それで注意をうながすためにここに来たのです」 |
| 伊籍 (いせき) |
![]() |
「…………マジでか」 |
| 劉備 (りゅうび) |
![]() |
「先輩! 蔡瑁の手の者が屋敷を包囲しようとしてるッス! 早く逃げるッス!」 |
| 趙雲 (ちょううん) |
![]() |
「そら、おいでなすったわよ! ここはアタイらが食い止めるからさっさと逃げなさい!」 |
| 張飛 (ちょうひ) |
![]() |
「え、で、でもこれは凶馬なんじゃ――」 |
| 劉備 (りゅうび) |
![]() |
「乗り換えてる暇はない!!」 |
| 張飛 (ちょうひ) |
![]() |
「うひゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ……!!」 |
| 劉備 (りゅうび) |
荊州 郊外
![]() |
| 水鏡先生 (すいきょう) |
隠居 |
![]() |
「やれやれ、酷い目にあったわい……。 張さんが的盧の尻を思いっきりぶっ叩いたおかげで、百里は走っちまったぞ。 いったいここはどこなんじゃ?」 |
| 劉備 (りゅうび) |
![]() |
「ほうほう、これはグッジョブな馬じゃなあ」 |
| 水鏡先生 (すいきょう) |
![]() |
「おっ、じいさん良い所に来たな。ちと道に迷ってしもうたんじゃが、ここはどこじゃ?」 |
| 劉備 (りゅうび) |
![]() |
「ここは荊州の端の端、水鏡先生の庵じゃ。グッジョブ!」 |
| 水鏡先生 (すいきょう) |
![]() |
「酔狂? 群青? よくわからんが、わしは襄陽に帰りたいんじゃ。道を教えてくれ」 |
| 劉備 (りゅうび) |
![]() |
「襄陽に帰ったら蔡瑁に殺されるぞ、劉備よ」 |
| 水鏡先生 (すいきょう) |
![]() |
「…………なんでわしが劉備じゃと知っておる」 |
| 劉備 (りゅうび) |
![]() |
「そのウサギのように大きな耳。サルのように長い手。それで劉備でなかったら首をくれてやろう」 |
| 水鏡先生 (すいきょう) |
![]() |
「わはは。言われてみればもっともじゃ。わしも有名になったのう。 でも、なんでわしが蔡瑁さんに追われておると知ってるんじゃ?」 |
| 劉備 (りゅうび) |
![]() |
「そのくらいのことは、この水鏡先生にはお見通しじゃ。 そのうち迎えの者が来るじゃろうから、一服していきなされ」 |
| 水鏡先生 (すいきょう) |
![]() |
「不思議なじいさんじゃなあ。どうせ帰り道はわからんし、せっかくだからお邪魔するわい」 |
| 劉備 (りゅうび) |
荊州 水鏡先生の庵
![]() |
「それにしても劉備、お前は逃げてばかりじゃなあ」 |
| 水鏡先生 (すいきょう) |
![]() |
「わはは。痛いところを突くのう。たしかにわしは戦に三回くらいしか勝った覚えがないぞ」 |
| 劉備 (りゅうび) |
![]() |
「それでも生き延びておるのはたいしたものじゃが……。 しかし劉備よ、なぜ勝てぬのかわかるか?」 |
| 水鏡先生 (すいきょう) |
![]() |
「わしが無能で弱いからじゃろう」 |
| 劉備 (りゅうび) |
![]() |
「なぜ弱いのじゃ? お前はぼんくらでも、関羽や張飛のような豪傑がそろっておるではないか。 兵の多寡は問題ではないぞ。曹操は十倍近い兵を持つ袁紹を破っておる」 |
| 水鏡先生 (すいきょう) |
![]() |
「そりゃあ曹さんは頭が良いし、優秀な軍師がたくさんおるじゃないか」 |
| 劉備 (りゅうび) |
![]() |
「グッジョブ! わかっておるではないか。 お前に足りんのは軍師じゃ。張飛もなかなの切れ者じゃが、軍師と呼べるほどではない。 それなのになぜ軍師を求めん?」 |
| 水鏡先生 (すいきょう) |
![]() |
「いやあ、わしとて探してはおるぞ。 しかし名の知れた者はのきなみ曹さんや表さんに取られちまって、誰も残っとらんわ」 |
| 劉備 (りゅうび) |
![]() |
「この荊州は人材の宝庫。さながら汲めども尽きぬ泉のごとしじゃ。 まーだまだ人材はおるぞ。それがお前には見えておらんだけじゃ」 |
| 水鏡先生 (すいきょう) |
![]() |
「そりゃ景気のいい話じゃな。ほんなら誰か紹介してくれんかのう」 |
| 劉備 (りゅうび) |
![]() |
「それはグッジョブとは言えんな。人材は自らの足で探すものじゃ。 だが、これも何かの縁じゃ。手がかりくらいは教えてやろう。 伏龍(ふくりゅう)と鳳雛(ほうすう)を探しなされ。 そのいずれかを迎えられれば、お前は大きく飛躍できることじゃろう」 |
| 水鏡先生 (すいきょう) |
![]() |
「伏龍と鳳雛…………」 |
| 劉備 (りゅうび) |
![]() |
「せんぱーい! 劉備せんぱーい!」 |
| 趙雲 (ちょううん) |
![]() |
「グッジョブ! ちょうどお迎えが来たようじゃ。行きなされ」 |
| 水鏡先生 (すいきょう) |
![]() |
「おう、いろいろ世話になったのう。 ――龍さん、わしはここじゃ」 |
| 劉備 (りゅうび) |
![]() |
「先輩! ご無事でよかったッス! 爆走する馬を手がかりに追ってきたら、村人が先輩なら水鏡先生の庵だと教えてくれたッス」 |
| 趙雲 (ちょううん) |
![]() |
「ご苦労じゃったな。ほんで、他のみんなはどうしとる?」 |
| 劉備 (りゅうび) |
![]() |
「みんな新野に逃げ込んだッス。 蔡瑁の追っ手は劉備先輩だけ狙ってたようで、数は少なかったッスから」 |
| 趙雲 (ちょううん) |
![]() |
「そりゃ良かった。ほんじゃ新野に戻るかのう」 |
| 劉備 (りゅうび) |
![]() |
「しかし……新野には曹操の大軍が迫ってるッス」 |
| 趙雲 (ちょううん) |
![]() |
「ほう! 曹さんがついに動きよったか」 |
| 劉備 (りゅうび) |
![]() |
「劉表先輩は援軍を送ってくれないし、蔡瑁も処罰してません。 どうやら自分らを見殺しにするつもりッス!」 |
| 趙雲 (ちょううん) |
![]() |
「わはは。わしらは8年も表さんにお世話になったんじゃ。文句を言ったらバチが当たるぞ。 表さんには荊州を守る道理はあっても、わしらを助ける義理はないんじゃしな。 どれ、表さんへの恩返しにいっちょ曹さんを撃退してやろうかのう!」 |
| 劉備 (りゅうび) |
![]() |
「先輩…………」 |
| 趙雲 (ちょううん) |
![]() |
(なるほど、これがぼんくらの劉備が唯一持っている強さじゃな。まさにグッジョブじゃ! この男、気に入ったぞ。伏龍か鳳雛か、いずれかを手にしてもらいたいものじゃ……) |
| 水鏡先生 (すいきょう) |
荊州 山中
![]() |
「御主人様、気をつけるです。誰か、いや何かがいるです」 |
| ?? (??) |
![]() |
「ほう、これは珍しい。仙人か」 |
| ?? (??) |
![]() |
「……人の子よ。近い将来、お前をある男が訪ねてくる。 その男を助ける力となるものを貸してやろう……」 |
| 南華老仙 (なんかろうせん) |
![]() |
| 太平要術の書 (たいへいようじゅつのしょ) |
![]() |
「なんだこれは」 |
| ?? (??) |
![]() |
「太平要術の書……。これを用いればあらゆる仙術が操れよう……」 |
| 南華老仙 (なんかろうせん) |
![]() |
「くだらん。死ね」 |
| ?? (??) |
![]() |
「はい、殺すです」 |
| ?? (??) |
![]() |
「な!? ひ、人の子よ。何をするのだ!」 |
| 南華老仙 (なんかろうせん) |
![]() |
「仙術だと? そんな物が余の役に立つと思ったか。 そんな物を用いなければならぬほど、余が無能だと思ったか。 その罪、万死に値する」 |
| ?? (??) |
![]() |
「はい、一万回殺すです」 |
| ?? (??) |
![]() |
「ぐううっ!」 |
| 南華老仙 (なんかろうせん) |
![]() |
「ほう、さすが仙人だ。心臓を貫いたくらいでは死なぬのか」 |
| ?? (??) |
![]() |
「それでは一万回刺してみるです」 |
| ?? (??) |
![]() |
「何回目で死ぬか興味深いな」 |
| ?? (??) |
![]() |
「ぐああああっ! じ、冗談ではない! お、愚か者め……後悔するがいい!」 |
| 南華老仙 (なんかろうせん) |
![]() |
「仙人もあのような捨て台詞を吐くのだな。なかなか面白い余興だったぞ」 |
| ?? (??) |
![]() |
「23回では死にませんでした」 |
| ?? (??) |
![]() |
「次に仙人に会ったらとりあえず24回刺してみよう」 |
| ?? (??) |
![]() |
「はい、承知したです。 ――御主人様、その本をどうされるのですか?」 |
| ?? (??) |
![]() |
「忘れていったから預かってやるのだ」 |
| ?? (??) |
![]() |
「御主人様には必要なかったのではないですか?」 |
| ?? (??) |
![]() |
「暇つぶしにはなるだろう」 |
| ?? (??) |
![]() |
「結局もらうならあの仙人は刺され損ですね。さすが御主人様です。まさに外道です」 |
| ?? (??) |
![]() |
「黙れ。死ね」 |
| ?? (??) |
![]() |
「嫌です」 |
| ?? (??) |
![]() |
「死ね」 |
| ?? (??) |
![]() |
「嫌です」 |
| ?? (??) |
かくして曹操はついに南下を開始した。 孤立無援で矢面に立たされた劉備に勝機はあるのか? そして劉備の求める軍師は現れるのか? |
| 〇四三 名無しの軍師 | へ |