



〇四〇 袁煕の秘策
鄴(ぎょう)
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「ようやく鄴を攻略できたか。手こずらせやがって」 |
| 袁譚 (えんたん) |
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「審配(しんぱい)君はこんな小勢で籠城していただけじゃなく、 僕らが逃げる袁尚(えんしょう)君を追撃できないよう、兵を出して食い止めたんだから立派なものだ。 降伏を拒んで自害してしまったが、ぜひ配下に迎え入れたい逸材だったよ」 |
| 曹操 (そうそう) |
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「曹操殿、袁尚は袁煕(えんき)と合流したようです。 奴らが勢力を盛り返す前に叩いてしまいましょう」 |
| 郭図 (かくと) |
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「いえ、鄴を落としたとはいえここはまだ敵地なのですから、まずは足元を固めるべきです。 急ぎ兵を進めて、背後で袁紹の旧臣に蜂起されたら一転して窮地に立たされます。 これ以上の進撃は見合わせ、内政を重視し、民衆を手なずけましょう」 |
| 荀攸 (じゅんゆう) |
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「荀攸の言うとおりじゃ。袁煕は後方に控えていたから大軍を擁しておる。 攻めるにしてもじっくりと策を練ってからじゃな」 |
| 程昱 (ていいく) |
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「そうだね。袁紹君の領土は広大だ。焦らず着実に攻めていくとしよう」 |
| 曹操 (そうそう) |
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(チッ。とっとと袁尚を片付けて、袁家の後継者が俺だと示したいのによ) |
| 袁譚 (えんたん) |
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「ところで袁譚君。 袁尚君は無理でも、君が弟の袁煕君を説得して、味方につければ戦わなくても済むんだけど」 |
| 曹操 (そうそう) |
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「袁煕のヤローとは気が合わないんだ。 あいつは子供の頃からヘラヘラして何を考えてるかわからない。説得なんてできやしない」 |
| 袁譚 (えんたん) |
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「家庭の事情ならしかたないね。それじゃあ袁譚君、君との同盟はここまでだ」 |
| 曹操 (そうそう) |
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「……あ?」 |
| 袁譚 (えんたん) |
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「もう君に利用価値はない。鄴攻略の手助けのお礼として、本拠地には返してあげるから、 僕に降伏するか、それとも抵抗するか、みんなと相談してくるといいよ」 |
| 曹操 (そうそう) |
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「あ……? あ……?」 |
| 袁譚 (えんたん) |
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「そ、曹操殿! そ、そんなご無体な!」 |
| 郭図 (かくと) |
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「わっはっはっ。いい気味だ。無事に逃がしてもらえるだけ感謝するのだな」 |
| 王朗 (おうろう) |
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「バーカバーカwwwwww」 |
| 許攸 (きょゆう) |
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「 」 |
| 袁譚 (えんたん) |
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「許褚君、袁譚君たちは帰り道がわからないようだ。案内してあげたまえ」 |
| 曹操 (そうそう) |
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「ああ、こっちだ。とっとと帰れ」 |
| 許褚 (きょちょ) |
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「――殿、降伏した辛毗殿が面会を求めています」 |
| 董昭 (とうしょう) |
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「お初にお目にかかります」 |
| 辛毗 (しんぴ) |
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「君の名前は聞いているよ。剛直な男だと聞いていたが、すんなり降伏してくれてありがたい」 |
| 曹操 (そうそう) |
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「審配には謀叛の濡れ衣を掛けられ、家族を殺されました。 彼と運命を共にするのは気が進まなかっただけです。それと、一つお願いがあって生き恥をさらしています。 私はどうなっても構いません。どうか袁紹閣下の遺族、妻妾や嫁御はお助けください」 |
| 辛毗 (しんぴ) |
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「女性に危害を加える気はないよ。僕はそろそろ都に戻るけど、留守を任せる息子たちにもよく言っておこう。 ――そういえば、その曹丕君はどこに行ったのかな」 |
| 曹操 (そうそう) |
鄴 袁紹邸
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| 曹丕 (そうひ) |
呉質 (ごしつ) |
甄姫 (しんき) |
曹操の嫡子 |
曹丕の腰巾着 |
袁煕の妻 |
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「愚かな袁譚は曹操を利用しているつもりで、逆に利用されておる。 幼稚な袁尚は自分の実力もわからずに無駄な抵抗をしておる。 そして呑気なわらわの主人は、何もせずに傍観しておる。 甲斐性のない殿方ばかりじゃ……」 |
| 甄姫 (しんき) |
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「へっへっへっ。さすが若殿、お目が高い! 袁紹は北の美人ばかり集めてたと聞きます。 特にグンバツの美女として名高いのが、袁煕の嫁の甄姫という女で――」 |
| 呉質 (ごしつ) |
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「うるさい。黙りたまえ」 |
| 曹丕 (そうひ) |
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(……どうやら曹操の息子のようじゃな) |
| 甄姫 (しんき) |
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「ややっ! その女です! その女が甄姫ですよ若殿! ご覧ください! この抜けるように白い肌! 柳のような腰つおぶはぁぁぁっ!?」 |
| 呉質 (ごしつ) |
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「黙りたまえと言っている。 レディーの前で騒がしくして申し訳ない。僕は曹操が一子、曹丕という者だ。 単刀直入に言うが、僕の物になりたまえ」 |
| 曹丕 (そうひ) |
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「…………え?」 |
| 甄姫 (しんき) |
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「回りくどい話は嫌いなんだ。僕の妻になるか、それとも死ぬか。二つに一つだ。早く選びたまえ」 |
| 曹丕 (そうひ) |
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(…チガウ…今までの男とはなにかが決定的に違う。 スピリチュアルな感覚がわらわのカラダを駆けめぐった…。 カッコイイ…!! …これって運命…?) |
| 甄姫 (しんき) |
幽州(ゆうしゅう)
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| 袁煕 (えんき) |
袁紹の次男 |
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「兄ちゃん! 袁譚のヤツは曹操に同盟を破棄されて、攻撃されてるみたいだ」 |
| 袁尚 (えんしょう) |
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「もともと曹操にとって兄上と同盟する意味はなかったからなあ。 兄上はそれがわかっていなかったようだが」 |
| 袁煕 (えんき) |
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「それと……兄ちゃんにはちょっと言いづらい報告が入ってるんだけど……」 |
| 袁尚 (えんしょう) |
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「なんだい? 言ってごらん」 |
| 袁煕 (えんき) |
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「……兄ちゃんの嫁さんの甄姫が、曹操の息子に奪われたそうだ」 |
| 袁尚 (えんしょう) |
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「はあ。しかたないね。敵の手に落ちたのなら、どう扱われようと文句は言えない。 甄姫が無事だったことを喜ぼう。そんなことより袁尚や、私の策を聞いておくれ」 |
| 袁煕 (えんき) |
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「うん、曹操に対抗する策かい?」 |
| 袁尚 (えんしょう) |
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「もちろんだよ。私のもとには無傷の10万の大軍がいる。 それに心強い援軍を手に入れたんだ。それを使い、長安(ちょうあん)を落とそう」 |
| 袁煕 (えんき) |
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「そ、その援軍って誰なんだい兄ちゃん?」 |
| 袁尚 (えんしょう) |
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「まずは西涼(せいりょう)の馬騰(ばとう)、韓遂(かんすい)だ。 彼らの精強な鉄騎兵に長安の背後を襲わせる。 そして流浪の匈奴(きょうど)王・於夫羅(おふら)は自慢の騎馬軍団を率いて我々に加わってくれる」 |
| 袁煕 (えんき) |
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「うんうん、それからそれから?」 |
| 袁尚 (えんしょう) |
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「背後の備えも万全だ。烏丸(うがん)王・蹋頓(とうとん)、 そして遼東(りょうとう)の公孫康(こうそんこう)の協力も得られた。 彼らに曹操軍を攻撃させれば、長安へ援軍を出すことはできやしない」 |
| 袁煕 (えんき) |
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「さすが兄ちゃんだ! 多国籍軍だね!」 |
| 袁尚 (えんしょう) |
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「それに私の配下には呂布の再来と呼ばれる郭援(かくえん)がいる。 郭援には名将として知られる賈逵(かき)の説得も命じた。 これだけの陣容がそろって負けるわけがないよ」 |
| 袁煕 (えんき) |
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「やっぱり兄ちゃんはすげえや!」 |
| 袁尚 (えんしょう) |
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「この大軍で長安を落とし、そして洛陽(らくよう)、許都(きょと)へと攻め上がるんだ。 曹操とその息子と不倫女の甄姫の首を並べて、それを眺めながらお酒を飲むのが今から楽しみだね……」 |
| 袁煕 (えんき) |
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(兄ちゃん……。顔には出さないだけで激怒してるんだ……) |
| 袁尚 (えんしょう) |
長安(ちょうあん)
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「ようやく儂の出番が来たか! 待ちかねたぞ! おい李通!」 |
| 鍾繇 (しょうよう) |
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「へい」 |
| 李通 (りつう) |
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「手はず通り、張既(ちょうき)と杜畿(とき)を送り出せ! それと、お前は匈奴に遣いしてくれ」 |
| 鍾繇 (しょうよう) |
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「匈奴に? 何の用だ?」 |
| 李通 (りつう) |
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「この書状を持って匈奴の王に会い、鍾繇からじゃと言えばわかる」 |
| 鍾繇 (しょうよう) |
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「手広く動きまわってるとは思ってたが、匈奴にまでつながりがあんのか……」 |
| 李通 (りつう) |
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「ほれほれ、無駄口を叩いてる暇があったらとっとと動け! ようやく曹操様から指令が来たのだぞ!」 |
| 鍾繇 (しょうよう) |
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「へいへい」 |
| 李通 (りつう) |
西涼(せいりょう)
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| 張既 (ちょうき) |
曹操の臣 |
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「父ちゃん! 曹操に味方するって本当か!?」 |
| 馬超 (ばちょう) |
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「違うぞ息子よ。俺は曹操に味方するのではない、献帝(けんてい)陛下に味方するのだ!」 |
| 馬騰 (ばとう) |
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「そのとおり、逆賊の袁煕を討つためにお父上は兵を挙げられるのです」 |
| 張既 (ちょうき) |
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「さてはお前が父ちゃんをたぶらかしたんだな! おのれ、この馬超が成敗してやる!」 |
| 馬超 (ばちょう) |
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「待たれよ若。妻女のご家族の仇である曹操に味方するのを、良しとしないのはわかる。 だが、それと陛下への忠誠は別の問題だ。陛下のために今はこらえられよ」 |
| 龐徳 (ほうとく) |
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「龐徳、お前まで何を言うんだ! 馬超は曹操の味方などせぬぞ!」 |
| 馬超 (ばちょう) |
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「わかったわかった。じゃあ若は留守番しといてや。援軍にはワイと龐徳が向かうさかい」 |
| 馬岱 (ばたい) |
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「俺は許都に上がり、献帝陛下を身近で守ろうと思う。そこで曹操の真意も見極めるとしよう」 |
| 馬騰 (ばとう) |
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「それなら留守番などしていられない! 馬超も援軍に向かい、曹操の陰謀を暴いてやる!」 |
| 馬超 (ばちょう) |
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「……ほんなら、ワイは留守番しときましょ」 |
| 馬岱 (ばたい) |
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「行くぞ馬超、龐徳。我らの正義の槍は陛下とともにありだ!」 |
| 馬騰 (ばとう) |
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「おお! 曹操を裁くのはこの馬超の槍だ!」 |
| 馬超 (ばちょう) |
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(首尾よく説得はできましたが、このノリにはまだついていけませんな……) |
| 張既 (ちょうき) |
并州(へいしゅう)
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「……兵ヲ引ケダト?」 |
| 於夫羅 (おふら) |
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「ええ。私は新たに匈奴の王となったあなたの御子息・劉豹(りゅうひょう)の妻です。 劉豹は於夫羅様の帰国を認めました。これ以上、傭兵を続ける必要はありません」 |
| 蔡文姫 (さいぶんき) |
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「ソウカ……アノ小サカッタ息子ガ王ニナッタカ」 |
| 於夫羅 (おふら) |
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「曹操様が私を通じて働きかけてくれたのです。 於夫羅様をそれなりの地位で迎え入れる用意ができています」 |
| 蔡文姫 (さいぶんき) |
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「曹操ハ約束ヲ守ッタノダナ。 オレニハ帰レル所ガアルンダ。コンナニウレシイコトハナイ……」 |
| 於夫羅 (おふら) |
遼東(りょうとう)
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| 公孫康 (こうそんこう) |
公孫度 (こうそんど) |
遼東の太守 |
公孫康の隠居した父 |
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「これはこれは父上、武装などなさってどうしたのです。 お身体が優れないのですから無理をなさってはいけませんよ」 |
| 公孫康 (こうそんこう) |
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「曹操と戦うのだろう? そうと聞いては寝ていられんわ!」 |
| 公孫度 (こうそんど) |
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「ははは。さては誰かにかつがれましたな。 我々が曹操と戦うわけがないでしょう」 |
| 公孫康 (こうそんこう) |
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「戦わんのか?」 |
| 公孫度 (こうそんど) |
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「戦いません。いったい何の得があるのです? 我々は第三者として曹操と袁紹の戦いを見守り、漁夫の利を得れば良いのです」 |
| 公孫康 (こうそんこう) |
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「だが袁煕からの使者に援軍を出すと約束したのだろう?」 |
| 公孫度 (こうそんど) |
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「ええ、約束しましたよ。しただけです。もちろん兵は出しますが、すぐに帰します」 |
| 公孫康 (こうそんこう) |
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「報酬をもらっておいて、我が息子ながらあくどい奴だな!」 |
| 公孫度 (こうそんど) |
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「これは心外な! 全て父上から学んだことです。 もらえる物はもらっておけと常々おっしゃっていたでしょう」 |
| 公孫康 (こうそんこう) |
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「ふーむ。言ったような言わんような」 |
| 公孫度 (こうそんど) |
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「ですから父上は安心して養生なさってください」 |
| 公孫康 (こうそんこう) |
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「うむ。年寄りはおとなしく隠居しておるとしよう……。 ところで飯はまだか?」 |
| 公孫度 (こうそんど) |
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「さっき召し上がられたでしょう……?」 |
| 公孫康 (こうそんこう) |
河東(かとう)
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| 賈逵 (かき) |
杜畿 (とき) |
郭援 (かくえん) |
河東の太守 |
曹操の臣 |
袁煕の将 |
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「え? 賈逵様ですか。それならあっちへ行きましたよ」 |
| 賈逵 (かき) |
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「そうか、ありがとよ! うおお! 待てえ賈逵!」 |
| 郭援 (かくえん) |
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「……うまく騙されてくれましたね」 |
| 賈逵 (かき) |
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「あ、あんた顔に似合わず大胆なことするんだな。俺は寿命が縮まったぞ」 |
| 杜畿 (とき) |
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「なあに、私は通行人Aのような地味な顔をしていますからね。こういうことはお手のものです。 それより気づかれないうちに早く逃げましょう」 |
| 賈逵 (かき) |
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「おい! 賈逵はあっちにいないぞ。お前はどこに行ったか知らないか?」 |
| 郭援 (かくえん) |
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「賈逵様ならそっちで見かけました」 |
| 賈逵 (かき) |
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「そっちだな! 逃げるな賈逵め!」 |
| 郭援 (かくえん) |
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「ほら、さっき私に聞いたことも気づいていないでしょう?」 |
| 賈逵 (かき) |
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「褒めるべきか呆れるべきか迷うな……」 |
| 杜畿 (とき) |
許昌(きょしょう)の都
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「報告がたくさん入ってます。まず於夫羅は袁煕の軍を離脱し、帰国しました。 つづいて馬騰、韓遂は説得に応じて長安へ援軍を送ってくれました。 さらに公孫康が急病のため出撃を見合わせたので、それを警戒して蹋頓は兵を動かしていません」 |
| 荀彧 (じゅんいく) |
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「賈逵君も首尾よく保護できたし、これで袁煕君の策はほとんど封じられたかな。 なかなかうまく行ったものだ」 |
| 曹操 (そうそう) |
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「あはは。さすがは殿ですな! 兵の一人も使うことなく、袁煕の軍を瓦解させるとは!」 |
| 荀彧 (じゅんいく) |
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「僕の力じゃない。説得に赴いた張既君や杜畿君、蔡文姫君。 それに彼らを登用した鍾繇(しょうよう)君の力だよ」 |
| 曹操 (そうそう) |
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「またまたご謙遜を。――ともあれこれで残すは郭援の軍だけとなりました。 すでに馬騰が迎撃に出ていますから、間もなく吉報がもたらされるでしょう」 |
| 荀彧 (じゅんいく) |
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「そうなるといよいよ袁譚君や袁煕君、袁尚君の首をいただく頃合いだね。 勢いに乗ってさらに攻め上がり、公孫康君や蹋頓君にもにらみを利かせたいところだ。 郭嘉君、そのための策はできているかな?」 |
| 曹操 (そうそう) |
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「………………」 |
| 郭嘉 (かくか) |
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「郭嘉! 吐血してるじゃないか! これはいけない、医者を呼びましょう」 |
| 荀彧 (じゅんいく) |
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「…………大丈夫」 |
| 郭嘉 (かくか) |
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「そんな顔色で言われても説得力がないよ。 遠征軍には加わらず、このまま都に残って養生するといい」 |
| 曹操 (そうそう) |
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「大丈夫」 |
| 郭嘉 (かくか) |
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「君はもともと身体が丈夫じゃないんだから無理せず――」 |
| 曹操 (そうそう) |
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「大丈夫」 |
| 郭嘉 (かくか) |
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「……やれやれ、こうなると無口すぎて説得のしようもないね。 馬車を用意するから、それに乗って指揮をとってくれたまえ」 |
| 曹操 (そうそう) |
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「御意」 |
| 郭嘉 (かくか) |
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「荀彧君には引き続き、都の守りを頼むよ。今回の遠征は少しばかり長くなりそうだ。 でも、この戦で北方のことごとくを平らげてみせるつもりさ」 |
| 曹操 (そうそう) |
かくして袁煕の策はことごとく曹操によって破られた。 はたして名族の子らに逆転の目はあるのか? 一方、曹操の目は名族の頭上を飛び越え、はるか北の大地へと注がれていた。 |
| 〇四一 北へ | へ |